第2話

翌日の朝、僕は起きて直ぐに母さんに一つのお願いをしに行った。


「母さん、フェリス騎士学園附属剣教室に通いたいんだけど、いい?」


魔法が使えなくても、異能と剣でチートキャラになるのを目指すという目標を昨日たてた。なら、ヘレナさんの所にあてがあるから、学びに行くのは当然のことだ。


「勿論。息子が騎士になったらホントに誇らしいのよ。」


「そういえば、騎士って何?」


「戦地の前線で戦う人達のことじゃないの?騎士長のアルバートさんなんてこの前、鬼族の拠点を三つも奪ったらしいよ。ホント、カッコイイのよ。」


何となくそんな気もしていたけど、騎士の仕事は戦争だったのか。この世界には国がないし、王もいない。そんなところに普通の騎士がいるのも変だろう。


「ふぁぁぁあ、おはよぉー。」


あくびをしながら、パジャマ姿のネージュがリビングに降りてきた。


「あ、行ってきます。」


ネージュを見たらすぐに、僕は家を出ていった。転生した日から、僕は姉恐怖症になっている。まともに目を合わせることもまだ難しい。それだけ、殺された時のことは今でもトラウマだ。


家を出てから、五分。僕は獣族のルードを誘いに行った。ルードは去年からずっと一緒に広場で遊んでいる親友だ。勉強なんてしない僕らは、ほぼ毎日広場に通っていた。


「ルード、剣を学びに行こーぜ。」


「いーけど、急にどうしたんだよ?」


「昨日、金髪美女のエルフのお姉さんに会ってさ……」


ルードは、片手を出して一旦僕にまったをかけた。


「そのお姉さんは巨乳か?」


「ああ、もちろん。」


そう言って、顔を見合わせて僕らはニヤリとした。


「よし、じゃあ行くか。」


僕らはまだ五歳だ。僕の精神年齢はもっと高いため、こういう話が唯一できるルードとは簡単に仲良くなれた。ルードみたいな五歳もどうかと思うけど……。


「今日から俺らの夢は騎士だな。」


「当たり前だろ。提案したのは僕だし、やるからには本気でやるからね。」


「じゃあ、将来本気で殺しあおうぜ。」

「え?」


殺し合うのか?という続きの言葉はルードが当たり前のように笑っているのを見て呑み込んだ。確かに違う種族の騎士は敵対し合うのが当然だ。この世界で殺し合うのが当たり前でも、友達とは殺し合わなくてもいいだろ。だが、そう思っているのは僕だけなのだろう。


「なんだよ、嫌なのか?」


「嫌……なわけないだろ。二十年後、楽しみにしてろよ。」


「二十年後かあ、そんなの想像も使ねえな。」


「そーだな。」


二十年後も変わらず、この世界は戦争を続けているのだろうか?そもそもこの戦争は何年続いているのだろうか。僕は二十年後は戦争が終わってて、森に囲まれた側だけの世界で僕の前を歩いているルードと酒を呑むことを密かに願っていた。

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