第149話 【強制休暇・2】
その本のタイトルは【愚者の冒険譚】という本。
他の物語関係の本では、〝英雄、勇者〟等といった輝かしいタイトルを付けるがこれは他の物語系の本とはタイトルの付け方が違うと感じた。
「あの、これってどういう物語なのか分かりますか?」
「そちらは、数百年前に実際に起きた〝英魔大戦〟で活躍した者達の物語である〝英雄シリーズ〟の本となります」
英魔大戦。
それは数百年前、この大陸で人類と魔物の壮絶な戦いが行われ、その大戦の中で英雄が数多く誕生した事から〝英魔大戦〟と呼ばれている。
国の貴族の中には、その英魔大戦で英雄となった者達の子孫が多く。
その英雄たちの中でも、数多くの功績を残した英雄の一人がこの国の王女と結婚して国王になったという歴史もある。
「英魔大戦の物語の本はかなり読んでいましたが、これははじめてみます」
「俺もこれは初めて見るな、最近出たのか?」
「いえ、作成されたのは何十年も前なんですが、この方の本はそこまで人気が無く取り扱ってる所が少ないんですよ」
店員さんからそう聞いた俺は、はじめて見る本だからという理由と、タイトルに少し惹かれてこの本と他にも料理系の本を購入した。
その後、師匠と商業区を見て回ったが特に本以外に欲しい物は無く、適当に食材の買い溜めをしてから寮に戻って来た。
「さっきの本が気になるし、今日はそれを読んで過ごすか」
寮の部屋に戻ってきた俺は、椅子に座り購入した本を取り出した。
〝愚者の冒険譚〟の主人公は、デイビットという村人という書き出しから始まった。
デイビットには幼馴染が居り、その幼馴染の一人は英雄シリーズでも人気の〝光の騎士〟と呼ばれてる英雄だと書かれていた。
「へ~、光の騎士の幼馴染はこの本の主人公だったのか……」
最初の書き出しで知った事に俺は、この本を買って良かったと既に思い始めた。
光の騎士は数多くの功績を遺した英雄の一人で、数巻に渡って書かれている程の人気本だ。
そんな本の最初の方に、光の騎士には一人の幼馴染が居たと言う事が記されていた。
しかし、長年その幼馴染が誰か知る事は出来なかったが、こんな人気のない本の主人公が幼馴染だったとはな……。
「まあ、自称かも知れないけどな」
そう俺は半信半疑のまま、本を読み進めて行った。
デイビットはただの村人として生活していたが、大戦がはじまり自身も戦いに出る事になった。
剣術が少し出来る程度のデイビットは、苦戦しつつもなんとか生き残り生活をしていた。
そんなデイビットとは違い、幼馴染の光の騎士は既に頭角を現し始めていた。
デイビットは幼馴染と自分の差を感じ、焦りと嫉妬心から無謀な戦いを続けた。
「デイビットは光の騎士に負けたままが嫌だったんだな……」
デイビットの気持ちを理解しつつ、俺は物語を読み進めているとデイビットが〝愚者〟と物語に付けられた理由を知った。
デイビットは大戦に参加してから二年が経った頃、デイビットは多くの仲間を犠牲にたった一人が生き残ってしまった。
その多くの仲間の中には将来有望な者も居たらしく、当時はデイビットを非難する者達が多くいたと記されていた。
そうして多くの犠牲の元、生き残ったデイビットは周りから、自分の事しか考えてない〝愚者〟と名を付けられた。
その名に対し、デイビットは一言も反論せず、そうして本の題名に〝愚者〟と付けられたと書かれていた。
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