第129話 【学生大会・5】


「デイル。剣で勝負するか?」


「えっ、いいの? 正直、魔法に関して絶望的だから、そっちの方が僕としては有難いけど……」


「剣を使う機会は早々ないからね。それにフローラさんやエレナさん以外の剣士と、剣術勝負をした事がないからいい経験にもなると思ってね」


 それから司会役の人から、互いに準備が出来たか聞かれた俺達はその言葉に頷き、司会役の人は試合開始の合図を出した。


「ハァッ!」


「フンッ!」


 試合開始早々、俺とデイルは剣を抜き互いに近づき、剣術の勝負を始めた。

 これまで俺は魔法ばかり使っていて、完全に魔法使いだと思われていた為か、観客はかなり驚いた様子だった。


「アルフ、かなり驚かれてるみたいだね。完全に魔法使いと思われてたんじゃないか?」


「そうみたいだね。まあ、でも今は剣士だよ。魔法は使わないから、真剣勝負を楽しもう」


 そう俺はデイルに言い、俺はデイルとの剣術勝負を続けた。

 デイルは剣士として、剣を小さい頃から握っていた。

 スキルが無くとも技術を叩きこまれ、スキルを得てからは得た技術と経験を活かして、レオルドの従者として活動してきている。

 そんなデイルの剣術は、学生にしてはかなりの高いレベルの剣術となっていた。


「ハァ、ハァ……全く、レベル差ってのは嫌になるね。こんなに僕は疲れてるのに、アルフは一切疲れてないね」


「多少は疲れてるよ。ただ四六時中訓練してるせいか、これくらいで汗はかかなくなったんだよね」


「ハハッ、アルフは強いのに訓練を怠らないから本当に凄いよ……ふ~、僕はそろそろ限界だ。次の攻撃は、僕の全力で行くよ」


 本気の眼をしたデイルに俺は頷き、剣を構えてデイルの攻撃に備えた。

 デイルは剣を構え、深呼吸を数回して息を整えると全身に力を入れて攻撃を仕掛けて来た。

 俺はそんなデイルの全力に対し、約束通り俺も剣術の全力でぶつかった。


「……勝者、一年生アルフレッド!」


 最後まで全力で挑んだデイルは、気力も全て使い果たし目の前で地面に倒れた。

 デイルは意識を失う瞬間、物凄く爽やかな表情をしていた。

 その後、デイルは担架に乗せられて医務室へと連れて行かれ、俺は皆が待ってる待機室へと戻った。


「良い戦いだったよ。デイルもアルフが真剣に相手してくれて嬉しかっただろうね」


「約束だったからね。それに俺は剣士としては、半人前だからデイルとの戦いはいい経験になったよ」


「それを聞いたら、気力を使い果たして寝てるデイルも喜ぶよ。改めて、アルフにはお礼を言うよ。デイルと本気で戦ってくれて、ありがとう」


 レオルドはそう俺にお礼を言うと、会場の方から歓声が鳴り響いた。


「レインとリサの戦いが始まったみたいだね。アルフはどっちが勝つと思う?」


「二人共実力的には同じ位だけど……まあ、リサだろうね。レインの剣術もかなり磨きがかかって来てるけど、リサの魔法の腕の方が上。それにレインと幼馴染のリサは、レインの癖も知り尽くしてるからね」


 レオルドの質問に対し、俺はそう自分の考えを伝えた。


「リサちゃんが勝つって断言してるけど、レインが勝つ可能性は考えてないの?」


「勝つ可能性だけで言えば、レインにもそりゃあるけど……リサは師匠からも何となくだけど、魔法を学んでるからその分強さがレインよりも上なんだよね」


「そう言えば、アレンさんが偶にリサちゃんにも魔法の事をアルフに教える序に教えていたね……」


 そう俺達が話していると、試合の勝敗が決まった。

 俺の予想通りと言うと、レインに対して申し訳なくなるが勝利したのはリサだった。


「リサちゃんって普段は、そこまで魔法使いとして強さを感じないけど、さっきの試合を見た感じそこらの魔法使いよりも戦い方が上手かったね」


「さっきも言ったけど、師匠から魔法を教わったのもそうだけど、リサはフローラさんとも仲が良いから近接戦闘の対処法とか教わってんだよ。レインにもフローラさんに少し話しを聞いたらって言ったんだけど、レインはフローラさんにちょっと恐怖心があってね」


「成程、その差があったって事ね。確かにリサちゃんって最初は遠慮するけど、今じゃ僕やデイルにも気軽に話しかけてくれるから、かなり肝が据わってるよね」


「アリスに何度も仲良くなるタイミングを見計らってたくらいだから、かなり精神面では強い方だと思うよ」


 その後、試合を終えたリサ達が待機室に戻って来て、次の試合の出場者であるレオルドは「行ってくるね」と言って待機室を出て行った。

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