第139話 【加護の秘密・4】


 その後、夕食の時間となり、泊めさせてもらう代わりに夕食は俺が作りますとアルフィさんに言った。


「スキルに【調理】スキルがあったけど、アルフ君って料理も出来るんだね」


「まだ本職の人には敵いませんけど、それなりの味は保証できます」


 そう俺は言って調理場を貸してもらい、夕食の準備に取り掛かった。

 それから30分程してから夕食を作り終えた俺は、リビングに料理を運んで夕食を食べる事にした。

 今日のメニューは、ボア肉を油で揚げた料理とオーク肉と野菜のスープ。


「お~、また料理の腕を上げたな、前に食べた時よりも美味しくなってるぞ」


「ありがとうございます。そう言って貰えて、嬉しいです」


 俺の料理を食べた事のある師匠は、美味しそうな表情をしながら前回からレベルが上がったと言ってくれた。

 その言葉を聞けて俺は嬉しく思っていると、アルフィさんとフローラさんは俺の料理を食べて固まっていた。


「前から料理が得意なのは知っていたけど、これ程だとは思わなかったわ……」


「私もこんなに美味しい料理を食べたの、王都に居た頃でも早々ないわ……アルフ君、いつから料理を作ってたの?」


「えっと、商会で暮らし始めて少ししてからですね。自分で弁当を作ったりしていたので」


「それでこの料理の腕って、アルフ君の才能は凄いわね……」


 アルフィさんはそう言うと、それから無言で自分の分の料理を食べ進めていた。

 そうして夕食を食べ終えた後、順番にお風呂に入り、俺は師匠と同じ部屋で寝る事になった。


「本当に俺がベッドでいいのか? アルフが使っても良いんだぞ?」


「いえ、流石に師匠がベッドを使ってください。俺は布団で十分ですよ」


 アルフィさんの家の客室にはベッドは一つしかない為、どちらかは布団で寝るしかなかった。

 当然、俺は師匠をベッドに寝かせたが師匠は申し訳なさそうにしていて、何度も俺をベッドに寝かせようとした。

 しかし、俺が一歩も譲らない姿勢でいると師匠は諦めてくれた。

 その後、明日は早朝から迷宮に行く為、夜更かしはせずに直ぐに眠りについた。


「あ~、朝から美味しい料理が食べられるなんて幸せ……」


 翌日、いつもよりも少し早めに起きた俺は昨日の残ったスープを温め、朝食用にパンを焼き、サラダを盛り付けて料理の用意をした。

 それらを師匠達は美味しそうに食べていて、俺も自分の分を完食すると食器等を洗い、戸締りをシッカリとして家を出た。


「師匠。馬車はどうしますか? 街から迷宮まで近いなら、街に置いておいた方が安全ですよね?」


「そうだな、迷宮まで歩いて行ける距離だしそうするか」


 俺の言葉に師匠はそう言うと、乗って来た馬車をこの街のルクリア商会の支店に預けて街の外へと出た。

 その際、アルフィさんは昨日と同じように鎧を着て、片手剣と大きな盾を身につけていた。


「アルフィさんって昨日もそうでしたけど、その鎧を着て居るって事は前衛なんですか?」


「ええ、フローラちゃんみたいな激しい動きはしないけど、剣が扱えるから前衛だよ」


「アルフィはどちらかというと、壁役の役割だな。見た目じゃ想像出来ないが、アルフィはかなりの力持ちなんだぞ」


「あ、アレン君、別にそんな事をアルフ君に教えなくてもいいよ!」


 アルフィさんは恥ずかしそうな声音でそう言うと、フローラさんは「アルフィの剣術は守りの剣術ね」とそう教えてくれた。


「アルフィも元はエリスさんに剣術を習ってたから、学べるところがあるかも知れないわね」


「あの前から気になってたんですけど、エリスさんってルクリア商会の剣士全員に剣術を教えてるんですか?」


「そんな事は無いわよ。エリスさんも基本的に忙しい人だから、私達みたいに剣術を教えて貰った人は少ないわ」


「そうなんですね。という事は、俺も運が良かったという事ですね」


 それから30分程、話しながら移動をした俺と師匠達は目的の迷宮に到着した。

 迷宮の周りには暗い雰囲気が流れていて、近くには人の気配が全くない。


「ここが目的の迷宮ですか?」


「ああ、こんな雰囲気だから人も少ないから穴場なんだよ。アルフはこの雰囲気は嫌いか?」


「いえ、特に何も感じませんね。まあ、ちょっと暗い雰囲気だな~って感じはしますけど」


「それなら良かった。この雰囲気が苦手な奴も居るからな」


 そうしてこの雰囲気も大丈夫だという確認を終えた後、早速俺は師匠達と一緒に迷宮の中へと入っていった。

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