第159話 【エルドの頼み・4】
それから街の中に入った俺は、エルドさんから言われた建物へと向かった。
「すみません。ルクリア商会からの荷物をお届けに来ました」
「あっ、もしかして君が連絡を貰ったアルフ君? 予定よりも随分と早く来たね!」
俺の向かった建物は、鍛冶師が沢山働いている工房でその建物の入口で荷物を届けに来たと言うと、奥から炭で汚れた青年が出て来た。
「はい。こちらエルドさんから預かった荷物です。こちらが証明となる書類となります」
「……うん。エルド様の字だし、この印はルクリア商会の物だね。いや~、本当にありがとう! こんなに早く届けて貰えるとは思って無くて、どうしようか悩んでいたんだ。あっ! 自己紹介がまだだったね。僕はこの工房の主のティムだよ。よろしくね」
「ルクリア商会所属冒険者のアルフレッドです。よろしくお願いします」
そうして互いに自己紹介をすると、ティムは受け取ったバッグから沢山の鉱石を取り出した。
「皆、物資が届いたよ! 作業が始められるよ!」
ティムがそう叫ぶと、大勢の鍛冶師達は「お~!」と叫び鉱石を持って行って作業を始めた。
「本当に、こんなに早く届けてくれてありがとうね。物資の状況を確認しながら作業をしていたつもりだったけど、確認不足で作業を止めざる得なかったんだよね」
「まあ、誰にだって失敗はありますよ。それより、ここってルクリア商会とはどういう関係のお店なんですか?」
「見ての通り、ここは鍛冶師達が働いてる場所なんだけど、ここの人達は全員ルクリア商会所属の鍛冶師なんだよ」
「えっ、全員がルクリア商会の鍛冶師なんですか!?」
この広い鍛冶場には、パッと見ただけでも30人程の鍛冶師が居る。
「そう驚く事は無いよ。ルクリア商会にはもっと沢山の鍛冶師が居るんだよ? ここはルクリア商会に所属してる鍛冶師達の修行場みたいなところなんだ」
「ルクリア商会ってそんな事もしていたんですね。知りませんでした」
「ルクリア商会って色んな事をしているからね。僕も全部知ってる訳じゃないから大丈夫だよ」
ティムさんは笑みを浮かべてそう言うと、それから少しだけ鍛冶場を見学させてもらった。
修行場と先程教えられたが、ルクリア商会所属というだけあり全員が鍛冶師としてレベルが高いように見えた。
一つ一つの作業が丁寧で作られた武器や防具は、その辺のお店が売られている物よりもかなり質のいい物だと直ぐに見分けがついた。
「凄いですね。ここの他にも鍛冶師が居るんですよね」
「うん。ここを卒業した鍛冶師達は、色んな街に散らばって自分のお店を持っているんだよ」
「自分のお店ですか、それは凄いですね」
「まあ、勿論卒業するにはそれだけ高い能力が必要となって来るけどね。卒業していった人達が高い能力を持ってる人たちだから、その人達よりも下のまま卒業したとしても売れる作品を作れる鍛冶師にはなれないからね。だから、皆ここで自分の限界を超えられるように日々努力してるんだ」
成程、それで修行場という割にはかなり質の高い武具が並んでいるのか……本当にルクリア商会は、所属してる全員が凄い人だな。
そう俺は改めて感じて、それからも工房の中を見学させてもらった。
「忙しい中、見学させて頂きありがとうございました」
「ううん、こっちこそ物凄く早く荷物を届けてくれてありがとう。本当に助かったよ」
工房を出る際、ティムさんにお礼を言うとティムさんの方からもそうお礼を言われた。
そしてティムさんの後ろから、先程まで作業をしていた鍛冶師の人達も集まっていて「ありがとう!」と態々感謝の言葉を言いに来てくれた。
その後、俺はルクリア商会の凄さを改めて感じ、もっとルクリア商会の為、エルドさんの力になる為に努力しようと誓った。
「さてと、そうと決まれば早く王都に帰って訓練をしないとな!」
本当は街で一泊していくつもりだったが、工房で働く鍛冶師達の熱意に当てられた俺は一刻も早く王都に帰りたいと思い。
それから直ぐに街を出て、王都に向かって走り出した。
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