第157話 【エルドの頼み・2】


 それから俺のステータスの確認を終えた後、予定通りに訓練を始めた。

 そうして一日過ごした俺は、いつもの様に就寝前のクラリスとの勉強をしていた。


「兄さん、明日からまた居なくなるの?」


「うん。今回は冒険者活動じゃなくて、エルドさんの頼みでちょっと出る予定だね」


「エルドさんの頼み? 兄さんずっと、仕事が欲しいって言ってたけど遂に貰えたんだね。良かったね兄さん」


 クラリスにはずっとエルドさんから仕事が貰えない事を愚痴を言っていた為、遂に仕事を貰えた事にそう言ってくれた。

 そして俺はそんなクラリスに、どんな頼みをされたのか伝えた。


「荷物の配達。確かに兄さんの従えてる従魔だったら、そんな距離なら直ぐだよね。人が居ない所なら、ワイバーンに乗ったらもっと早そうだし」


「そうだね。一応、街の近くを通らずに人気が無い所に移動したら、クロに乗って移動しようかなとは思ってる。フェルガも早いには早いんだけど、やっぱり空を飛べるクロの方が道を気にせずに一直線に目的地に迎えるから良いんだよね」


「私も空を飛べる魔物を従えたりしたいけど、それには兄さんみたいに【従魔】スキルが必要になるもんね」


「まあ、それもそうだけど後は従える魔物の能力や性格も大事だね。フェルガもクロも魔物の中では知能が高いし、落ち着いた性格をしてるから苦労する事が無いからね」


 食って寝ての生活が好きな二匹だが、それ以外は特に問題も無い。

 それに俺の場合は、スキルを獲得して直ぐにスキルレベルが10になって異空間に入れておく事が出来る為、場所の確保も完璧だ。


「もしクラリスが絶対に従魔がほしいって思ってるなら、いつでも協力するよ。従魔スキルの習得方法は既に知られてるから、俺と一緒に訓練してればスキルは獲得できると思う」


「う~ん……まだ良いかな、今は仕事に集中したいから新しい事はしないでおくね。でも、もし欲しいなって思った時は兄さんに協力してもらうね」


「うん。いつでも待ってるよ」


 その後、勉強を終えたクラリスを部屋の外まで見送った俺は、寝室に入りベッドに横になって眠りについた。

 そして翌日、朝食を済ませた俺はエルドさんの部屋に向かった。


「おはよう。アルフ」


「おはようございます」


 部屋に入ると、既にエルドさんが待っていて俺は部屋の中に入った。

 部屋に入った俺は、そのままエルドさんから荷物が入った【異空間収納バッグ】を渡された。


「その中に既に配達する物資が入ってるから、それをそのまま向こうに居る責任者の者に渡して欲しい」


「わかりました」


 エルドさんからバッグを渡された俺は、それからエルドさんと共に部屋を出た。

 そして商会の外に出ると、そこには師匠達が俺が出て来るのを待っていた。


「えっ、今日は師匠達はお休みじゃないんですか?」


「弟子が旅に出るのに、見送りに来ない師匠は居ないだろ?」


「そうそう。直ぐに戻って来るとは言え、アルフ君がはじめて一人で王都から出るんだから見送りはしようって皆で話し合ったのよ」


「アルフ君に驚いてもらう為に秘密にしてたんだよ」


 師匠達からそう言われた俺は、嬉しさが込み上がって来て「ありがとうございます」と大きな声でお礼を口にした。


「本当にお主等はアルフの事が好きだな」


「初めての弟子ですからね。それにアルフの事が好きなのは、ルクリア商会ではエルドさんが一番だと思いますよ? 俺達に仕事を頼む時は、部屋で見送るだけなのにここまで見送りに来てますし」


 エルドさんの言葉に師匠はそう返すと、エルドさんは「確かに、そうだな!」と笑顔を浮かべてそう言った。

 それから俺は、エルドさんと師匠達に見送られながら商会を出発した。

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