第5話 とても美味しい……です

 その後、俺とルビアは買い出しのため、近くの街へと買い物に行く準備をする。


 俺とルビアは準備ができたため…


「じゃあ、近くの街に買い物へ……」


 ―行くか、と言おうとするが…


「おい、レオナルド!連れてきたぞ!」


 外の方から声が聞こえてきた。


「なんだ?外の方からレオナルドを呼ぶ声が聞こえてきたぞ?」


「どうする?無視してもいいけど…」


「いや、会うだけ会ってみよう」


 俺とルビアは声のした方へ歩き出す。


 外に出ると、そこには屈強な男3人と女の子が2人いた。


「レオナルドの望み通り……って、誰だ?」


「あぁ、すまん。ダイエットしたからわからんと思うが、俺がレオナルドだ」


「ふーん。ま、金さえ貰えれば誰でもいいや」


(あ、深く考え込まないんだ。まぁ、盗賊からすれば、お金さえ貰えれば誰でも良いって感じか)


「そういえば、いつもいる奴隷の男はどうした?アイツに声をかけようとしたらいなかったんだが……サボってるんじゃねぇか?」


「あ、あぁ。アイツらならサボってたから解雇にした」


「なるほど。殺したんだな。ま、それがいいぜ。レオナルドに不満ありそうだったからな」


(コイツ、簡単に殺すとか言ってるな。てか、コイツら誰だ?)


「あんたの要望通り、かわいい女を攫ってきたぜ」


 そう言って2人の女の子を俺の下につれてくる。


(コイツ、今、攫ってきたと言ったな!?)


「相変わらず、良い女しか買い取ってねぇらしいじゃねぇか。まっ、良い女であればあるほど、かなりの額で買ってくれるから俺たちにとっては嬉しいがな」


(そういえば、神様もレオナルドは美少女しか買わないって言ってたな。その話が広まって、レオナルドの元には美少女しか来ないとか)


 俺は改めて、連れてこられた2人を見る。


 歳は2人とも10歳前半くらいで、猫耳と尻尾が生えている。


「コイツらは猫耳族で、双子らしい」


 そう言われて、2人の顔が似ていることに気づく。


 2人とも白い髪にぴょこっと猫耳が生えており、1人はツインテール、1人はショートカットにしている。


 今は盗賊から連れてこられたこともあり、服が所々破けており、全身に土などの汚れがついている。


「で、いくらで買い取ってくれるんだ?あ、ここに来るまでに汚れてしまったり服が破けてるが、コイツらが抵抗したから致し方なく攻撃しただけだ。もちろん、傷はつかないようにしたし、性玩具として遊んでもねぇ」


 俺はコイツの発言にカチンときた。


「おい!お前ら!なんでこんなことするんだよ!」


 俺はリーダーらしき男に向かって叫ぶ。


「あ?いつもと反応が違うが……そんなの金になるからに決まってるだろ?」


 なんの悪びれることなく平然と言う。


 後ろの男たちも笑ってるだけで、悪いことをしてるとは思ってないようだ。


「あぁ、そうか……」


(もう、コイツらには何を言ってもダメだな。同じことをこれからも繰り返していくだろう。俺が怒りに任せて殴ってもいいが、徒党を組んで反撃でもされたら困る)


「それより、はやく金を出せよ。いくらで買い取ってくれるんだ?」


(今は女の子を買い取って、奴隷になる末路から解放することが先だな)


「あぁ、ちょっと待ってろ」


 俺は屋敷に戻り金を準備する。


「2人を買い取らせてもらう。これくらいでどうだ?」


「あ?いつもより少ねぇじゃねぇか?」


「これが相場だ。いい加減、こんなことしてもいい金にはならないことを理解しろ。盗賊から足を洗え」


「お前、ホントにレオナルドの野郎か?」


「そうだ。だから金を払っただろ?」


 俺が堂々と言う。


「ちっ!今回は少ねぇが、この2人をゲットするのに被害は0だったんだ。ただでこれだけのお金が手に入れば十分だ。じゃあな、また来るぜ」


 男たちはそう言って屋敷から出て行く。


「くそっ!」


 俺は行き場のない怒りに苛立つ。


「レオくん、よく耐えたわ。あの3人なら私でも倒せたけど、その後の報復となると、我慢するのが得策だったわ」


「だよなぁ」


 俺はルビアにそう答え、連れてこられた2人の女の子に話しかける。


「俺の名前は風早礼央。訳あってレオナルドを名乗ってる。君たちの名前は?」


「わ、私はリリィ」


「ウ、ウチはミュア」


「そうか、リリィとミュアって言うんだね。とりあえず……」


 俺が2人と話していると…


 “ぐ〜”


