第8話今度からオナニーしたい時は言え!席を外してやる!
~その前日~
「明日さあ。悪魔さんの『操作』をちょっと試したいんだけど」
『おおおおお…。別に明日でなくてもいいぜ。今から試しにいくか?』
「いや。明日だから大事なんだよ」
『なんだそれ?』
「でさあ。まずこの画像を見てくれるかな」
ここでスマホをミラレスにかざす翔。
『ん?小型テレビか』
「違うよ。スマホだよ」
『スマホ?ス、マーホのスマホか?』
「ス、マーホは知らないけどスマホはスマホだよ。携帯ね」
『携帯?小型テレビも携帯するもんじゃねえの?』
「あ…。今の時代はスマホって言ってね。電話を個人が持つ時代なんだよ。それがスマホ。便利だよ」
『電話を個人でだと。人間って…不便だな。電話がねえと今でも遠くの人間と会話出来ねえのか』
「そうだよ。昔からそうじゃないの」
『でもよお。一人一台で電話?それってある意味嫌じゃねえか。便利なのかホントに。束縛されねえか?』
「ま、まあ。いろいろ既読スルーとかなんで『いいね』をつけないとかいろいろ気を遣ったりもするけど…」
『いいね?いーいーねーいーいーねー、にーんげんって、いーいーね♪ってのは聴いたことがあるな』
「(悪魔さん…。あれを見てたんだ…)」
『それでそのスマホがどうした』
「このスマホってのは動画や画像も記録しておくことが出来るんだ。で、これね」
翔がクラスメイトの下野と野島の顔がよく写った画像を見せる。
『ひゃっはっは。盗撮ってやつか。人間は実にくだらんがそれが面白い』
「違うよー。盗撮じゃないよ。こいつらがSNSに上げてたのをちょっと保存しただけだよ」
『えすえぬえす?』
「まあ現代では自分のリア充ぶりを他人に見せることで自分の欲を満たそうとする人間が多いんだよ」
『それが欲だと。りあじゅうぶり?まあ想像は出来る。他者に自分をよく見てもらうことで己の存在を特別なものと考えるものか。それは昔からあったなあ』
「昔は知らないけれど今は他人に自分の生活や成功、努力とかを見てもらって肯定、つまり『いいね』を押してもらうことで承認欲求だっけかな。それを満たすツールが溢れてるんだよ」
『それで。この二人をどうしたい?まあ想像はつくが念のために聞いておく』
「こいつらってどうしょうもない悪者なんだ。だから退治しようと思ってて」
『それはお前から見て悪者だろ』
「世間一般的に見て『も』だよ」
『それは誰基準だ。お前基準だろ』
「悪魔さんはなにしに僕のところに来たんだっけ?」
『おお、そうだな』
「実際に悪魔さんがこいつらの過去にしてきたことを見れば分かると思うよ」
『じゃあ見に行くか?』
「え?」
『悪魔の『共通能力』のひとつを使えば過去へ行くことは出来る。ただし未来を見ることは出来ない。これは単純に起こってしまった『過去』を見ることは簡単であり、まだ起こっていない『未来』は誰にも見ることは不可能であるからだ。分かるか』
「そうなんだ。悪魔はみんな過去へ行くことが出来るの?」
『ああ。もともと悪魔には距離や時間の概念はないからな。そこを履き違えている人間が実に多い。未来ってのはこっちの言葉で『パラレルワールド』って言うんだろ』
「パラレルワールド…」
『おいおいおい。現代人のお前が知らねえのかよ。教えといてやるか。未来ってのは無限にあるもんだ。選択した未来と選択しなかった未来。生き物は生きている限り選択の連続だろ?朝起きる現実と二度寝する現実。そこに第三者の行動が絡んでくる。お前が俺に『操作』でコンビニか?で暴れさせた男だってお前に選ばれなかった未来も当然あった。その数だけ『パラレルワールド』は存在するからな。だから未来には物理的にも確率的にもいけないし見れない。分かるか』
「うん…。分かるような…」
『まあいい。お前の体借りるぜ』
「え?」
そして同化するミラレスと翔。
(え?)
部屋の中で時が止まったかのように固まっている自分の姿を見て驚く翔。
『今お前と俺は同化して意識だけが宙を彷徨っている状態だ。今お前に見えているのは止まった時のお前だ』
(え?え?)
『そうそう。お前と同化しているからお前が何を考えているかもすべて俺には分かる』
(え?)
『この言葉って面白いな。たいがいの奴はこういうと人には知られたくないことを考える。ふーーーーはははは。お前の考えてることってくだらなくて下品で最高だなあ』
翔は今、頭の中でよからぬことを想像している。それを隠そうとすればするほど余計それを考えてしまう。実際には『それ』を意識させられたからである。
『なになに?悪魔さんが来てからろくにオナニーが出来やしない?これはすまんかったなあ!ぎゃっはっはっは!今度からオナニーしたい時は言え!席を外してやる!なに!それは助かるだと!ぎゃっはっはっは!』
(やめてーーーー!人の心を勝手に見るのはダメー!)
『お前言ってることと思ってることにかなり相違があるぞ。ぎゃっはっはっは!まあいい。それで過去に行って見せたいものがあるんだろ?』
(それ!)
『じゃあ意識しろ。その過去、時代は?場所は?忘れられないんだろ?』
そして翔はその『時』をイメージする。
『ここか』
翔の目の前の景色が変わる。眼前には下野と野島が翔の友達からカツアゲをしていた過去。それを自分は黙って見ていた過去。
※悪魔の『共通能力』のひとつに『過去へ遡る』能力がある(正確には悪魔には『時』の概念がない。起こった『過去』と現在を自由に行き来することが可能であり、起こっていない『未来』には行けないし見ることも出来ない)
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