第1話

あれから、五年の月日が流れた。


「ロー、行ってらっしゃい。」


あの後、僕はロージェンと名付けられた。今日までの五年間、前世では動かせなかった分身体をたくさん動かした。町のエルフや獣族達と四六時中走り回っていたと思う。そして今日、ついに勉強を始めることにした。勉強と言うよりか調べ事だ。この世界の仕組みなどをちゃんと理解しておきたいし、強くなる方法を知りたい。あと、魔法の使い方を調べたい。因みにこれは絶対。マジで絶対。


家から十分くらい歩くと、町で一番大きな図書館に着いた。こっちの世界では言語学習以外をしていないので、図書館に着たのも初めてだ。世界の歴史っぽいものを見つけたが、言語が古くて読めなかった。


「なんか、探してるの?」


「そうなんですよ、この世界の仕組みについて知りたくて。」


振り返ると金髪ロングの美人なエルフのお姉さんがいた。


「この歳でそんなことに興味を持つなんて、すごいわね。今回は特別に私が色々と教えてあげましょう。」


「ほんとですか?ありがとうございます。」


そういえば、この人はなんの人だろう。図書館で働いてるようには見えないんだけど……まあ、教えてもらえるなら、いっか。


「まず、この世界には二つの区域に分かれているの。セルクルフォレストを境界線として内側は安全地帯、外側は戦争地帯なの。内側は殺しは禁止とされていて、外側は殺しが当然の世界となっているわ。」


「なんで殺すんですか?」


一度殺された時の事を思い出し、この世界が怖くなってきた。


「理由は二つあるわ。一つ目は殺した相手の魔力を全部奪えるからよ。」


「全部……ですか。」


つまり、自分と同じくらいの魔力の人を殺したら魔力は二倍になるということだろう。


「そもそも、魔力って何が出来るのですか?」


異世界転生したのだから魔力があることは分かる。しかし、その使い方は未だに分かっていない。


「あなたは多分、身体能力の強化ぐらいにしか使えないと思うわ。」


「あなたは?」


「そうよ、あなたって人族でしょ?下位種族は魔法を使えないもの。」


え……魔法を使えない?マジで……?


「嫌だぁぁぁぁあ、折角、異世界転生したのに魔法の使えない異世界なんて散々だぁぁぁあ。神様、もう一回異世界転生させてくれぇぇぇぇえ。」


「え……ちょっと、落ち着いて、ね。異世界転生ってのはよく知らないけど、ここ図書館だから。静かにしないとよ。」


「グスッ、グスッ、はー、はー。グスッ。」


お姉さんに頭を撫でてもらいながら、慰められてようやく泣き止んだ。転生した時も思ったけど、この世界に異世界転生という概念はないみたいだ。異世界転生ものは、異世界では需要がないみたいだ。かなり、ショック……。


「さっきも言ったように下位種族はみんな、魔法が使えないから安心して。」


「そういえば、種族って何がいるんですか?獣族とエルフとドワーフ以外見たことないんですけど。」


俺の住んでいる町は安全そうなメンツだから、安心した。ヤバそうな種族とはなるべく関わりたくない。


「種族でも、下位種族と上位種族と天域の三つに分かれているの。下位種族は人族、獣族、オーク、魚族の四つ。上位種族はエルフ、ドワーフ、鬼族、魔族、巨人族の五つ。天域は天使族、悪魔族、竜族の三つって言われているわ。」


「なるほど……。」


異世界の種族としてはすこし少なそうだ。神や吸血鬼などがいないのかな。人族ってやっぱり弱いんだね。


「そういえば、殺す理由の二つ目だけど、それは戦争を行っているからよ。」


種族が違えば力は異なる筈だから、戦争なんて天域以外は滅びそうだけどな。


「人族、獣族、オーク、エルフ、鬼族、魔族、巨人族の七種族でこの世界の王を決めるために戦っているのよ。ドワーフと魚族は参加してないわ。」


「天域は参加してないんですか?」


「ええ、天域は上空に住んでいるから、そっちで戦争でもしてるんじゃない。」


恐ろしい世界だな。


「人族は速攻ボコボコにされないんですかね?」


「ああ、それね。人族は恩寵があるから、かなり強いのよ。」


「恩寵?」


神とかいない筈だった気がするんだけど。


「人族は十五歳になったら、恩寵が発現するのよ。空を飛べるようになったり、火を操れるようになったりと色々あるわ。これって、魔法みたいでしょ。」


「よっしゃぁぁぁぁあ。」


魔法じゃないけど、異能があるぞぉぉぉぉお。転生とかしたらチートな異能を貰えるだろうし、勝ち確だわ。


「ちょっ……だから、図書館では静かに、ね。」


「あ……ごめんなさい。」


またやってしまって、自分の頬が赤くなっていくのを感じる。


「ごめん、そろそろ私は行かないとだわ。また、聞きたいことがあったらここに来てね。」


そう言って、エルフのお姉さんは名刺らしきものを渡してどこかへ行ってしまった。


「ありがとうございました。」


フェリス騎士学園附属剣教室室長ヘレナ


名刺にはなんか凄そうな役職が書かれていた。

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