第158話 【エルドの頼み・3】


 王都を出発してから、少し歩いた所から俺はフェルガの背中に乗って一度を始めた。

 目的地は王都から馬車で三日と言われているが、フェルガとクロの速度なら多分、一日もあれば到着しそうだ。


「フェルガ。体力大丈夫? もう王都から三時間位走りっぱなしだけど」


「問題はない。それにアルフが背に乗っておるから、全力を出しておらんからな」


「あっ、そうなんだ」


 数時間、移動を続けていた俺はフェルガを気遣って声を掛けたが、その心配はいらなかったみたいだ。

 それから更に二時間程移動して、完全に人気の居ない場所へと到着した俺は、一度お昼休憩を取る事にした。


「フェルガ。ずっと走ってくれたお礼に好きな物を作ってやるよ。何か食べたい物はあるか?」


「う~む……肉の料理なら何でもいいぞ」


「肉料理ね了解。折角なら、クロも一緒に食べようか」


 俺はそう言って、異空間で休んでるクロに声を掛けて外に出した。

 それから俺は調理を始めて、フェルガ達とお昼ご飯を食べた。


「それでアルフ。ここからは、クロに乗り換えるのか?」


「うん。そのつもりだよ。もう人の気配はしないから、クロに乗っても騒がれないと思うからね。フェルガはまだ体格的には大丈夫だけど、クロは体か大きいから人が居る所だと目立つからね」


「ワイバーンの中では我は大きい方だからな、アルフがそう考えるのも仕方ないな」


「いつかは王都から直ぐに飛んでいきたいけど、それをするならもっと有名にならないといけないけど、そうなると問題事も増えるから良い事だけじゃないのが辛いな……」


 ブラックワイバーンを従えてる冒険者として有名になれば、街から直ぐにクロに乗っても大丈夫になるとは思うが。

 それ以上に面倒事が増えそうだなと、俺は考えている。

 その不安は師匠達にも話しをしていて、今はまだクロの存在はそこまで公には出さないようにしておこうという話になっている。

 フェルガに関しては、見る人が見ればフェンリルだとバレるだろうけど。

 遠くからだとウルフ種に勘違いしてくれるだろうから、フェルガに関してはそこまで心配はしてない。


「さてと、そろそろ行こうか。クロ、準備は良い?」


「いつでも大丈夫だぞ」


 出発の前にクロに確認をした俺は、クロの背に乗り移動を始めた。

 空の旅はそこまでしてないから、久しぶりの空の旅に内心ワクワクしながら飛び立った。


「やっぱり、空を移動するって気持ちいいな……」


 フェルガに乗っていても凄く早くて爽快感を感じるが、クロの場合はそれに合わせて景色も楽しめる。

 俺はそんな空の旅を楽しみながら、今日の野営をしようと考える場所へと向かった。


「よし、今日はここまでにしようか。クロ、ありがとね」


 そうして今日の目的地である場所に到着した俺は、クロに地上に降りて貰いそうお礼を言った。


「うむ、我も久しぶりにこれだけ自由に飛べて楽しかった」


「俺も楽しかったよ。帰りの時もよろしくね」


 俺はクロにそう言ってから、野営の準備をして昼に作った料理を温め直して、夕食を食べる事にした。

 それから魔法で風呂の用意をしてお風呂に入り、風呂から上がった後はフェルガ達に見張りを頼み、テントの中に入って眠りについた。

 そして翌日、気持ちよく目が覚めた俺はフェルガ達の分の朝食も作って朝食を食べた。


「さてと、それじゃそろそろ移動を再開しよう」


 そう俺は言って、クロには異空間の中に入ってもらってフェルガの背に乗り、目的地の街へと向かって移動を再開した。


「見えて来たな、あそこでエルドさんが荷物の配達を頼んだ街か」


 移動を始めて三時間程経った頃、目的地の街が見えて来た。

 街が見えてきたと言う事は、ここからは人が通る可能性もあると考えて、俺はフェルガから降りて自分の足で歩いて街へと向かった。

 勿論、フェルガを出したままだと騒ぎになるかも知れないから、フェルガには乗せてくれたお礼を言って異空間の中に入ってもらった。

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