第152話 【温泉村へ・1】


 強制的に休暇を取らされた俺は、それが解禁され意気揚々と冒険者活動を再開しようとウィストの街へと戻った。

 だがしかし、ここ数日の俺の行動で他の冒険者の人達のやる気に火を付けてしまい、俺の出来る仕事が減ってしまった。

 その結果、一日に十数件片付けていた俺だったが、一日に二つしか受けれず、残りの時間は師匠の家で訓練の時間に費やす事となった。


「訓練が嫌と言う訳じゃないんですけど、折角この街に来てるのに冒険者活動が出来ないのはなんだか勿体ない気がします……」


「まあ、それに関してはアルフの責任でもあるからな。あいつらに冒険者としての在り方を見せたから、感化されたんだろう」


「自分よりも遅くに登録した冒険者が、努力していく姿を近くで見ていたのはあの冒険者達も一緒だからね。気づけば自分よりも上の存在になっていて、頑張り出したんでしょうね」


「本来の姿に戻ったと言えばいいんでしょうね」


 そうして数日間、早朝に二つ依頼を受けては昼前には終わって家に戻り、一日訓練をするという生活を続けた。


「旅行~、旅行~」


 そして約束の旅行の出発日となり、商会で準備をしているとアリスは嬉しそうに口にした。


「アリス、嬉しそうだね。そんなに旅行が楽しみだったの?」


「うん! だって、家族で旅行だなんて本当に久しぶりだし、アルフ君とも一緒だからね」


「ここ最近は、仕事が忙しくて家族旅行に行けてなかったからね。今回の旅行の話が出て、アリスは凄く楽しみにしていたんだよ」


 一緒に準備をしていたエリックさんは、アリスの言葉を聞いてそう言った。

 そうして準備を終えた俺達は馬車に乗って、王都を出発した。


「フェルガ。大丈夫そう?」


「この位の重さなら、問題はない。ただし、村に着いたら約束の物はちゃんと用意するんだぞ?」


「分かってるよ。今朝、新鮮なお肉が届いたから村について調理場を借りれたら、直ぐに用意するよ」


 今回、移動の時間を短縮する為にフェルガに本来、馬が引く馬車を引いてもらう事になった。

 そのお礼として、俺はフェルガに美味しいお肉料理を振舞うという事になり、事前に商会にいいお肉を取り寄せて貰った。

 そうしていつも馬車に乗る時は、師匠に御者席に乗ってもらい自分は荷台に乗ってるだけだったが、今は俺が御者席に乗っている。


「アルフ。初めての御者席だが、どうだ?」


「荷台とはまた別の感覚ですね。風に当たって気持ちいいです」


「それはまあフェルガが引いてるからってのもあるだろうな、本来はここまで安定して速度は出ないからな」


 フェルガの引く馬車は、今現在もかなりの速度が出ている。

 なので念の為、師匠と俺で馬車を魔力で保護している。


「この速度なら、かなり時間は短縮されそうだな」


「師匠は今から行く、温泉村は行った事があるんですか?」


「昔、今回みたいにルクリア家の護衛で行った事がある。あの時は、今回みたいに一泊二日みたいな急なスケジュールじゃなかったから、割と余裕をもって移動してたけどな」


 師匠がそう言うと、師匠はそのまま御者席に残り一緒に話しをしながら村へと向かった。

 村に向かう途中、馬車に乗り慣れてないアリスや、マリアさんが居るので少しだけ休憩をする事になった。


「そう言えば、学園の方はどう?」


「ん~、まだアルフ君の話題は尽きてないね。それだけアルフ君の戦いが凄かったんだと思うよ」


「……もう少し、抑えめにしておけば良かったな」


「それにアルフ君が来なくても、情報は来るからアルフ君が銀級冒険者に昇格したタイミングでまた話題に上がってたよ」


 アリスから学園に様子を聞いた俺は、自分の行動でまた学園に戻れる日が遠のいた事を知った。


「アリスは学園生活は大丈夫?」


「うん。リサちゃん達が居るから、前みたいに学園に行きたくないって気持ちは無いよ。でも、やっぱりアルフ君が居ないのは寂しいから早く戻って来れるようになってほしいなってずっと思ってるよ。これは私だけじゃなくて、リサちゃんやレイン君も思ってるよ」


「そう言って貰えて嬉しいよ」


 その後、休憩を終えて再び馬車に乗って移動を再開した。

 そして王都を出発して数時間、目的地の温泉村に到着した。

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