第二幕七話

目を開くと知らない部屋の中のベッドの上に座っていた。とても綺麗な部屋だったけど、手が手錠で繋がれている。


「こんにちは、ネージュちゃん。」


「あんた、誰?なんで私の名前を知ってるの?早くこの手錠取ってよ。」


「え、やだよ。僕らは永遠の愛を誓い合った仲じゃん。」


誰だよ、この気持ち悪いブタみたいな奴。角が生えているということは鬼族ということか。私は捕まったってことでいいのかな。


「ネージュ〜。」


気づけばそいつはベッドの上に上がってきていた。身体に悪寒が光よりも早く走って、ありったけの力で蹴っ飛ばした。


「ねえ、なんでそんなことするの?」


かなり吹き飛んだようで、壁にぶつかり床に座り込んでこっちを睨んでいた。あの程度なら、手錠があっても勝てそうだ。


「ポーク、何事?」


「ママ、ネージュに蹴り飛ばされた。」


「可哀想なポークちゃん、私が変わりに蹴り飛ばしてあげるわ。」


ポークなんて名前つけてる方が可哀想じゃない……?


「え?」


痛い……くだらないことを考えてた一瞬で、蹴り飛ばされた。速い……それに多分、私よりも強い。


「ありがとう、ママ。ネージュちゃん、まずは血を吸わせてねー。」


「いや、助けてー。」


助けて、お母さん、お父さん、ロージェン。





「おいガキ、遅えぞ。魔力を全てスピードに費やせ。」


「はい。」


とは言っても速度強化魔法まで自分にかけているが、敵を殺しながら進んでいるサーティス騎士長とヘスティアよりもかなり遅い。


『ロージェン、あなたが魔法を使えることは内緒にしておいてくださいね。』


久々にテレパシーで頭の中に喋りかけられる感覚がおとずれる。


『うん、俺もそう思って隠しているよ。』


『私があなたに速度付与するので合わせてください。』


『おっけー。』


速度が急激に上がった。だが、気がつけば城のてっぺんについていた。


「ここに誘拐されている可能性が高いな。」


「そうですね。座標はここで合ってますよ。」


二人が揃って扉を開けると、そこには血を流したネージュとデブな男の吸血鬼とセレブっぽい女の吸血鬼が居た。


「ネージュ。」


「ロー。」


ヘスティアに付与された速さを最大限に使って、ヘスティアの所へ移動して連れていこうとしたが手錠がかかっていた。


「何すんのよ、ガキ。」


女の吸血鬼の俺への蹴りをヘスティアが魔法のバリアで防ぐ。


「チッ、魔女め。」


「私は魔女じゃないですよ。」


ヘスティアはネージュの手錠を一瞬で壊し、治癒魔法で怪我を治していく。


「ありがと……うございます。」


それだけ言って、ネージュは目を閉じた。


「ネージュ!」


「大丈夫ですよ、眠っているだけですよ。それにしてもあなた達、なんでネージュさんを誘拐したのですか?」


「ポークがこの娘の結婚したいって言ったからからだよ。」


は?それだけなのか……?


「そうですか。では、帰りましょうロージェン。」


「えっちょ、こいつらを殺さなくていいの?」


「ロージェン、私はなるべく戦争に介入はしないようにしているのです。恐らく、このゲス女は吸血鬼のナンバー2です。私が殺したら戦争のバランスが崩れていしまいます。」


「で……でもっ」


「しかし、あなたがやるのなら邪魔はしませんよ。」


吸血鬼のナンバー2……。俺でも勝てるのだろうか。勝てるかは分からないが、こいつらは許せない……。絶対に殺す。


「ガキはすっこんでろ。こいつらの相手は俺だ。」


サーティス騎士長が一歩前に出て剣を抜いた。


「でも……。」


「安心しろ、あの嬢ちゃんの分もやるし、こいつらにはなるべく苦しんで死んでもらうからな。だから、今は俺に任せろ。お前が戦うのは騎士になってからでいい。」


「分かりました。」


「あんたら、グチグチうるさいのよ。」


女の吸血鬼が魔法の血を槍のようにして飛ばす。俺とネージュはヘスティアの作った魔法のバリアで防がれる。


「遅えな。」


サーティス騎士長は血の槍の間をすり抜けて行って、女の吸血鬼の首を吹き飛ばした。


「やったか?」


あ……。そのセリフは


「こんなんで死なないよ。」


首が液体みたいな感じになって、もう一回繋がる。やったか?ってセリフは失敗フラグだ。これからはホントに言わないで欲しい。


「やっぱり、吸血鬼は不意打ちじゃないとめんどくさいな。」


女の吸血鬼から血で作られた武器が次々と飛んでくるが、サーティス騎士長には全く当たらない。


「ネージュちゃんを返せー。」


ポークがこっちに突っ込んで来る。


「ネージュはお前らのじゃねえんだよ。」


剣を抜いて、ポークの裏側に飛び移り首を切り飛ばす。


「ポークーー。」


「おいお前、俺に隙をみせたな。」


女の吸血鬼がこっちに気をとられているのを見て、サーティス騎士長は足を切り落とす。今度はちゃんと足から血が出ている。


「治癒……」


女の吸血鬼は地面にはって、治癒魔法をかけようとしている。


「遅えよ。」


サーティス騎士長は回りながら、女の吸血鬼の腕や腹を削いでいく。


「うわぁぁぁぁぁああ。」


「死ね。」


身体が半分くらいになった女の吸血鬼を見て、サーティス騎士長は頭に剣を突き刺した。今度は回復することなく、息絶えているみたいだ。


「ガキ、ちゃんと騎士になれよ。待ってるぞ。」


「はい、サーティス騎士長。」


俺らはそれだけ言い残して、家の近くに転移した。


「ロージェン、お疲れ様です。今日は早く寝ることをおすすめします。」


「ありがとう、でも両親に色々伝えないといけないからね。ヘスティア、手伝ってくれてありがとね。」


「どういたしまして、また明日も来てくださいね。」


「うん、また明日。」


それだけ言い残してヘスティアは転移してしまった。


「ネージュ、起きて。」


「ん、んっ……ロー?」


「ああ、良かった。」


ヘスティアのお陰で傷一つないネージュは目を覚ました。


「ロー……ありがとう。」


「どうも。」


ネージュは安心した様子で俺を強く抱きしめている。普通は逆じゃない……?


「今日はゆっくり休んでね。」


ヘスティアにかけられたような言葉をネージュにかける。


「あ……おかえり。ネージュ、大丈夫?それにロー、遅かったのに良く見つけれたね。」


「うん。ネージュは疲れているだろうから、風呂だけ入って寝せてあげて。何があったかは俺が説明するから。」


「ええ、わかったわ。」


この後、ネージュを助けた方法をでっちあげた。

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