第112話 【狂剣の教え・4】
それからも俺は剣術の訓練を頑張りつつ、偶に師匠とウィストの街へと出掛けて依頼を受ける生活を送った。
「そう言えば、フローラさんの謹慎っていつまで何ですか?」
「決まってないわ。今回はちょっと商会にも迷惑を掛けちゃったから、一月以上は謹慎だろうなって思ってるわ」
「……何したんですか?」
「そんな変な事じゃないわよ? 喧嘩した相手が他国の貴族で問題になっちゃったのよね」
平然とそう言ったフローラさんに対し、貴族相手に喧嘩って十分変な事だなと俺はそう思った。
「貴族相手に喧嘩って、何が原因だったんですか?」
「簡単に言えば、私を強引に引き抜こうとしてきたのよ。これまでも何回かあって、我慢してたんだけど。今回の相手は商会の悪口を言って来たから、ちょっとカッとなっちゃってね……」
「まあ、それは何となくわかりますよ。俺ももし目の前で商会やエルドさん達の事を悪く言われたら、普段は怒ったりしませんけど確実に怒ると思います」
俺も温厚ではあるが、商会の事を悪く言われたら怒るだろう。
それが相手が貴族だろうと、手を出すのは我慢出来ても殺気は抑えられないだろうなと話しを聞いてそう思った。
「それで前から問題行動も色々としてたから、一旦落ち着かせる為に謹慎って事になったのよね」
「そうだったんですね。フローラさんも色々とあったんですね」
そう言った後、その日も訓練を一日行い少しずつ剣術の技術を磨いていった。
「へぇ~、それじゃ最近は剣術の訓練をしていたんだね」
「うん。ウィルは最近、何してたの?」
「強いて言うなら、レオルド君と一緒に訓練してたかな? 本当はもう少し早くに王城を出る予定だったんだけど、陛下が師匠を引き留めて予定よりも大分長く王城に滞在してたんだよね」
「えっ、それじゃあ王都に帰ってからずっと王城で暮らしてたの?」
俺は驚き、ウィルにそう聞くと、ウィルは頷いて「ずっと王城に居たよ」と言った。
「てっきり、国に帰ってもう一度来たのかと思ってたけど、ずっとこの国に居たんだ……でも別にウィルだけなら、外に出て商会に来ることも出来たんじゃない?」
「何度も考えたけど、レオルド君を残して出るのはって気が引けてね。ほらっ、この季節って貴族のパーティーが沢山あるから、それにレオルド君は出る為に色々と準備してたから」
「あ~ね……まあ、そのお疲れ様」
ウィルにそう言うと、言われた当人は「本当に疲れたよ」と溜息交じりにそう言った。
「それでようやく陛下から解放されて、今日商会に来たって感じ?」
「うん。そろそろ国に帰らないと、僕も学園の準備とかもあるからね。それを理由に抜け出したんだ」
「正当な理由ではあるね。でも、そっかもう帰っちゃうのか」
「僕も本当はもう少し居たんだけどね……テストが近いから、それの準備とかもしないといけないから帰らないと。まあ、でもまた直ぐにこっちに来るとは思うよ。アルフとはまた冒険者活動を一緒にしたいからね」
笑みを浮かべてそう言ったウィルに、俺も「その時はまた色んな魔物を狩りに行こうね」と約束をした。
「まあ、でもその時までにランクが離れてなかったら良いけどね。学園が始まっても、週に数日は冒険者活動をすると思うから、次に会う時にランクに差が出来てるかもね」
「ふふっ、そうならない為にも頑張らなきゃ」
そうウィルは言うと、何か思いついたのか「アルフ。良い事思いついたよ」と言った。
「次、もしどっちかが下のランクだったら、下のランクだった方がご飯屋さんを奢るってのはどう? 多分、次に来れるとしても学園のテストとか諸々落ち着いたころだと思うから、一ヵ月は時間はあると思うんだけどどうかな?」
「……面白そうだね。その話乗ったよ。それに期間も一月って、丁度いいしね。ウィルに奢ってもらう店、見つけておかないとな」
「もう勝ったつもり? 僕も負けないよ」
俺とウィルは互いに自信があり、そう笑みを浮かべながらそう言い合った。
それからウィルはダラムスさんと共に商会を出て行き、また一月後会おうと約束をした。
その後、ウィルと別れた俺は賭け事の話を師匠にした。
「楽しそうな事を始めたんだな、勿論俺はアルフを応援するぞ」
「ありがとうございます!」
師匠は俺の事を応援すると言い、それから学園が始まった後の予定について話し合いを俺と師匠は行った。
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