第七〇編 千載一遇
とある
「ありがとうございました。またのご来店をお待ちしております」
「ご馳走様でした」
「ご、ごちそうさまでした〜……」
金髪姫ギャルこと
「すごく美味しかったね、
「う、うん。噂のデザートも美味しかったネ〜……」
爽やかなイケメンスマイルを浮かべる真太郎に対し、桃華はぎこちない笑顔とぎこちない日本語でどうにか答える。
よもやこの聖夜に想い人と二人きりで食事をすることになるなどとは夢にも思っていなかった少女は、未だに
その真太郎はと言えば、流石は
「で、でも、本当に残念だったね。
「……うん、そうだね」
桃華の言葉に、ワンテンポ遅れて真太郎が頷く。同僚の
「(久世くんも今日、悠真とご飯に行くの楽しみにしてたのかな……でもなんだか、それだけじゃないような気もする)」
いつの
真太郎が今日の食事会を楽しみにしていたことも、急に悠真が来られなくなったことを残念に思っていることも、おそらく間違ってはいないだろう。しかし彼の表情にはどこか、それだけでは説明がつかない心情が浮かんでいるような気がしてならなかった。
「……あ、あの、久世く――」
「桐山さん。このあと、どうしようか?」
「ふぇっ? あっ、え、えっと……!」
話し掛けようとしたところでタイミング悪くそう問われ、桃華は思考を一時中断する。
「このあと」というのは、つまり当初の予定――中央公園のイルミネーションを指しているのだろう。〝
「(で、でも久世くんと二人きりでイルミネーションを見に行くなんて絶対無理っ!? 絶対に心臓と
恋人たちで溢れ返る聖夜の中央公園は、地方雑誌でも取り上げられているような超メジャーデートスポットである。そんな場所を、レストランで食事するだけでいっぱいいっぱいだった
「(それに、もしかしなくても学校の人もたくさん来てるだろうし……もし久世くんと一緒に歩いてるところを見られたりしたら……!)」
『学園の王子様、聖夜の密会!』『お相手は隣のクラスの村娘!?』――冬休み明けの学校新聞、隠し撮りされた自分たちの写真が一面を飾っている様を幻視してしまった桃華は、恐ろしさのあまり背筋を震わせる。
久世真太郎の人気は学年内どころか学園内にも留まらない。働き始めたばかりの〝
駄目だ、やはり悠真という
「う、うーん、今日のところはやめておかない? 交通規制されるくらい混んでるみたいだし、人が多過ぎてイルミネーションもちゃんと楽しめないかもだし……」
これが
それでも
「中央公園……あそこなら……」
「? あの、久世くん……?」
ぽつぽつと独り言を呟く真太郎に桃華が首を
「桐山さん。実は僕、人混みを避けて中央公園のイルミネーションが見られる穴場を知ってるんだけど……行ってみないかい?」
「えっ? そ、そんな場所があるの?」
「うん」
どこか神妙な
「ずっと昔――たった一度だけ、皆で夜景を眺めた場所さ」
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