第二幕二話

ヘスティアに明日から魔法が使えると言われて中々眠れずに居たが、なんやかんやで結局は気づいたら眠れるということが分かった夜だった。


朝、目を覚ますと自分が魔法を使えると思っていた。だが、手から炎を出そうとしても出ないし、カステラを作ろうとしても出てこない。少し憂鬱な気分になりながらも部屋を出た。


「ロー……目が、どうしたの?」


「へ?」


ネージュに心配されたが何があったのかは分からない。自分の目がどうかしたのだろうか。窓を見ると、片目が銀色に変わった自分が映っていた。


「うわぁぁぁぁぁあ。」


目の色が変わっている……。これは、魔力を増やしたことによる副作用なのかなんなのかは分からない。


「ロー、心当たりとかある?」


「え……。」


あると言えばある。しかし、正直に言ったらかなりまずいだろう。


「ん?」


「えっと、銀髪の美少女に会ったことくらいかな。」


嘘はついていない。ヘスティアは銀髪の美少女だったし、一番の心当たりは彼女だろう。というよりもヘスティア以外の可能性は考えられない。


「そう、じゃあ私はもう行くから。」


「行ってらっしゃい。」


ネージュは今、ファンデル教の見習い教会騎士として日々鍛えられている。あんな胡散臭がったおじさんでも五年も経って、立派な人族を代表する宗教と変わっていった。


「行ってきます。」


俺もネージュが出てから数分して家を出て昨日の湖に行くことにした。





湖に着くと、既にヘスティアはそこに居た。


「ヘスティア、眼が銀色に変わっちゃったんだけど、昨日のなにかの副作用?」


「それはですね、魔法が使えるようになったことの副作用ですよ。」


「え……じゃあ、本当に魔法が使えるんですか?」


朝は使えなかったような……。


「ええ、使えますよ。その使い方を私が今から説明してあげますね。」


あ……やり方、必要なんだ。


「ロージェンの場合は魔力がとてつもなく多いので、無詠唱勝つ魔法陣なしで魔法を使えます。必要なのはやりたい魔法のイメージと魔力器を開くことです。」


俺の魔力はとてつもなく増えたということだけは分かった。


「魔力器ってどうやったら開けるんですか?」


「ちょっと、失礼しますね。」


そう言って、ヘスティアは俺の胸に手を当てて五本指に少し力を加えた。自分の中の血液の流れが早くなっているみたいな感覚だ。


「はい、これで開きましたよ。これからは自分の意思で開けると思いますよ。」


「ありがとうございます。」


いつか、カスティーリャがやっていたみたいにカステラが作らていくのを想像した。カステラの甘さを食感を匂いを鮮明に思い出すと、目の前にはカステラが宙に浮いていた。


「すごいですね。こんなに早く習得できるとは思っていませんでした。魔法の適正がかなり高いのでしょう。魔法も種類ごとに適性があるのでぜひ試して見てくださいね。」


「なるほど……。」


何でもかんでも使える訳では無いらしい。ヘスティアは全ての適性がカンストしてそうだけどな……。





それから暫く色んな魔法の適性を試していたら、あっという間に日も暮れて家に帰ることになった。


「ロージェン、また明日ここで会いましょうね。」


「ああ、よろしくな。」


転移魔法を使ったかのようにヘスティアが消えていくのを見届けて俺は家に帰った。


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