第147話 【目標に向かって・4】
「師匠。人に見られるのが嫌だという割には、かなり目立つ魔法を使ってますね」
「そりゃ、弟子の昇格試験だからな。俺だって、本気でやらないとアルフに失礼だろ?」
師匠はニカッと笑うと、更に魔法を俺に向けて放って来た。
流石、二つ名に〝魔術師〟と付くだけあって、師匠は魔法使いとして最高峰の実力者だ。
学園大会で魔法使いの人とも戦ったが、実力が違い過ぎる。
「ほ~、今のを躱すか……なら、もっと速くするぞ?」
「ッ!」
その直後、師匠の魔法は速度を増し、更には数も増えて俺を襲って来た。
全てを躱すのは無理だと判断した俺は、即座に魔法を展開して魔法を相殺して、師匠との距離を詰めた。
魔法使いである師匠に接近戦を持ち込むのは、戦法としては有利を取れるだろうと他の冒険者は考えるだろう。
しかし、俺との訓練の成果で師匠は剣術も出来るようになり、俺の接近に気付いた師匠は剣を取り出して俺の攻撃を受け止めた。
「師匠。偶に剣術の訓練してましたけど、かなり腕を上げましたね」
「まあな、アルフに憧れたと言うべきか、俺も剣と魔法の両方が出来た方が戦いの幅が広がると思ってな」
「魔法だけでも最高峰の実力者なのに、剣術も出来るようになったら最強じゃないですか……」
「教えたのは、アルフだぞ?」
そんな会話をしながら、俺と師匠は剣術で戦いながら時折、魔法で攻撃したりと戦闘を続けた。
魔法戦だと俺の分が悪く、近接戦闘に持ち込んだがこの作戦は成功した。
師匠はいくら剣術が上手くなったとはいえ、ずっと魔法剣士スタイルで訓練していた俺との剣術の差はあり、徐々に俺が押し始めた。
師匠はそんな俺から離れようと、魔法や剣術で押し返そうとしていたが俺はこのチャンスを逃したら駄目だと思い、必死にくらいついていった。
「ハァ、ハァ、ハァ……師匠。一つ思ったんですけど、昇格試験ってどこまで試験範囲なんですか」
「フゥ~……まあ、俺と互角にやりあってるんだから試験は合格だろうな。だが、まだ終わらせない辺りあいつらも楽しんでるんだろうよ」
そう師匠が言うと、チラッと観客達の方を見ると観戦を楽しんでるアンナさんとライザットさんが居た。
うん、完全に止める気は無いみたいだ。
「師匠。そろそろ、俺も疲れて来たので次で決めますね」
「ああ、俺もそろそろ終わらせようと思っていたところだ。全力で来いよアルフ?」
「勿論ですッ!」
師匠の言葉に俺はそう返事をして、俺は剣を強く握り師匠に向かって攻撃を仕掛けた。
剣には【風属性魔法】を付与し、肉体は【身体強化】を使って今もてる最大の攻撃を放った。
それに対して師匠は魔法を一つ作り上げ、俺に向かって放って来た。
その魔法の威力は凄まじく、剣で迎え撃った俺はその魔法の威力に耐えきれず、訓練場の壁まで吹き飛ばされた。
「ッ! 試験終了ですッ!」
俺が壁にぶつかったのを見たアンナさんは、直ぐに試験終了の合図を出すと、訓練場の端で待機していた医師と共に駆け寄って来た。
「アルフ君、大丈夫? 意識はある?」
「はい。ちょっと背中を強く打って痛いですが、意識もあります」
アンナさんの言葉にそう返事をすると、医師の人は俺の状態を確認して回復薬を飲ましてくれた。
「アルフ、良い試合だったよ」
「負けちゃいましたけどね。……最後の最後まで師匠の本気を出す事は出来なかったのは、ちょっとだけ悔しいです。試験の相手をして下さり、ありがとうございました」
そう俺は師匠にお礼を言って、実技試験は終わったので筆記試験を受けた部屋へと戻って来た。
師匠に言われた通り、既に合格点数には達していた様で俺は無事に〝銀級冒険者〟に昇格する事が出来た。
その後、部屋を出てギルドのホールに出ると、師匠が俺の事を待っていてくれた。
「その感じは、無事に銀級冒険者になれたみたいだな」
「はい。これでウィルに追いつきました。今度は、ウィルに頑張ってもらう為にも先に金級冒険者になれるように頑張ります」
「銀級冒険者になれたっていうのにもう次の事か。流石、俺の弟子だな」
師匠はそう言うと、俺の頭をガシガシと撫でた。
今日は昇格試験もあって疲れたので、依頼には行かずにそのまま師匠と一緒に師匠の家に帰宅した。
そして家に着くと、フローラさん達が俺の昇格祝いの為に準備してまっていくれた。
そうして師匠達に昇格祝いをしてもらった俺は、冒険者活動を頑張って師匠達に早く追いつこうと強く想った。
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