第二幕五話

ヘスティアとオークを殺さない程度に狩って帰ってくると、ネージュはまだ帰ってきていなかった。


「あ、ロー。ネージュ知らない?」


「うん、知らないよ。」


「そう……なにかあったのかな?」


「心配なら一回、教会に聞いてこよっか?」


たまにはネージュを迎えに行くのもいいかもしれない。


「そうしてくれると助かるわ。」


「うん、行ってきます。」


家を出て、直ぐに転移魔法でネージュがいつも通っている教会の訓練所の近くに転移する。訓練所に入るともう、誰もいなかった。諦めて出ようと思った時、人の気配を感じた。


「誰だ?」


「誰だとは酷いね。ネージュのブラザーくん。」


「あ、胡散臭いおっさん。」


「酷いね、私はキースという名前を持ってるからね。ネージュならもう、ゴーホームしたよ。」


ここは無事に帰ったらしい。なら、帰宅途中で誘拐されたか、家出をしたのかだろう。ヘスティアを頼るしか無さそうだ。


「キースさん、ありがとうございました。さようなら。」


「しーゆー、がんばれよブラザー。」


キースさんの視界から外れたとこから、湖へと転移した。この時間まで、ヘスティアが居てくれたらいいんだけど……。


「こんばんわ、こんな時間にどうされましたか?」


創造されたたくさんの服を着ていたであろう散らかり方をした湖に、ヘスティアは座っていた。


「ヘスティア、ネージュが誘拐されたかもしれないんだ。探してくれないか?」


「ネージュというのはどなたでしょうか?」


「ああ、俺の姉だよ。」


ヘスティアにはネージュの話をしたことがなかったかもしれない。


「正確な場所を知りたいのでしたら、彼女の髪の毛でもなんでもいいから、身体の一部を持ってきてくれませんか?」


「了解。」


今度は自分の部屋へと転移して、ネージュの部屋へと忍び込む。両親にはバレないように気をつけて移動をする。なんやかんやでネージュの部屋に入ったのは初めてだ。枕元に髪の毛が落ちているのを見つけて、それを拾って湖へと戻る。


「早かったですね。私でも少々時間がかかりますけど、待ってください。」


「読込……」


ヘスティアが珍しく詠唱をして、魔法陣を形成している。その魔法陣が何重にも引かれて、地面を埋め尽くす。


「見つかりましたよ、ネージュさんは吸血鬼の城に居ますね。」


「吸血鬼っていたんですか?」


「ええ、吸血鬼は鬼族ですよ。血を少し吸うだけで、鬼族の能力値を大幅に上回ることがあります。」


しかし、なんでそんなところに……。


「吸血鬼の城は戦地なので急ぎましょう。」


「はい。」


ヘスティアとネージュがいる城の手前に転移した。


「ロージェン、ここからは敵の種族の陣地ですよ。一瞬も気を抜かないようにしてぐださいね。」


「了解。」


城の門兵は三者。全員、手ぶらだから魔法を使うのだろう。ヘスティアの攻撃の合図を待っていたら、誰かが俺達の前をものすごいスピードで通り抜けた。次に気づいた時にはその人の剣によって、門兵は切り刻まれていた。


「おい、お前ら。何故、人族が吸血鬼の陣地に居る?」


俺はこの人とあったことがある。イアベルの父で、前騎士長アルバートの息子の現騎士長のサーティス騎士長だ。

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