第145話 【目標に向かって・2】


 それから三日間、俺は冒険者ギルドと街の外を何回も行き来して、沢山の依頼を一気に達成していった。

 その速さに周りの冒険者さんや、アンナさん達から心配されたが「全然、大丈夫です!」と言って乗り切って、依頼を受け続けた。


「……アルフ。この数日間、我ばかり移動に使われてるんだが、クロは本当に使わないのか?」


「前にも言ったけど、クロは目立つでしょ? もしかして、この数日の移動でフェルガ疲れたの?」


「何度、街と外を行き来したと思っておるんだ? いくら、フェンリルの我でも疲れはするぞ?」


 フェルガは溜息交じりにそう言ったが、俺はそんなフェルガを宥めて再び以来の場所にフェルガに乗って向かった。

 そうして今日も依頼を沢山受けて、師匠の家に戻ってきた俺はリアナさんと一緒に夕食の準備を始めた。

 初日はリアナさんに任せた俺だったが、泊めて貰ってるお礼も兼ねて夕食と朝食は俺が作ると申し出た。

 リアナさんはその申し出を断っていたが、俺が頑なに譲らなかったら諦めて一緒に準備をするという事で落ち着いた。


「最近、また料理の腕を上げたわね」


「リアナさんにそう言って貰えると、頑張った甲斐があります」


 スキルレベルは最大値に達成している俺だが、リアナさんや他の料理人と比べると圧倒的に経験が無かった。

 俺はその差を埋める為、迷宮探索の際は俺が料理を作ったり、学園には弁当を持って行ったりとして経験を積んだ。


「アルフ君の作るスープは本当に美味しいのよね」


「スープは一番の得意料理ですね。弁当には持っていけませんけど、迷宮探索の時によく作ってるので」


「そうなのね。お肉の柔らかさとか丁度良くて、本当に何杯でも食べられそうだわ」


 料理人の先輩であるリアナさんからそんな言葉を掛けられ、俺は料理に対する自信が更に上がった。

 その後、夕食の準備が終わり師匠達と一緒に夕食を食べ始めた。


「アルフ、冒険者活動の進み具合はどうだ?」


「順調ですよ。移動はフェルガに任せてるので、移動に取られていた時間が無くなり、一日の依頼を受ける回数も以前よりも格段に上がってます」


「その話、私も聞いたわ。アルフ君が物凄い速さで依頼を達成しているから、他の冒険者達も負けない為に普段は朝から酒を飲んで駄弁ってる冒険者達も仕事に向かってるらしいわ」


「アルフが良い刺激剤になったみたいだな、あいつらも偶にやる気は出すけど基本はギルドに集まって酒を飲んでるからな」


 そうして他の冒険者の話をしていると、アルフィさんから「【付与魔法】は慣れた?」と聞かれた。


「はい。大分、戦いにも応用出来てきました。ただ【付与魔法】の為に新しいスキルを習得しようと思ってるんですけど、中々いいのが思いつかないんですよね。何かいいスキルってありますか?」


「ふふっ、そんな悩みをするのはアルフ君だけね。【付与魔法】の為に新しいスキルを習得するなら、属性魔法が良い気がするわね。アレン君、何かいい属性魔法はないかな?」


「アルフはもう既に使えそうな属性魔法は殆ど覚えているからな……後は【闇属性魔法】と【空間属性魔法】、後はほぼ記録されてないが実際にあったと言われてる【時属性魔法】の3つだが、この3つの習得方法に関しては俺も未だに分からないんだよな」


 属性魔法は現在で確認されてる数は、俺の持ってる属性魔法と師匠が今言った3つの属性魔法を合わせた12の属性となっている。

 しかし、師匠が口にした〝闇、空間、時〟の3つの属性魔法に関しては習得方法はほぼ明かされていない。

 その為、9つの属性魔法を習得して以降は師匠との属性魔法の訓練は行っていない。


「その3つもいつかは覚えてみたいですけど、今は難しいですもんね」


「俺が生きてる内にアルフが習得出来たら、その時は俺が逆に教わる側になってるだろうな」


 師匠は笑いながらそう言い、新しいスキルに関しては王都に戻った際にラルフさんに相談してみようという事でこの話は終わった。

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