第130話 【学生大会・6】
レオルドの対戦相手は、三年生の男性の剣士だ。
ガタイも良く、かなり鍛えてると見て分かる。
「アルフ、レオルド王子は勝てると思う?」
「そうだね。レオルドは俺と似て、剣と魔法両方を使うから上手く自分の戦いに持って行けば勝てると思うよ」
レインの質問に対して、俺はそう伝えた。
レオルドの相手は見るからに剣士タイプの人で、今も魔法を使うレオルドから距離を取られないように頑張って接近している。
しかし、レオルドは剣術も鍛えている為、接近して来た相手に対し、剣術で対応して隙を見て魔法を放っていた。
「レオルド王子、勝ちそうだね」
レインの言葉通り、レオルドは対戦相手の三年生を押し始めていた。
それから数分後、対戦相手の魔道具の魔石が破壊され、レオルドは勝ち進む事が出来た。
「次、私だ……緊張する」
「大丈夫だよ。アリスも訓練頑張ってたし、もし負けたとしてもトップ8には入ってるから、半年前と比べたらかなりの好成績だよ」
「……それもそうだね。あの時に比べたら、自分が大会で個人戦に進んでる事自体が驚きだもん。うん、ちょっと元気が出た。行ってくるね」
アリスは元気がない様子だったが、俺のその言葉で気を持ち直して明るい表情で待合室を出て行った。
そしてアリスと入れ替わるようにして、レオルドが部屋に戻って来た。
「お疲れ様、レオルド。良い試合だったね」
「ありがとう。魔法だけじゃなくて、剣術もちゃんと訓練していて良かったよ。アルフ程では無いけど、僕も魔法剣士を目指してみようかな?」
「まあ、レオルドは幸いな事に剣術と魔法の両方のスキルを持ってるし、目指すなら俺も協力するよ」
そう俺はレオルドに言うと、会場の方にアリスと対戦相手となる生徒が出て来た。
「アリスの対戦相手の人、なんだか表情が暗いな」
「うわっ、アリスちゃんの相手あの人か……」
「レオルド、知ってる人なの?」
「知ってると言うか、まあちょっとした学園で有名な人だね」
レオルドはそう言うと、アリスの対戦相手である生徒の事を話してくれた。
学年は俺達よりも上で三年生の魔法科の生徒で、魔法使いとして実力はそこそこあるらしい。
しかし、実力がある生徒だが性格が悪く、自分よりも弱い相手には試合が終わらない程度で虐める事で有名らしい。
「最悪な奴だな……」
「それと彼もまた科目で差別する人で、商人科の事は下に見てるね」
そうレオルドが言い終わると、アリスとその性格が悪い生徒の試合が始まった。
試合開始早々、アリスの対戦相手は数十発の火の玉の魔法をアリスに向けて放った。
速度、精確性、そして威力は他の生徒のレベルから考えると、かなりレベルが高く感じた。
「あれだけの才能があるのに、性格が悪いって何があったんだ?」
「さぁ、まあでも才能と性格は別だからね」
「そりゃそうだけど……アリス、頑張れよ」
対戦相手に対して不安を感じつつ、俺は観戦を続けた。
戦いが始まって既に10分が経過した。
アリスはかなり魔力を消費しているが、対戦相手の生徒は息が少し乱れてるだけでまだ余裕そうだった。
戦いの経験もアリスよりも多いから、ペース配分をシッカリとしていたんだろうな……。
そう俺が考えていると、対戦相手の生徒は今までの魔法の威力からしたら、かなり弱い魔法を何個もアリスに放ち始めた。
「始まったみたいだ」
「ッ!」
魔力が低下気味で魔法を作るのもやっとのアリスに対し、あの対戦相手は試合を終わらせるのではなくワザと長引かせてアリスを苦しめている。
俺はその光景に苛立ちを感じつつも、これは試合だからとグッと我慢した。
アリスも何とか相手の攻撃を耐えつつ、反撃をしていたがアリスがやっと放った魔法を対戦相手は平気な顔で避け、攻撃を続けた。
そして嫌がらせ行為はそれから数分間続き、ダメージが蓄積されて魔石が壊れた所で試合終了となった。
今まで、気持ちの良い試合が続いていた分、今の試合の終わり方はかなり悪く見え、会場中から非難の声を彼は浴びた。
しかし、その当の本人は悪びれる様子も無く、逆に笑顔で会場を出て行った。
「アルフ。一応言っておくけど、待合室に来た彼を襲ったら駄目だよ?」
「分かってる。ちゃんと、落ち着いてるでしょ? 大丈夫だよ」
俺は苛立ちを感じつつも、レオルドの言葉にそう返して深呼吸をした。
それから準決勝戦の為、俺はアリスと入れ替わるようにして会場へと出て来た。
「リサ、先に謝っておくね。ごめんね」
「ちょ、ちょっとそんな先に謝罪とかされたら、怖さが増すんだけどッ!?」
試合開始直前、俺はリサに先に謝罪を入れ、リサが驚いた表情をしながらそう訴えた。
そのリサの言葉の直後、試合開始の合図が出された瞬間、俺はリサに向かって【風属性魔法】を放った。
その魔法の威力はかなりのもので、リサはギリギリ魔法に反応して防御態勢に入ったが、勢いを殺す事は出来ずにそのまま場外へと吹き飛んだ。
開始数秒で試合が終わってしまい、会場は何が起きたのか分からず一瞬にして静かになった。
その後、試合が終わった事に観客は気付くと次第に騒がしくなった。
「リサ、ごめんね。本当は試合らしい試合をしようと思ってたんだけど、さっきの事があって我慢出来なかった……」
俺は場外で倒れてるリサにそう言いながら、手を差し伸べるとリサは俺の手を掴んで起き上がった。
「大丈夫だよ。ここまで来れただけでも、私は嬉しいからね。アルフ君、決勝戦進出おめでとう」
リサは平気そうな顔をしているが、悔しさはちゃんと伝わって来た。
その後、俺達は待合室へと戻る際、会場に向かうレオルドと対戦相手となるあの男とすれ違った。
レオルドには「頑張れ」と応援を送り、俺とリサは待合室へと戻った。
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