第3話 これからよろしくね。レオくん
俺は地下牢へと辿り着き…
「やぁ、君がルビアだね」
鎖で逃げ出さないようにされた、1人の女の子に話しかける。
忍者装束は所々破けており、痛々しい傷も確認できる。
「何かしら?」
ルビアはキリッとした目で睨みながら俺に聞いてくる。
「俺は風早礼央。一言で言えば、君を解放しにきた」
「あら、私をここから出してくれるのかしら?レオナルドとか言う太った男はどうしたの?」
「そいつには消えてもらった。俺が消した訳じゃないが、もう、この世にはいない」
「そう。なら、私をここから解放してくれないかしら?」
「あぁ、待ってろ」
俺はレオナルドの部屋にあった鍵で檻を開け、鎖を解く。
「さぁ、これで自由……」
俺がルビアに喋りかけていると、突然視界がブレ、背中に痛みが走る。
どうやら、鎖を解いたと同時に、ルビアによって倒され、押さえつけられているようだ。
「な、何するんだよ!俺は君を解放しただけだろ?」
「それを信じろと言うの?私からすれば、あなたから、解放した恩を着せられ、奴隷の様な扱いをされると思ったのだけど」
「そ、そんなことしない!俺はただ純粋に君を解放して、自由を与えようとしただけだ!」
「この屋敷には武装した人たちが守ってるのよ?そんな善意で、ここまで来れるわけがないから、レオナルドの関係者しかあり得ないわ。ついに、私の買い手が見つかったのかしら?」
「え、ここ武装した奴らが屋敷を守ってんの?」
「知らなかったの?奴隷商人は人から恨みを買われやすいから、傭兵とかを奴隷にして、身を守らせてる人が多いわ。レオナルドも何人かを奴隷にして、この屋敷を守らせてたわよ」
「マジかよ。じゃあ、ここでのんびりしてる暇は……」
俺が危機感を感じていると…
「おい、そこのお前。誰だ?」
屈強な男に声をかけられる。
(やべぇ!バレた!てか、なんで神様、この人たちを追っ払ってくれなかったの!?)
「それに、なぜその女の牢屋の鍵が開けられ、鎖まで解かれてるんだ?」
屈強な男は当然の疑問を投げかけてくる。
「ねぇ。なぜ、護衛の人があなたのことを睨んでいるのかしら?あなたは、レオナルドの関係者じゃないの?」
「いやいや!いろいろあって俺はこの屋敷の中に転移したんだよ!だから護衛がいるなんて知らなくて!」
「ゴタゴタうるせぇな!!お前は誰だって聞いてんだよ!」
俺たちが話しているのに我慢の限界がきたのか、壁を叩きながら聞いてくる。
「はぁ、どうやってあなたが護衛をすり抜けてここまで来たのかわからないけど、あなたがレオナルドの関係者でないことは確かなようね」
「やっと理解してくれたか。こんな形で理解してほしくはなかったが……」
「おい、女。痛い目にあいたくなかったら、その男を抑え続けてろ。そして、もう一度鎖で繋がれるんだな」
「嫌よ。よくわからないけど、長い牢屋生活から解放されそうだもの。こんなところで捕まってられないわ」
「あ?だったら痛い目にあってもらうしかねぇな!」
そう言って男は俺たちの下に拳を握って突っ込んでくる。
(やべぇ!俺、戦う能力なんかねぇよ!まぁ、今、ルビアに組み伏せられてるがな!)
俺が内心慌てていると、ルビアは俺を組み伏せるのをやめて、男に応戦する。
俺はその様子を見ながら…
(ちょっと待てよ!?この屋敷で護衛している人たちは奴隷だとルビアは言った。レオナルドの奴は消えたから、この男たちは奴隷じゃなくなったんじゃ!?)
そのことを言おうとした時…
「ぐっ!」
ルビアが壁まで吹き飛ばされる。
「全く手間かけさせやがって!もう一発殴っとくか」
そう言って男はルビアとの距離を縮めて殴ろうとする。
(マズイ!守らないと!)
