第二幕四話

俺とヘスティアは高級な服屋を出て、近くの噴水のある広場のベンチに腰をおろしていた。


「ロージェンはそろそろ、お腹が空きましたか?」


「うん、そろそろ腹減っできたけど、ヘスティアにあわせるよ。」


「大丈夫ですよ、私のお腹は空きませんし満たされることもありません。大食い選手権があったら優勝確定ですね。」


「まあ、ならそろそろ食べよっか。」


ヘスティアの言っていることが冗談に聞こえなくて怖い。


「ロージェンは何が食べたいですか?」


「うーん、ヘスティアが好きな物を食べてみたいかな。」


「分かりました、直ぐに用意しますね。」


用意……?


「はい、どうぞ。」


ヘスティアがこちらに手を差し出すと、お弁当バケットが唐突に現れた。中からは前世を思い出させる美味しそうな匂いがする。


「これこそが、手作り弁当ですね。」


「いや、なんか違うと思うけどありがとう。」


バケットの中身はサンドイッチみたいな物とビーフシチューみたいな物が入った皿が入っていた。


「美味そう……。」


「ありがとうございます。お口にあうとよろしいのですが。」


俺は魔法でスプーンを作り出して、シチューみたいなものを口に入れる。


「前世、超えてるやん。」


全体的に前世の料理の方が好きだったが、これは前世の美味しさを超えてきている。サンドイッチも過去一美味しくて驚きが隠せない。


「お口にあったようで、良かったです。それじゃあ、次はロージェンが私に作ってください。私もあなたの好きな物を食べてみたいです。」


「分かった。」


果たして俺が作った物はご飯と言っていいのだろうか。作ったのは、高級なブランドのカステラ、アイス、チョコレートなどこの世界にはなくて自分が好きだったものだ。


「美味しいですね。これは、かなりの値段で売れますね。」


「ヘスティアのご飯も売れると思うよ。」


「ええ、売れるでしょうね。でも、売れた所で私にはお金が必要ないのですよ。欲しいものがあれば作ればいいだけですからね。」


あー……、この世界ではお金の価値が低そうだ。


「最近は楽しいですね。」


「最近って、まだ会って三日じゃない。」


「そうですね、でもこんなのは久々かも知れません。何年ぶりなんでしょうかね。」


ずっと思ってたのだが……


「ヘスティアって何歳なの?」


一瞬、心臓が掴まれたような感覚に陥った。


「次はそのまま握りつぶしますよ。」


「殺す気か!」


「そんな簡単に殺してあげませんよ。出来るだけ苦しんで死んでもらうためのベストを尽くします。」


「俺、そこまで酷いことしたか?」


確かに女性に年齢を聞くのは失礼と言うが、ヘスティアは少女だ。故に悪くない。はい、証明終了。


「そうですね、私に年齢を尋ねるのはロージェンに経験人数を聞くのと同じくらい酷いことなんですよ。」


「おいおいおい待て待て待て、何故俺に経験人数を聞くのが酷いこととされている?俺の経験人数など知らないだろ。」


当然今は十歳で、 前世ではベッドから殆ど動いていなかったから何も経験しているわけはない。


「見れば分かりますよ。俺は嘘をついています、と顔に書いてありますよ。」


言われた瞬間、顔を触るが冷静に考え直したらそんな訳がないことくらい理解できる。


「嘘だと思っているかもしれませんがたった今、魔法で書きました。」


「甘いな。」


俺は魔法を使って、顔を洗った。もし、書かれていたとしてももう消えただろう。


「クスっ、これは一本取られましたね。」


「じゃあ、そろそろ帰ろっか。」


「ええ、そうですね。また明日。」


俺らは路地裏に行って、それぞれ転移魔法を使った。


「ただいまぁ。」


「おかえり、ロージェン。何してたか、知らないけど嘘はつかないようにね。」


「え……。」


洗面所に行って、鏡を見ると顔に『俺は嘘をついています』と書いてある。


「ヘスティアめ……。」


そう呟くと突然、手の中に紙が現れた。


私は顔を洗ったら、顔に文字が書かれる魔法をかけたのですよ。つまり、一本取られましたねってのはあなたが一本取られたってことを言っただけです(笑)


紙にはそれだけが書かれている。


「あの野郎……。ふざけんなぁぁぁぁぁぁああ。」


久々に大したことないのに大声を出した。


「ロージェン、うるさい。」


大声で注意をする元気があったネージュだが、次の日の夜にネージュが家に帰ってくることは無かった。


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