第一一編 聞き込み調査②
俺のアルバイト先である喫茶店〝
これは、〝
対して、休日は「自分へのご褒美」を求める客やリッチぶったマダムたちのおかげでなかなかに
うちの店長は元々
要するに日曜日である今日は店が忙しく、俺も昼前からのシフトでバタバタ働いていたわけなのだが、それも新人の
これくらいの時間になるともう新たに入店してくる客もいないし、
「残りの客がさっさと帰ってくれれば、俺たちも仕事が早く終わって助かるんだけどな」
「あ、あはは……」
俺が言った本音八割の冗談に、イケメン野郎が
「……それにしても、
「そんなことないよ。ただ僕は新人だから、常連さんには珍しく見えただけじゃないかな?」
俺が新人の時はそんなイベント、発生しなかったんだが。いやまあ、客のおばちゃんに絡まれることを羨ましいとも思わんけどさ。
しかしなるほど、
露骨にキャーキャー言ってるような女子はともかく、
「(……桃華か)」
あれからずっと考えている。俺はどうやって彼女の恋を叶えていけばいいのか。
おそらく桃華は、俺が桃華の恋を知っていることを知らない。俺が彼女の恋を知ったのは
だからこそ迷う。「俺は堂々と彼女の恋を応援してもいいのか?」と。
桃華からすれば、俺など単なる幼馴染み。そんな俺にいきなり「恋を応援してやる」などと言われても困惑してしまうのではないか。いや、それ以前に桃華は、自分が久世に恋していると知られること自体を恥ずかしがるのではないか。
仮にそうならなかったとしても、「どうして
「(そもそも、恋の応援って堂々とするもんでもないよなあ)」
男子中学生のノリじゃあるまいし、「おい桃華、久世が来たぞ! 今から告白してこいよ! ヒューヒュー!」と口笛を吹きたいわけではないのだ。そんなもの、応援どころかむしろ妨害である。
俺はただ、陰から彼女の恋を支えてやれればそれでいい。彼女から感謝されたくてやるわけではないのだから。「応援」よりも「支援」と表現したほうが適切かもしれない。精神的な補助ではなく、もっと実質的なサポートをしたいのだ。
「(つまるとこ、桃華にバレないようにコッソリ手助けをすればいいワケか。まるっきり『脇役』だな)」
自分で考えて苦笑していると、不意に久世が「ねえ、
「常連さんといえば……今日はあのお客さん、来てないのかい?」
「『あのお客さん』?」
そういえば、常連客の話題が出ている途中だったっけ。思考を中断して目を向けると、イケメン野郎が
「ああ、〝七番さん〟か」
「〝七番さん〟?」
「ああ、七番テーブルでいつも本読んでるあの常連客のことだよ。つっても俺らが勝手に付けたあだ名だけどな」
「そうなんだ……ええっと、それで、彼女はもう帰ったのかい?」
「帰ったっていうか、今日は来てねえよ。なんでか知らねえけど休みの日はいつも来ないんだよ、あの人」
「ええっ? そ、そうなのかい?」
俺の返答になぜか驚く久世。そんなにあの常連客のことが気になるんだろうか。まあ確かに、店のなかでもサングラスとマスクを外さないから目立つ客ではあるけど……。
「おーい、小野っち、久世ちゃーん。そろそろ店仕舞いの用意始めときなー」
「あぇーい」
「はい、
厨房から投げられた店長の指示にそれぞれ返事をした俺と久世は、その後は黙々と業務をこなす。
目的達成への方向性は
だが、まだまだ情報が足りない。なにせ俺は、今はまだ顔見知り程度の関係でしかない久世と桃華をどうこうしようとしているのだから。
「……
この胸の奥が、どれだけ痛もうとも。
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