そう思った時には俺の体は動いており、男とルビアの間に入り込んでいた。
「ちょっと待て!」
俺の言葉に男は拳を止める。
(うぉぉぉぉ!!!危ねぇ!もう少しで俺の顔面にクリンヒットするところだった!)
「なんだ?俺の貴重な時間を使ってんだ。しょうもないことを言ったらぶっ殺すぞ」
男は威圧しながら言う。
「あ、あぁ。よく聞いてくれ。さっき、俺がレオナルドの存在を消してきたんだ。だから、お前の奴隷契約は終了してるんじゃないか?」
(ホントは俺じゃないが、俺がしたことにしよう)
「あ?何ふざけたことを……」
そう言いながらチラッと自分の手のひらを確認する男。
そして…
「なっ!奴隷契約の紋章が消えてるだと!?」
(ふぅ、俺の考えは正解だったようだ)
「そう言うことだ。だから、ここは引いてくれないか?この女に俺は用がある………」
俺が男に向けて話していると、突然、男は膝をつく。
「うぅ……やっとだ。やっと俺は解放された!これで妻と娘に会いに行ける!」
男は泣きながら叫ぶ。
そして俺の手を握りながら…
「兄ちゃん!ありがとう!兄ちゃんがレオナルドを殺してくれたんだろ!?」
「あ、あぁ」
「そうか!兄ちゃんには感謝してもしきれねぇ!」
そう言って俺の手を放すと…
「すまねぇな、女。お前に逃げられると、レオナルドの奴から殴られるからな。力づくで止めさせてもらった。兄ちゃんにも怒鳴ったりして悪かった」
そう言って頭を下げる。
「俺は気にしてないし、しっかり謝ってくれたからな。俺は許すぞ」
「えぇ。私も謝ってくれたから許すわ」
「っ!すまねぇ!感謝する!」
「だから、はやく家族のもとに行くといいさ。お前はもう、自由だ」
「あぁ、ありがとう!この恩は一生忘れねぇ!」
男は涙を流しながらそう言って、牢屋から出て行く。
「ふぅ、なんとかなったな」
「えぇ」
ルビアは服を整えながら立ち上がり…
「私もあなたに謝らないといけないわね」
「ん?何をだ?」
「それは、私はあなたのことを信用せず、組み伏せたからよ」
「あぁ、そんなことか。気にすることはないぞ」
「え?そんなことではないと思うのだけど……」
「ルビアの言ってたことは正しかったからな。たしかに、いきなり現れて、レオナルドを消して、君を解放しに来たって言われても、怪しさ満点だからな」
「ふふっ、あなたって変わった人ね」
笑いながらそう言う。
「そ、そうか?」
「えぇ、だって普通は許さないわよ?それに、私が殴られそうになった時、あの男と私の間に入ってきたでしょ?あの行動が1番の謎ね」
「だって、ルビアが殴られそうになった時、咄嗟に『守らなきゃ!』って思ったんだ。そしたら体が勝手に動いてて」
俺の言葉にルビアはポカンとした後…
「私のことを守る……か。そんなこと初めて言われたわ」
頬を染め、照れながら言う。
「あ!そうだ!ルビアもレオナルドがいなくなったから、自由に生きていいんだよ!さっきの男みたいに、家族に会いに行くとか!」
俺がそこまで言うと…
「私の故郷はもうないの……」
ルビアが寂しそうに言う。
「ご、ごめん!悲しくさせるつもりはなかったんだ!ただ、ここから何処へでも行っていいよってことを言いたかっただけだ!」
「ふふっ、そんなことわかってるわ」
(ふぅ、よかった……)
俺が安堵していると…
「そうね。それなら、あなたについて行くわ」
「…………へ?なんで?」
「あなたと一緒にいると楽しそうだからよ。帰る故郷もないから、行くあてもないし」
「ダ、ダメだ!俺なんかと一緒にいても……」
「あら?『自由に生きていい』と言ったのはあなたよ?」
「うっ!」
「だから、私はあなたと過ごすことにするわ。これからよろしくね。レオくん」
「あ、ははは……よろしく……」
断ることはできなかった。
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