転生して集まったら……

「……ということでよろしいでしょうか?」


「はい。そのとおりです」


 異世界から転生してきたのだというその三人は受付嬢に異口同音に答えた。


 一人目は髪の長い金髪の少女で足を広げた状態で座り、いかにも鬱陶しそうな顔をしながら髪をいじっている。


 二人目は長身で筋肉つきのよい男なのだが、その見た目とは全く違い足はとざしてもじもじとしている。


 三人目は十代前半の小柄な少年で背筋をきっちり伸ばした状態で受付嬢の言葉をひとつひとつメモしている。


 三人とも最近異世界で死んで転生してきたのだが、三人ともすでにこの世界に生きている人間に魂が入り込むという形でやってきたのだという。しかも三人とも前いた世界とは容姿がまったく異なるとのこと。


 一人目は元は男だった。年齢はいまの姿と変わらない17歳の高校生でなにものかに殺されたのだという。それからなぜか少女に転生。


 二人目は性別は同じ男性だが転生前はいまの姿とは真逆で小柄で細身の16歳の少年だったらしい。


 三人目は元は記者として働く26歳の女性だったとのこと。


 転生場所はバラバラだったのだが、いまいるギルド内の「異世界転生、転移者専用受付」というコーナーで冒険者登録しようと集まってきたのだ。


 ルイと名乗る少女は最初にアメシスト王国へ行っていたらしい。そこで出会った異世界出身の騎士団に進められてギルドへやってきたのだが、あとのふたりは転生場所から直接きたらしい。


 べつに知り合いでとなんでもないのになぜか三人同時に面会することになったのかというと、本当に同時に受付に押し寄せてきたにほかならない。


 順番に並ぶようにいうとなぜかお互いに譲り合い出すものだから埒が開かない。


 そういうわけで受付嬢が三人まとめて情報収集することにした。


「事情はわかりました。ではさっそく冒険者登録をしましょう。皆様、これをお取りください」


 そういいながら、受付嬢は三人に一枚のカードをそれぞれに渡す。


「これ、なんだ?」


 ルイという少女が尋ねた。転生前が男だったために口調も男そのものだ


「スマホです」


「スマホ!? これがスマホなの!?」


 そういってマジマジみたのはレイヤのいう少年だ。しゃべり方はいかにも成人女性といった感じだ。


「すごい! なんかすごい!」


 さっそくスマホを触り始めたのはジェットという大柄な男だった。けれど、その口調は無邪気な少年といった感じだった。


「これにはあらゆる情報が入ってます。たとえば、あなた方がいまどれぐらいのレベルなのだとか、どのような職業が向いているのか表示されます」


 受付嬢が説明している間にはすでに三人とも慣れた手つきでスマホを触り始める。


「私たちの知ってるスマホと変わらないわね」


 レイヤが言った。


「そうみたいだ。おっ、ステータスでたぞ。レベル1かーー」


 ルイは椅子の上にあぐらをかいたまま言った。


「そんなものですよ。これからなんだ。これから冒険してレベルをあげる」


 ジェットが楽しそうにいう。


「うーん。なんかいろいろと知ることができるのがいいわね。あっ私の職業が魔法使いだって~。って魔法使えるの!?」


 レイヤが驚いて見せる。


「大丈夫です。中身はどうであれ、その体は現地のものですから」


 受付嬢は淡々と応えた。


「ぼくは剣士だ」


 ジェットは興奮する。


「げっ! おれは賢者かよお」


 ルイがつまらなさそうな顔をした。


「賢者もいいと思うよ。最強かもしれないよ」


「まじで!? だったらいいや🎵」


「それではあなたたちは無事。冒険者になりました。ところであなたたちはここではじてて会ったようですが、そのままパーティーを組みますか?」


 受付嬢のことばにルイたちはお互いに顔を見合わせた。


「そうだなあ。三人とも異世界きたばっかりだしなあ」


「うーん。でも、僕たちなにもしらないよ。僕たちのような転生者に理解ある人がどれ程いるかわからないし」


「それにいまから別の人探すのも面倒よね。同じ転生者同士だし、いいんじゃないの?」


「じゃあ決定ですね」


 受付嬢のことばに三人はうなずいた。


「それではパーティー名を決めてください。ふつうはレベルが低いとパーティー名を自分達で自由に決めることはできませんが、あなた方は転生者ですし、ステータス的にもすぐにレベルアップするでしょうから、自由に決めていいですよ」


「そうだなあ」


 三人はしばらく考え込んだ。


「あっ転生者だからリバースってどう?」


 そして、レイヤが口を開く。


「それいいね!賛成」


「うん、ぼくも賛成!」


 全員一致でパーティー名が決定した。



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