第87話 【規格外の兄妹・3】


 王都に帰還後、商会に戻ってきた俺と師匠はそのままエルドさんの所へと報告に向かった。


「ふむ、今回は前回よりも目標を下げた様だな」


「はい。あまり高い数値を言うと、アルフはそれに答えようと頑張るのであえて下げる事にしました」


「前回の探索でそれが分かっているからな、まあこのまま週末はレベル上げをしていけば、アレンのレベルにも追いつきそうな勢いだな……」


 前に師匠にレベルはどのくらいあるんですか? と聞いた所、師匠の現在のレベルは300を超えている。

 師匠の歳でとか言う以前に、レベル300なんて高いレベルは早々居ないと習った。

 冒険者の中堅クラスでも60後半、100未満というのが常識の中で白金級とは言え300とは師匠は化け物だ。


「流石に師匠に追いつくにはまだまだ時間が掛かりそうですけど、これからも頑張ってレベルを上げて商会の役に立てるように頑張ります」


 そうエルドさんに言った後、俺と師匠は寮の方へと行き一緒に風呂に入った。

 入浴後、食堂へ夕食を食べに移動した。


「そう言えば、師匠。クラリスの調子はどうですか?」


「そうだな……相当、魔法の素質があると理解していたが、俺の想像を超える程の逸材だな」


「師匠でもそう思う程ですか?」


「ああ、彼女の才能は国が欲しがるレベルだな……多分、エルドさんには王から何かしら言われてたと思うが、それでも商会が引き取る事になったのはアルフの存在が大きいんだろうな」


 師匠や国が欲しがるレベルか……確かに、クラリスの魔法の腕は高い事は知っていたが、既にそのレベルとは自慢の妹だ。


「まあ、そんな彼女よりもアルフの方が凄いけどな。あまり比較とかするつもりは無いが、固定で経験値が入ってレベルが上がる速度が全く変わらないのは誰もが羨ましがるレベルだ。さっき、エルドさんが俺のレベルを直ぐに超えるだろうと言ってたけど、一年間今と同じ生活をしていたら直ぐに抜けると思うぞ」


「まあ、レベルだけ抜いたとしても師匠の様な技術は全く身についてないので、そっちの方も頑張らないといけませんね」


「そこに関してはこれからみっちり教えるつもりだ」


 そう師匠は言うと、今後の俺の育て方について少しだけ教えてくれた。

 その後、夕食を食べ終えた俺は部屋に戻り、少し休んでいるとクラリスが部屋に来た。


「兄さん、帰ってたんだね。勉強してて、迎えに行けなくてごめんなさい」


「大丈夫だよ。クラリスが勉強を頑張ってるのは知ってるからね。それで、どんな感じ?」


「今日から受付に入って仕事をしてみたんだけど、ちょっとだけ失敗しちゃった」


「クラリスでも失敗するんだね。昔から、何でも出来たのに珍しいね」


 クラリスの言葉から〝失敗した〟と聞いた俺は、少し驚きながらそう言った。


「初めての〝労働〟で、自分で思ってた以上に緊張してたみたい。でも先輩の受付係の人が助けてくれて、なんとか一日無事に仕事出来たよ。先輩からも筋が良いって褒められて、明日も仕事に入る予定なんだ~」


「楽しそうみたいで良かったよ。ルクリア商会の人達はいい人達ばかりだけど、何か困ったらいつでも俺を頼っていいからな?」


「うん。兄さんも何か困ったら、私に言ってね」


 そうお互いに言った後、少し迷宮の話をしてから明日も朝が早いのでクラリスを部屋の外に見送り、俺はベッドに横になって眠りについた。

 翌日、学園に登校して教室でアリス達と話をしていると、なんだか廊下の方が騒がしくなり、気になった俺は廊下を見に行った。


「やあ、アルフ。話し合いぶりだね」


「レオルド!? な、何でここに居るの?」


「ちょっと、アルフと話をしたいと思ってね。今日のお昼休憩、もし時間があるなら少し話せないかな?」


 レオルドにそう言われた俺は、俺の後ろにピッタリと付いてきていたアリスに「お昼一人になるけど良いかな?」と聞くと。

 アリスは小さな声で「私は大丈夫だから、王子様を優先して……」と言ってくれた。


「うん。大丈夫みたい。学園の食堂に行けばいいかな?」


「いや、それよりもいい場所があるから、昼休憩になったら迎えに来るよ」


 レオルドはそう言うと、去って行きその場には王子と話していた俺に注目してる生徒が残った。

 俺はそんな生徒達の視線から逃げるようにして教師に戻ると、レイン達から「さっきのあれなんだったの?」と聞かれた。


「俺にもよく分からん。事前に何か連絡があったわけでもないからな……多分、レオルドの独断だとは思うけど時の場所を選んで欲しかったな……」


「アルフ君と王子様がお友達って事は前に聞いて知ってたけど、あんなに仲良く喋るのを見ると改めて驚いちゃったよ」


「私も王子様がここに来た事よりも、アルフ君とあんなに楽しそうに喋ってる王子様の顔に驚いちゃった」


 レインとリサがそう言うと、俺の隣ではアリスも何度も頷いていた。

 その後、暫く廊下から視線を感じていたが、俺はただジッと先生が来るのを待ち続けた。

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