事故で死んで転生してみたら……
正直私がいけなかったのだ。
偶然にも大スクープに遭遇した私は写真を取るとすぐに記事にしようと編集社へ急いでいた。そのために信号が赤に変わっていたことにも車が猛スピードで横断歩道に突っ込んで来たことにも気づかなかったのだ。
気づいたときには遅かった。
私の体は車にはね飛ばされたのだ。
ああ死ぬんだ。
そう思ったところまでは覚えている。
でも次に気づいたときには見知らぬ女性に抱かれていた。
しかも女性は私よりも大きい。
いや逆だ。
私の方が小さいようだ。
「大丈夫? けがなかった?レイヤ」
どうやら私のことをいっているらしい。
でも私はそんな名前じゃない。
もっと女らしい名前をしているというのにその名前はどちらかというと男の子に名付けるものではないかと思う。
「大丈夫だよ。全然大丈夫。だから、離れてくれない?」
私がそういうと女性は慌てて私から離れた。
「ごめんなさい! そうよね。レイヤももう12才だもの。いつまでもお母さんに甘えられない年齢よね。ほんとうにごめんね」
そういいながら自分にげんこつを食らわしている。その様子は可愛らしくあるのだが、どうやらなかなか子離れできないタイプらしい。
情報を整理すると、いま私はレイヤと呼ばれる12歳の子供のなかにいるようだ。なぜそう判断したのかというと、私は死んだ。確実に死んだのだと自覚しているためだ。
死んで天国か地獄……
いやいや私は悪いのことした覚えないから地獄はない! うん。ない! そうそう、私は健全だった。仕事に熱心すぎて暴走するなと言われることはあるけど、地獄に落ちるようなことはしてない。
というわけでとりあえず、地獄ではないだろう。
輪廻転生なんかあるのかはわからないけれど、とりあえず私の魂がレイヤという子供のなかに入ったというところだろう。
それを瞬時に理解するなんて我ながら冷静な人間だわ。
そういうことでとりあえずレイヤを演じておこうになるわけだ。レイヤを演じてもっと状況を把握しよう。
「母さん。俺はどうしたんだっけ?」
うーん、その言い方でいいのだろうか?
もしかしたら、「ぼく」だったかもしれない。
「あなたは冒険者ギルドに向かう途中だったのよ」
冒険者ギルドねえ
ん?
冒険者ギルド?
「その途中で妖魔に襲われたのよ。あなたは冒険者になるんだからと逃げもせずに戦ったわ。でもね、やっぱりダメだったのよ。あなたは妖魔に殺されそうになったところをお母さんが助けたの」
妖魔に襲われたのか。
ん?
妖魔!?
「ねえ。レイヤ。やっぱり冒険者なんかやめましょう。危ないわ。ずっといっしょに暮らしましょうよ」
えっと、この場合どう答えるべきなのかしら。
っていうか、妖魔とか冒険者ギルドとか
なに!?
それってゲームなんかに出てくる用語じゃないの!?
正直私はゲームには興味がないが、ただ元カレや弟がゲーマーだったからある程度の知識はあるぐらいだ。
そして一応記者という仕事をしているせいか流行りというものにはそれなりに敏感なので、これをどんな状況だというのか知っている。
いわゆる、異世界転生だ。
だけど、異世界転生がその世界の誰かに魂が入り込むことという話は聞いたことないわ。
これは夢なのか。
いやいや夢にしてはリアルすぎる。
うーん。
もしもそうなら、世界がどんなものかみるのもいいかもしれないわね。
これはチャンス!
知らないことを知るチャンスだわ。
もう決まりね。
「いや、俺はいくよ」
「レイヤ……」
お母さんは寂しそうな顔をする。
「俺は立派な冒険者になって帰ってくる。そして、母さんを守るよ」
うんうん、我ながらいいことをいっているわ。
「レイヤ」
母親はしばらく戸惑った様子をみせたのちになにか決意したように私のほうをまっすぐにみたを
「わかったわ。立派な冒険者になってちょうだい。だけど、約束よ。ぜったいに死なないで。父さんのところにいかないで戻ってくるのよ」
うーん。たぶんお父さんも冒険者だったけど死んだってところかしら。
「わかった。じゃあいってくるよ」
「いってらっしゃい」
そういうわけで私は旅立つことにした。よしいざ、冒険者ギルドへ!
あれ?
でも、冒険者ギルドってどこかしら?
あのお母さんに聞いた方がよかったのかしら?
うーん。でも、なにかしら地図もってそうよね。
そういうことで荷物を確認。
案の定、
冒険者ギルドを示す地図が入っていたわ。
うーんと
いまいるところがこの三角みたいね。
この❌が冒険者ギルドみたい。
えっと、シャルマン国?
冒険者ギルドはシャルマン国の首都ステラにあるのね。
うんうん
わかったわ。
とりあえずいくとしますか。
そういうわけで私は歩きだした。
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