第151話 【強制休暇・4】
その後、一時間程話し合って旅行については大体が決まった。
旅行に行く日は今週の学園が休みの日で、一泊二日とちょっと時間が無い日程となった。
本当は数日間旅行に行くのがいいのだが、学園があるし、そもそも仕事をそんなに長期間休める程、暇な時期じゃないからこの日付となった。
そして肝心の向かう場所は、王都から馬車で移動して数時間の所にある温泉村に行く事になった。
「移動にかなり時間が掛るのだけが問題ですね。二日間だけですから、少し観光したらもう戻ってこないといけませんよね」
「まあ、普通はそうなるだろうけど、ルクリア商会には優秀な移動に長けた従魔を持つ冒険者が居るだろ?」
話し合いが終わった後、師匠に移動が問題だと言うとそう俺の事を見ながら言われた。
師匠のその視線に俺は「あっ」と声に出して、フェルガ達の力を借りれば時間を短縮できそうだ。
「でも、クロは協力してくれそうですけど、フェルガが力を貸してくれますかね?」
「大丈夫だろう。あいつはああみえて、アルフの事を気に入ってるからアルフからの頼みなら聞くと思うぞ」
そう師匠から言われた俺は、異空間で寝てるフェルガを起こして旅行に行く際に馬車を引いてくれないか? と頼んでみた。
「何故、我が馬の仕事をせねばならんのだ?」
俺の頼みに対してフェルガは、外に出て来て俺の顔を睨む様な顔で理由を聞いて来た。
「いや、急遽旅行に行く事になってさ、移動に時間を掛け過ぎたら折角の旅行なのに観光時間が減るでしょ? フェルガの足なら、普通の馬で行くよりもずっとはやくに行けるから頼めないかなって……駄目かな?」
「……何故、そんな無茶な日程になってるんだ」
「アルフを休ませるためだよ。アルフは休み方を知らないから、俺達で休ませようってなったんだよ。フェルガも、アルフとずっと一緒にいるなら分かるだろ?」
「ふむ……確かにアルフは休息の時間よりも、自身の鍛錬の時間を優先しておるな」
師匠の話を聞いたフェルガは数秒間考えると、「馬の代わりになってやろう」と約束してくれた。
そうしてフェルガはその約束をすると、たたき起こされたからもうひと眠りするといって異空間に消えた。
「ほらな? なんだかんだアルフの事をあいつは気に入ってるんだよ」
「意外と素直に聞いてくれましたね。もっと文句言われると思ってました」
その後、いつもの様に訓練場に行こうすると、師匠から「アルフはまだ休暇期間中だろ?」と言われて部屋まで見送られる事になった。
「休暇というより、謹慎に近いような気がしてきたな……」
部屋に入った俺はそう呟き、雑貨店で〝愚者の冒険譚〟と一緒に購入した料理本を見る時間にしようと思い、料理の勉強を始めた。
そんな生活を俺は残り二日間続け、再びウィストの街へと戻って来た。
「アルフ。先に言っておくが、これからは無茶をしてるなと俺達が判断をしたら休暇をさせるから、程よく頑張るんだぞ? 体を壊したら元も子もないからな」
「わかりました。きちんと自分の身体の事を管理します」
そう師匠と約束をした俺は、三日間の休暇期間を終えて冒険者活動を再開する事になった。
しかし、いざ依頼を受けようと思いギルドにやってくると、依頼が一枚も張られてなかった。
「アンナさん、依頼の紙が無いんですけど何かあったんですか?」
「アルフ君に感化されて、いつもギルドで飲んだくれてる人達が頑張り出したから依頼の消化速度が速くなってるのよね」
「そ、そんな……」
そうして冒険者活動を再開しようと意気込んで来た俺は、その言葉を言われて師匠の家に帰宅する事になった。
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