第11話 レオくんから離れたくないからよ

 2人から「大好き」と言われ、俺は照れてしまう。


 そのため…


「な、なぁ、そろそろ俺から放れてくれると嬉しいんだが……」


 一向に放れてくれないリリィとミュアに放れるよう促すも…


「も、もう少しだけ……」


「ウ、ウチも、あと少しだけ……」


 2人が上目遣いでお願いしてくる。


(さっきは怖い思いをしたからな。これくらい我慢するか)


 俺は2人の柔らかい感触や、女の子特有の良い匂いに耐えながら2人の頭を撫でる。


「ふにゃ〜」


「あぅ〜」


 2人は可愛らしい声を上げながら蕩けた顔をする。


(ま、しばらくはこのままでいいかな。「大好き」って言われたが、多分『守ってくれてありがとう』って伝えたかったんだろう)


 俺はそんなことを思いながら、2人の頭を撫で続けた。




 あれから、来客もなく数日が過ぎたある日。


 リビングでルビアたち3人とゆっくり過ごしていると…


「誰かが忍び込んだようね」


 ルビアがそんなことを言う。


「そ、そんなことがわかるのか?」


「えぇ、これでも昔は忍びとして活動してたの」


「それは服装からわかっていたが……」


(いつも忍者装束を着てるからな。胸元が空いたエッチな格好の)


「侵入者は1人のようだから、私が探ってくるわ。みんなはリビングから動かないで」


「あぁ、気をつけてな」


 俺たちはルビアを見送る。


「ルビアさん大丈夫でしょうか?」


「心配にはなるが、俺たちに闘う力はない。ルビアの言う通り、大人しくここで待機して無事を祈ろう」


 俺は心配しているリリィとミュアにそう伝える。


 しばらくすると、刃を交えた音が聞こえてきたが、すぐに収まる。


(お、おい。何があったんだ!?)


 俺たちが不安になっていると…


「ル、ルビア姉さん!」


 知らない女性の声が、外から聞こえてきた。


「無事でよかったです!まさか生きてるなんて……」


 どうやら、侵入者は女性のようで、ルビアと面識があるようだ。


 俺は気になったため、外を覗いてみると、15歳くらいの女の子がルビアと話をしていた。


 忍者装束を着ており、ピンクの髪を肩の辺りで切り揃えている美少女。ルビアと違い、胸は全然大きくないが、胸元が空いているため、エッチな格好となっている。


「モモ、私はこの通り元気に過ごしてるわ」


「うぅ……よかったです。ルビア姉さんが生きてて……」


 涙声となりながら女の子はルビアを抱きしめる。


「ルビア、侵入者ってこの女の子ってことだよな?」


「えぇ」


「危険はなさそうだから、一度おもてなしをするか」


 俺は侵入者である女の子をリビングへと招いた。




「ルビア姉さん、何があってここにいるんですか?」


 俺たちは侵入者の女の子、モモをリビングに招く。


「そうね、それを語るには長くなりそうだけど……いい機会だわ。レオくんたちにも聞いてもらおうかしら」


「え、いいのか?俺は話したくなったらで良いって言ったけど……」


「いいのよ。今、話したくなったから」


「そうか」


 俺たちはルビアの話を黙って聞く。


「私とモモの故郷は忍者一族で代々、王都からの命令で、スパイや暗殺を生業としてきたわ。私も幼い頃から訓練を受けて、立派な忍者になり、村一番で強い忍者になったわ」


(俺たちがいる国は帝都だから、違う国で働いていたことになるのか)


「ある日、モモが任務で里から出ていた時、王都の騎士たちが現れて、私たちにこう言ってきたの」


『お前たちが帝都に情報を流していることは把握している。今すぐ大人しく投降しろ』


「そう言われたわ。もちろん、私たちはそのようなことをしてないから、反論したわ。すると、私たちの里の誰かが、騎士たちを攻撃したの。そこから、故郷で争いが起こったわ。そして、私たちは闘うことのできない里の人たちを庇いながら闘うことはできず、故郷が無くなったわ」


「そ、そんな……」


 モモが絶句する。


「そして、私は瀕死の中、レオナルドに拾われたわ」


「なっ!」


(ここであの男が出てくるのか!?)


「怪しかったから色々とレオナルドに聞いたの。すると、私たちの故郷を潰すように仕向けたのが自分だと、ペラペラ話したわ」


 俺はそれを聞いて怒りが込み上げてくる。


(アイツ、そこまでするか!)


「それで、奴隷にすると言ってきたレオナルドに抵抗し続けて、売り物にならないレッテルを貼ってもらったわ」


「なるほど、それでルビアは地下牢にずっと閉じ込められてたんだな」


「えぇ、あとはレオくんが知ってる通り、レオくんに助けられて、ここで元気に過ごしてるわ」


 ルビアの話を聞いて…


「そんなことがあったんですね」


 元気のない声でモモが話し出す。


「アタシ、任務を終えて故郷に帰ると、故郷が見る影もなかったから、村を襲った奴らを突き止めようと頑張ったんです。そしたら、戦犯がこの屋敷に住むレオナルドということを掴んで…」


「殺すためにここに来た……と」


「です」


(そんなことがあったんだな)


 ルビアの話を黙って聞いてた双子も悲しい表情をしている。


「でも、ルビア姉さんが元気で嬉しいです!アタシ、里の人みんな死んだと思ってたから……」


 そう言って、モモは俺の方を向き…


「ルビア姉さんを助けてもらい感謝です!」


 俺に頭を下げる。


「いいよ、そんなこと気にしないで」


 俺の返事を聞いてモモは頭を上げる。


 そして今度はルビアの方を向き…


「ルビア姉さん!これからアタシと一緒に過ごしませんか!?」


「え?」


「アタシ、今、この国で冒険者してるんです!ルビア姉さんの腕なら冒険者も楽勝です!どうですか!?アタシと一緒に冒険者をしませんか!?」


 ルビアはモモの言葉を聞いて考え出す。


 そして…


「ごめんね。私はモモについていくことはできないわ」


「な、なぜですか!?」


「ふふっ、それはね」


 そこまで言って、ルビアは俺の方を向く。


「レオくんから離れたくないからよ」


 ルビアの言葉に顔を赤くしてしまう俺であった。

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