第86話 【規格外の兄妹・2】


 それから数日間、昼間は学園で学生生活を楽しみ、帰宅後はアリスとクラリスと一緒に訓練をするという生活を送った。

 そして週末を迎えた今日、師匠と共に迷宮へと来ていた。


「試験や家の問題等があったので、迷宮に来るのも久しