戦争に囲まれた異世界で 〜魔法と異能の異世界転生ファンタジー〜

@nyagawo18

プロローグ

僕は小さい頃から身体が弱かった。そのせいで、人生の大半を病室で過ごしていた。窓からはいつも通りの常緑樹と空しか見えない。運動をしたら当然発作を起こし、ゲームをしたら熱中すると発作を起こした。そのせいで自分の趣味は自然と限られ、小説や漫画などにハマり出した。両親は少ない財産をはたいて僕にたくさんの本を買ってくれた。


「洋介、はい今日の分。」


「ありがとう、ユキ姉ちゃん。」


僕は放課後毎日、本を持ってきてくれる姉が好きだ。最近は異世界転生ファンタジーにハマっている。もし、僕も転生して思うがままに身体を動かせたらと考えるだけで楽しい。


「紅茶、淹れるね。」


「ありがとう。」


本のページを捲る音と紅茶を注ぐ音だけが狭い病室に響く。ユキ姉は紅茶を机の上に置いて、リンゴと果物ナイフを取り出した。


「リンゴ、好きだったよね?」


「うん、ありがとう。」


あれ……、紅茶を飲んだのに眠い。カフェインが効いてないどころか、強い眠気に襲われている。


「良かった、ちゃんと効いたんだ。」


「なんの……こ、と?」


「ごめんね、私は学校で虐められたくないの。家が貧乏だからとか放課後毎日予定があるから虐められるだって。だからごめんね、洋介。貴方がいなければ改善されると思うの。」


だんだんと薄れていく意識の中で、ユキ姉の言葉に耳を傾ける。


ユキ姉は手に持った果物ナイフを振りかぶって……。



トクン



トクン



止まった筈の心臓のリズムを感じる。

鉛のように重かった瞼が簡単に開いた。

そこには、見慣れない天井が広がっている。アンティークなライトや時計が見える。その後、窓から外を見た時に僕は叫んでしまったのが、過去一の失敗だろう。窓から、空に浮かぶ島を見つけた時僕は状況を理解した。


「よっしゃぁ、異世界転生したぁぁぁぁあ。」


自分の夢が叶って、ついはしゃいでしまった。そんな赤子を奇異な目で見る人が三人いた。


「カティ、この子喋ったよね!?」


ガタイのいい男が驚いている。


「後半は分からなかったけど、よっしゃぁって言ったよね。」


ベッドで苦しそうに横たわっている女の人のテンションが急に上がった。転生したってことはこの人達が僕の新しい父親と母親だろう。


「これ、だれぇ?」


「ネージュの弟だよ。」


「わたし、お姉ちゃん?」


「そーだぞ。今日からお姉ちゃんだからな。」


「よろしく……ね。」


姉……その単語を聞くと、ついさっき死んだ時のことを思い出してしまった。果物ナイフで……。


「うわぁぁぁん、グスッグスッ。」


おかげで見事な産声(?)をあげることができた。因みにこの日の話は誕生日ごとに聞くことになった。


こうして、僕の異世界生活が始まった。

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