第91話 【長期休みの始まり・3】


 話し合いはアリスが来るまでに終えなけばいけない為、手短に作戦を話し合わなければいけない。


「エリスさん、大前提の話なんですけど。エルドさんはアリスに謝罪はしたんですか?」


「ええ、それはもう何度も頭を下げたとエルド様からもお聞きしたわ。念の為、シエナ様にお聞きしたけど、初めて見る姿と驚いたと仰っていたわ」


「ふ~む、謝罪していてもだめですか……」


 あのアリスがそこまで怒るという事は、昨日のあの発言は相当アリスの中で怒るポイントだったのだろう。

 俺に好意を抱いてる抱いてないの前に、友達を馬鹿にされた事に対して怒ってる印象だったけど、多分そっちの方が大きいと俺は思ってる。

 それから各自、どうすれば仲を取り戻せるかアイディアを出し合うが、既にエルドさんが試している事ばかりだった。


「逆にここまでしても尚、嫌われてるって事は心の底から嫌ってるんじゃないんですか?」


「……そうなった場合、エルド様はちょっとした悪戯心で発した言葉で、アリスちゃんとの仲を壊した自分を一生恨むでしょうね」


「そうなると、商会もやばいですよね……どうすれば、仲直り出来るのかな……」


 そう俺は言うが、特に良い案は思い浮かばず訓練の為にアリスが来た為、俺は話し合いから離脱して訓練場へと向かった。


「今、そんな事になってるんだ。確かに商会に来た時、ちょっとビリついてたもんね」


 休み期間に入ったが、レオルドは変わらず訓練に参加するみたいで少し遅れて訓練場にやって来た。

 そして商会の様子が変だと気づいたレオルドは、俺に何があったのか聞いて来たので俺はアリスとエルドさんの事件について伝えた。


「本当は合宿の件、エルドさんに伝えてレオルドも誘いたかったんだけど、あの感じだとレオルドを誘うのは難しそうなんだよね……」


「ちょっと待って、合宿って何?」


「休みの宿題を大量に貰ったでしょ? あれをクラスメートの人達と一緒に解く為、合宿しようっていう話になってるんだよ。それでクラスメート達はエリスさんに許可貰えたんだけど、王子のレオルドは流石に副会長のエリスさんでも独断では決められないから、レオルドを誘いたいけど難しいんだよね……」


「いや、僕もその合宿に参加したいんだけど? 僕だけ仲間外れは嫌だよ?」


 レオルドは焦った様子でそう言い、エルドさんとアリスの仲を取り戻すと、ルクリア商会の人達並みにやる気に満ちた目をしている。

 しかし、やる気に見ちたレオルドだが、未だにアリスとの仲はそこまで進展もしてない為、話しかけようにも避けられてしまう。


「僕の考えだけどさ、アルフがアリスさんにエルドさんの事を許してあげて欲しい的な事を伝えたらいいと僕は思うよ」


「そんな事で仲直り本当にする?」


「この数ヵ月、近くで二人の事を見てアリスさんはアルフの事をかなり信頼してると思うんだ。それに言われたのは、アリスさんだけどアルフも一緒に言われた感じだから、アルフがエルドさんの言葉を特にしてないならアリスさんも許す流れになると思うよ」


 レオルドはそう言うと、アリスと一緒に訓練をしてるクラリスを呼び、俺はクラリスと交代でアリスの方へと向かった。


「アリス。ちょっと良いか?」


「んっ、どうしたの?」


 訓練に集中していたアリスは、俺から話しかけられると顔をこちらに向けて来た。


「昨日の件でエルドさんの事、許してあげてないんでしょ?」


「誰かに聞いたの?」


「今日、エルドさんに用があって行ったら、かなり落ち込んでいたから聞くまでも無く分かったよ」


「……お爺ちゃんが偉いのは知ってるよ。でも、言って良い事と悪い事は家族でもあるのはアルフ君も分かるよね」


 アリスは、顔をムスッとした表情でそう言った。


「うん。それは分かるよ。でも、昨日のあれはエルドさんも嬉しくなってつい言葉に出ただけだと思うよ」


「ついでも、私の折角の友達のアルフ君に対して失礼な事を言ったのは事実だよ。なのにお爺ちゃんは、私が起こってるから私にだけ謝って、アルフ君には謝ってないでしょ? そこがまだ怒ってる理由だよ」


 ふむ、成程……アリスがまだ怒ってる理由は、エルドさんが自分には謝ってるけど、俺に対しては謝ってないから許してないと言う事か。

 ……俺のせいだったか~、いや気にしてなかったから俺が理由とか全く分からなかった。


「……き、今朝会った時に俺にも謝罪してくれたよ。だから、ずっと仲悪いまんまだとアリスも辛いだろ? エルドさんと仲直りしてくれないか?」


 俺は咄嗟にそこで、エルドさんから謝罪をされたとアリスに言った。

 アリスは俺の言葉に、キョトンとした顔で見つめて来た。


「……本当にお爺ちゃんはアルフ君に謝罪したの?」


「したよ。俺が嘘をつくと思う?」


「言わない。うん、わかった。じゃあ、後でお爺ちゃんと仲直りしに行ってくるね」


 アリスは俺の言葉を一瞬だけ疑ったが、直ぐに信じてくれてそう笑顔で言ってくれた。

 それから俺はトイレだと言って訓練場を出て、急いでエルドさんの部屋に向かった。

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