 どこかから可愛らしい音が聞こえた。


「す、すみません!け、決してレオ様のお話を邪魔するわけではなくて…」


 どうやら、ミュアのお腹から鳴ったようだ。


「そんなことで怒ったりしないから。そうだな。じゃあ、まずはお風呂にしようか。ルビア、2人に風呂と着替えを提供して。着替えに関しては、なかったら街で買おう」


「私はさっき水浴びしてきたからいらないわ」


「えっ!さっき水浴びしてたの!?言ってくれればお風呂を提供したのに。あ!だったらルビアも2人と一緒にお風呂に入ってきなよ!」


「そこまでお世話になるつもりはないわ」


「そ、そうです!お、お風呂なんて必要ありません!」


「ウチらはこの格好のままでも大丈夫です!」


「な、なんで!?」


「あのね、レオくん。この世界では、お風呂を持ってる人の方が珍しいの。水をお湯にするために、たくさんの魔石を消費するからよ」


 この世界のガスや電気は魔力の込められた石、通称魔石を使用することで使うことができるとのこと。


 魔石に蓄積された魔力が空になると、使うことができなくなるため、適宜、未使用の魔石に交換する必要がある。


「な、なるほど。だから裕福な家じゃないとお風呂を使えないのか」


「えぇ。だから、着替えだけ探して……」


「でも、魔石をたくさん消費するだけだろ?なら、気にせずお風呂に入って来い」


「え、いいの?」


「あぁ。遠慮なく魔石を使用してくれ」


「そ、そこまで言うなら……ありがとう、レオくん」


 ルビアは返事をして2人を屋敷に連れて行く。


(さて、俺はここにある食材で料理でもするか)


 俺はキッチンへと向かった。




 俺は食材を確認しつつ、料理を決める。


(よかったぁ。地球にいた頃に料理できるようになってて)


 昔の俺に感謝しながら、料理を作る。




(おー!我ながら、結構良いものができたのではないか!?)


 何個か料理が完成する。たくさんの食材があったため、張り切りすぎて作りすぎてしまった。


(さて、そろそろルビアたちが戻ってきても良い頃だが……)


 そんなことを思っていると…


「レオくん、お風呂ありがとう」


 ルビアとリリィ、ミュアが風呂から上がったようだ。


「あ、あの……お、お風呂ありがとうございます。は、初めてだったのですが、とても気持ちよかったです」


「ウ、ウチもとても気持ち良かったです」


「あぁ。気にするな。そんなことより、ご飯を食べよう!」


 もうすでに4人分に料理は分けているため、ルビアたちを椅子に促す。


 しかし、誰一人として椅子に座ろうとしない。


「な、何してるんだ?早く座れよ」


「えーっと、なぜ4人分の料理が準備されてるのかしら?」


「そりゃ、4人で食べるためだろ?」


「いえ!私はご飯を恵んでいただかなくても大丈夫です!」


「ウチも必要ありません!」


 リリィとミュアから必要ないことを言われる。


 その時…


 ““ぐ〜””


 またしてもお腹が鳴る音が聞こえた。


「ほら、リリィとミュアのお腹はご飯を食べたいようだよ?ルビアも遠慮なんかしなくていいから。もう作ってしまったんだから、俺が食べきれなかったら捨ててしまうことになるよ?だから、みんなで食べよ?」


 俺がそこまで言うと…


「そ、そう言うことなら……。2人とも、レオくんを待たせるわけにはいかないわ」


「あ、あの!ご飯を私たちがいただいてもよろしいのでしょうか?」


「あぁ、遠慮することはない!」


 俺の言葉を聞いてようやく椅子に座る。


「じゃあ、いただきます」


 俺はまず肉料理から手をつける。


「うん!美味しい!さぁ!みんなも固まってないで食べて!」


 俺が促すことにより、3人とも料理を食べ始める。


「どう?美味しい?」


「えぇ、とても。まさか、こんなに美味しい料理を食べれる日が来るなんて……」


「はい。とても……うぅ……とても美味しい……です」


「うぅ……」


 リリィは涙を流しながら返答し、ミュアも涙を流しながら頷く。


「そうか、それは良かった。残さず食べるんだぞ」


(リリィとミュアは、かなり怖い思いをしてきたと思う。奴隷にしないことを伝えて安心してもらわないとな)


 そんなことを思いながら、4人で食事をした。

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