第113話 【新学期に向けて・1】


 フローラさんから剣術を教わり始めてから二週間程が経ち、学園の長期休暇も終わりが近づいてきていた。


「一ヵ月振り位だけど、なんだか随分と会ってなかったみたいな気持ちだよ」


「私も、レインとは家も近いからよく会ってたけど、アルフ君達とは全く会ってなかったもんね」


 学園が始まると直ぐにテストが行われる。

 本当はアリスと二人でテスト勉強をしようかなと思っていたのだが、レイン達も誘った方が良いなと思い一月振りにレイン達を誘った。


「商会に遊びに来ても良かったのにと言いたいけど、自分達から来るのはやっぱりまだ緊張する感じ?」


「それもあるけど、アルフ君が訓練に集中してるだろうから時間を邪魔したらいけないなって思って、来るのを躊躇ってたんだよね」


「別にレイン達が来てくれる事に対して、邪魔だなんて思わないよ? それに、四六時中訓練をしていた訳でも無いからね。前半は確かに冒険者活動をする為にウィストの街に行ってたから無理だったと思うけど、後半は王都に戻って来て剣の訓練をしつつ、アリス達とも訓練をしていたからね」


「剣の訓練って、アルフ君本格的に剣士にでもなるの?」


 俺が剣の訓練をしていると言うと、レインは不思議そうな顔をしながらそう言った。


「いや、実は剣術の師匠が新しく出来てね。それで真剣に今は剣に向き合ってる所なんだ。別に魔法を捨てたわけでもないよ」


「剣術の師匠ってエリスさんじゃなかったの?」


「今は狂剣のフローラが俺の剣の師匠だよ」


 レインとリサに俺の剣の師匠がフローラさんだと教えると、二人は驚いた顔をして「ええ!?」と大きな声を出した。


「狂剣ってあの?」


「白金級冒険者のフローラで間違いないよ。今は謹慎中で商会に戻って来てて、それで俺の師匠になったんだ」


「魔法はアレンさんから、剣はフローラさんからってアルフ君って本当に凄いね……」


「この場合、凄しのはルクリア商会の気もするけど、でもやっぱりその二人が弟子にしようと考えたアルフ君は凄いよね」


 それから近況報告を終えた後、早速テストに向けて勉強を始めた。

 久しぶりに皆と会えて、勉強が本来の目的ではあったが、勉強しつつ話したりして、その日は勉強に集中はあまり出来なかった。


「久しぶりに会えて楽しかったけど、勉強はあまり進まなかったね」


「まあ、休みの間も宿題は無いけどちゃんと予習とかはしてたみたいだから、そう酷い点数は取らないとは思うけど、明日の勉強会はもう少し集中してやろうか」


 そう俺達は、反省会を最後にしてその日は皆と解散した。

 そして翌日、昨日の反省も踏まえて皆と集まった後、俺達は真面目に勉強会を行った。

 昨日とは違い、レイン達も物凄く集中して勉強をしていて、かなりテスト勉強は進んだ。


「久しぶりにこんな真面目に勉強して、疲れちゃった……」


「私も~……アルフ君達は全く疲れてないけど、休みの間も勉強してたの?」


 勉強会二日目、昼休憩に入るとレインとリサは疲れた表情をしていたが。

 俺、アリス、クラリスは特に疲れた表情はしていなかった。


「まあ、普通に夜にクラリスの受付業務の勉強に付き合いつつ、自分の勉強もしてたからね」


「私もアルフ君が隣街に冒険者活動をしてる間は勉強はあまりしてなかったけど、こっちに戻って来てからは訓練の合間とかに時間を作ってもらって訓練したり、勉強もしてたから苦しくはないかな?」


「兄さんが言いましたけど、私は受付の勉強をしてたのでそこまで疲れてはないですね。リサちゃん達は、お家で勉強はしてなかったかですか?」


「少しはしてたけど、ここまでガッツリとはしてなかったかな……」


 長期休暇で、宿題に関しては前半で全て終わらせていた。

 そうなると、自主的に勉強をしない限りは勉強する機会もないし、レインとリサはそれぞれ自分の目標に向かって時間を使っていたんだろう。


「まだ学園が始まるまで数日あるから、それまでに勉強の感覚を取り戻せばいいよ」


 そう俺は言って、あまり疲れてるなら午後は少し体を動かそうと言って、午後は訓練場へと行き運動をする事にした。


「あら、アルフ君達じゃない? 今日は勉強会じゃなかったの?」


「はい。そうですけど、ちょっと体を動かそうかなと思って訓練場に来たんです。訓練をしてたんですか?」


「ええ、私のやる事はこれくらいしか無いもの。それより、折角来たんなら私の相手になってくれないかしら? アルフ君の学友の子達もアルフ君の剣術がどれだけ成長したか、見たいんじゃない?」


 フローラさんがそう言うと、アリス達は俺の剣術がどれだけ成長しているのか気になっていたみたいで、その言葉に頷いた。

 この流れで断るのも、と思った俺は「わかりました。それじゃ、ちょっと準備しますね」と言って俺は準備運動を始めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る