第155話 【温泉村へ・4】


 そうしてアリスと一緒にお土産屋さんを見に行き、レオルド達へのお土産を選んだ。


「アリスのおかげでいいお土産屋さんを早くに見つけられたから、お昼までまだ時間があるね。アリスは何かしたい事とかある?」


「う~ん……特に思いつかないかな……」


「そっか、それじゃ時間になるまで村の中をぶらつこうか」


「うん!」


 アリスは必死にやる事を考えようとしていたが、俺の言葉に元気よく返事をした。

 それから俺達は村の中を散策してまわり、お昼まで時間を潰した。


「アルフ、初めての温泉村はどうだった。楽しめたか?」


「はい。休日の過ごし方ってこういう風にするんだなと、なんとなく理解しました。やる事だけに囚われるんじゃなくて、のんびりと一日過ごす事が休日の過ごし方だと学びました」


「そうか、それだけでも理解できたなら今回の旅行はやってよかったよ」


 師匠は笑みを浮かべてそう言うと、お昼ご飯を村の宿で旅行に来たメンバーで食べ、それから馬車に乗って王都に帰宅する事にした。

 王都へ戻る際は、特に予定してる事も無い為、行きよりものんびりとしながら移動をして、王都に到着したのは陽が落ちかけてる夕方頃だった。


「なんだかんだ移動にはかなり時間が掛っちゃったな」


 商会へと帰宅した俺は、夕食までまだ少し時間があるので訓練場へと行き少しだけ体を動かしながらそう口にした。


「移動も旅行の醍醐味ではあるけど、馬車にずっと乗ってるのは体も辛いもんね」


「そうなんだよね。普段、冒険者活動してる時の移動も馬車を使いたくないから、フェルガにそのまま乗って移動してるのも理由の一つなんだよね」


 馬より早いフェルガを使う理由は、移動速度がフェルガの方が早いのもあるが、馬車に乗らなくていいからという理由もある。

 俺はアリスの言葉にそう返すと、俺達の訓練を見ている師匠から「転移が使えるようになったら移動も楽になるな」とボソッと言った。


「転移を扱うようになるには、空間属性魔法が必要ですけど、かなり希少で覚え方すらも知られてない魔法の一つですから難しいですよね……」


 使えるようになったら、それこそ商会の役に立てるとは思うがその習得方法が全く分からない。

 以前もこんな話をしていたが、正直覚えられるなら直ぐにでも覚えたい魔法の一つだ。

 それから夕食の時間となり、アリスと師匠と一緒に食堂で夕食を食べ、アリスは両親と共に家に帰宅したのでその見送りをした。


「アルフ。明日からだが、どうする? 冒険者活動をしようにもウィストの街の連中はまだやる気になってるから、依頼の取り合いになると思うが」


「そうですね。正直、今は冒険者活動を優先したい気持ちでいっぱいですけど、それが出来ないならレベル上げに迷宮探索に向かうのが最善ですかね」


「まあ、それが一番だろうな。取り合えず、明日までにフローラ達と話しをしておくから、今日はシッカリと休むんだぞ」


「はい!」


 師匠の言葉に俺はそう返事をして、お風呂に向かい汗と疲れを落とし、部屋に戻って来てクラリスの勉強に付き合ってから眠りについた。

 そして翌日、朝食を食べていると師匠達がやって来て、今日からの予定について教えてくれた。


「昨日、アルフには迷宮にレベル上げに行こうと提案したんだが、あの後、エルドさんの所に俺達で話しをしに行ったら、アルフにちょっとした頼みをしたいとエルドさんに言われたんだ」


「エルドさんからの頼みですか?」


「ああ、王都から馬車で三日程移動した所にルクリア商会と取引をしてる商会があるんだが、そこに荷物を届けて欲しいと頼まれたんだ」


「旅行でフェルガの移動の早さを実感して、直ぐに届けたい荷物だからアルフに頼みたいってエルドさんが言ってたわ」


 師匠達からその話を聞いた俺は、エルドさんからの依頼なら是非受けます! と勢いよく返事をした。

 それから詳しい話はエルドさんの所に聞く事になってると言われた俺は、直ぐに朝食を食べて師匠達と一緒にエルドさんの部屋に向かった。

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