第111話 【狂剣の教え・3】


 フローラさんに剣術を教えて貰うようになり、数日が経った。

 元々、似た剣術であるエリスさんの剣術を習っていた俺は、フローラさんの剣術も難なく習得出来た。

 しかし、問題はそこからで二人の剣術を学んだ俺は新たな剣術を作ろうと、二つの剣術の良い所を合わせた剣術を作ろうと頑張ったのだが。

 この数日間、全く進歩が無い。


「う~ん……守りの剣術であるエリスさんの剣術と、攻めの剣術であるフローラさんの剣術をどうやって合わせるのが良いのかな……」


 似た剣術ではあるが、戦い方が正反対の二人の剣術。

 どうやって二つの剣術を組み合わせるのが良いのか、俺は全く思い浮かばない。


「アルフでも苦戦するんだな」


「そりゃ、しますよ。俺を何だと思ってるんですか?」


「天才? そもそも二つの剣術をこんな短期間で習得してる時点で、天才ではあるけどな」


 新たな剣術に悩む俺は、久しぶりに気分転換としてウィストの街へと移動して依頼を受ける事にした。

 その道中、師匠と剣術について話していると、師匠からそう言われた。


「フローラは何て言ってるんだ?」


「師匠と同じで覚えた時点で凄いと言ってました。新しい剣術を作るのは、そんな簡単な事じゃないから焦らず自分のペースで作る事も大事と言われました」


「フローラ自身あの剣術を身につけるまで数年掛かってるから、アルフもそれくらいは掛るだろうと思ってるんだろうな。だから、アルフに焦らないようにってアドバイスしたんだと思うが……アルフは早く自分の剣術を身につけたいって感じか?」


「……そこまで焦っては無いんですけど、早めに完成したいな~とは思ってます」


 正直にそう言うと、師匠から「焦っても意味が無いから、ゆっくりでやればいいと思うぞ」と言われた。

 その後、討伐対象であるオークを見つけた俺はいつもは魔法で戦うが、今回は剣術だけで戦おうと剣を構えた。

 この構えの時点から二つの剣術には違いがあり、エリスさんは相手の動きを見て攻撃をするが、フローラさんは先に自分が動く剣術だ。

 俺は二人の剣術を比べた際、この初動に関してはエリスさんの剣術が自分に合っていた。


「ッ!」


 オークはそんな俺を見て、勢いよく突っ込んで来た。

 しかし、これまでオークとは何回も戦ったの事ある俺はオークの動きを見て、突っ込んで来たオークの片足を切り裂いた。


「グルォォォ!」


 足を切られ、叫ぶオークに俺は更にもう片方の足も攻撃を加え、オークは地面に膝をついて俺の事を血走った目で睨みつけて来た。


「すまんな、剣術の練習台になってもらった」


 戦いではなく練習台にしてしまった俺は、少しだけ謝罪の気持ちを感じつつオークにそう告げ、オークの首を切り落とした。


「今の時点でも二つの剣術が合わさってるように見えるが、アルフはまだ満足していないのか?」


「今の俺は、二つの剣術の技を一つ一つ繰り出してるだけに過ぎないので新たな剣術とは言えません」


「そうなのか? 剣術に関しては俺もそこまで詳しくないから、アルフがそう思うならそうなんだろうな。それでどうする? 依頼の討伐対象のオークは狩ったが、魔物狩りでもしていくか?」


「はい。まだ時間はありますから、もう少し剣術の訓練をしたいです」


 その後、俺の頼みを師匠は聞いてくれて陽が沈むまで魔物狩りをしつつ、剣術の訓練を続けた。

 そしてその日は、師匠の家で一泊して次の日の朝に王都へと戻り、昼頃に王都に到着した。


「それで昨日は一日、魔物を狩りつつ剣術の訓練をしてきたのね。それで何か成果はあった?」


「多少、動きがスムーズにはなりましたが、決定的な自分の剣術のイメージは未だに湧かないです……」


「まあ、後は時間を掛ければ自分の剣術が出来ると思うわよ。私も最初は自分に合う剣の使い方を探すのに苦労したけど、今はこうして自分の剣術として扱えるようになってるわ。アルフ君も焦らず、自分の剣の使い方を模索するのが良いわよ」


 フローラさんからそう言われた俺は、「はい」と返事をしてその日も一日剣術の訓練を行った。

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