第146話 【目標に向かって・3】
そうして翌日、朝食を食べて依頼を受ける為に冒険者ギルドへとやって来た。
「アルフ君、おめでとう。昨日の依頼で、銀級冒険者への昇格試験を受ける権利を得れたみたいよ」
「えっ、本当ですか!? でも、まだ冒険者活動を本格的に初めて数日ですよ?」
「アルフ君の場合は依頼者からの評価も良くて、その評価分も加算されて昇格試験を受けられるようになったのよ。一つ一つの依頼に対して、真剣に向き合っていたアルフ君だからこその功績よ」
アンナさんからそう言われた俺は、これまでの仕事の頑張りを褒められて嬉しく感じた。
その後、昇格試験は筆記試験と実技試験の二つが行われるらしく、既に準備は終わってるので直ぐに受けられると言われた。
「筆記試験ってどんなのが出るんですか?」
「魔物についてだったり、簡単な常識問題ね。アルフ君なら簡単に解ける問題だと思うわ」
そう言われた俺は、それなら準備期間は要らないだろうと考え、昇格試験を受けると伝えた。
それから俺はアンナさんに別室に連れて行かれると、既に筆記試験の準備が整っていたので席に座り問題を解き始めた。
教えられていた通り、特に難しい問題は無く詰まる問題も無かった為、試験開始してから10分程で全ての問題を解き、見直しも終わった。
「アンナさん、終わりました」
「えっ、もう終わったの? まだ試験はじめて10分しか経ってないわよ?」
「はい。見直しも終わったので、多分全問正解だと思います」
そう言うと、アンナさんは俺が解いた解答用紙を回収し、その場で回答の確認を始めた。
「……全部、合っているわ。アレンさんから、アルフ君は頭脳明晰って教えて貰っていたけど、まさかこんなに頭が良いなんて思わなかったわ」
「そんなに驚く程ですか? かなり簡単だと思いますけど?」
「普通の冒険者は筆記試験は、ボロボロだったりするのよ? 筆記試験で満点な上に、こんなに早く解いたのはアルフ君がはじめてだと思うわ」
そうアンナさんは驚きつつも、筆記試験は終わったので実技試験の為に冒険者ギルドの裏にある訓練場へと向かった。
実技試験は銀級よりも上の冒険者との模擬試合を行い、良い成績を残せという試験内容だった。
「まさか、師匠が試験相手だなんて思いませんでしたよ」
「俺もこんなに早く、アルフが銀級冒険者になれるとは思わなかったよ。昨日、アルフが帰ってくる前に俺の所にライザットさんが来て驚いたんだからな?」
俺の試験相手は、何と師匠だった。
師匠は俺が銀級冒険者に昇格出来る事を昨日の時点から知っていたらしく、黙っているのが辛かったと愚痴を零した。
そして俺と師匠の模擬試合には、多くの冒険者達が観戦をする為に集まっていた。
「やけに今日は冒険者の人達がギルドに集まっているなと思ってましたけど、昇格の話は俺以外は知っていたんですか?」
「私は黙っていたわよ? この話を漏らしたのはお父さんだから、後で問い詰めていいわよ」
話が漏れでた人物をアンナさんからそう教えられた俺は、模擬試合用の剣を手に握り中央へと寄った。
「こんな大勢の前で師匠と戦うなんて、思いもしませんでしたよ」
「俺もアルフじゃなかったら、試験相手としてこの場には立つつもりは無かったよ。人に見られて戦うのは、好きじゃないからな」
「俺の為に態々出て下さり、ありがとうございます。師匠のその思いに応えるためにも、全力で挑ませて頂きますね」
そう俺が言うと、師匠は「弟子がどれ程、成長したか確認してやる」と笑みを浮かべてそう言った。
それから俺と師匠は、数m距離を離れて審判役のアンナさんから準備は出来たかの確認をされた。
「問題ありません」
「問題ない」
俺と師匠がそう言うと、アンナさんは直ぐに離れられる場所に移動して「試合開始!」と大きな声でそう叫んだ。
試合開始早々、俺は師匠に向かって複数の属性で魔法をいくつも展開して放った。
時間差で何十発も同時に放った俺の魔法は、師匠が作りだした水の壁によって全て防がれてしまった。
初っ端から全力の俺の攻撃を見た師匠は笑みを浮かべていて、今度は師匠が俺に対して魔法を沢山放って来た。
そんな俺と師匠の対決を観戦に来ていた冒険者達は、試合開始早々にド派手な戦いを見れて、かなり盛り上がっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます