第二幕六話

何故、吸血鬼の陣地で一番怖いのが人族の騎士長なのだろうか。


「あなたこそ、こんな所にどうしたんですか?」


「当然、戦争だ。吸血鬼は厄介だから今のうちに根絶やしにしておきたかったからな。他の奴らもそろそろ来るだろう。で、そんなことはいいんだよ?てめらは何者だ?」


「通りがかりのか弱い少女ですよ。」


どうしたものか……普通の十歳の子供はこんな所には来ないだろうし、来れないだろう。そんなことは向こうにも分かっている。


「そーか。」


サーティス騎士長は一瞬消えて、次にはヘスティアの背後に立っていた。


「おい、ガキ。普通はか弱い少女はこの速さの攻撃から逃げれないぞ。」


「あれで、速かったんですか?」


俺には目で追えないような速さだったが、ヘスティアは全く速いと思っている様子はない。それどころか、煽っているようにも感じられる。


「これでも人族では一番の速さなんだけどよっ。」


俺には何が起こったかは分からなかった。気がつけば、木の上に居て下から爆発音みたいな音が聞こえた。


「あなたの恩寵は『発火』と、人族が戦争を始めた原因のロマノフによる『遺伝』と『加速』ですよね。」


「おいお前、何者だ?あのガキを逃がしたのは転移魔法だし、何より色々と知り過ぎだ。魔女か、どっかとのハーフなのか?」


俺はあの一瞬でヘスティアに転移させられたのか。


「いえいえ、私は魔女でもありませんし、純血ですよ。あまり知られていない種族ですので安心してください。私は戦争には中立的な立場を守っているのであなたを殺したりはしませんよ。私の連れが危なかったら別ですけどね。」


ヘスティアは暖かくて冷たい微笑みで、サーティス騎士長を黙らせてしまった。ヘスティアは何族なのだろうか?ヘスティアの実力の底はまだまだ見えそうにない。


「分かった。じゃあ、ここに居る理由だけは説明してもらうぞ。それにそろそろ、仲間も来る。お前らの安全のためにも急げ。」


まさかのサーティス騎士長が俺らについてくれるみたいである。それなら、願ったり叶ったりだ。


「ここからは俺が説明します。まず、俺の姉のファンデル教の教会騎士候補であるネージュが誘拐されました。それで、ヘスティアが居場所を突き止めてくれたので」


「おい待て、どうやって突き止めた?」


「まず、ネージュさんの髪の毛を使ってネージュさんの情報を形成し、世界中を読み込んで場所を特定して、座標を照らし合わせました。」


「世界中を一瞬で捜索できるなんてバケモノかよ。魔女でも流石に無理だろうな。だいたいお前らがここに居る動機は分かった。最速でこの城を潰すぞ。」


「ええ、では行きましょうか。」


サーティス騎士長とヘスティアが並んで城に入る姿を見て、俺はどんな敵が来ても勝つことを確信していた。


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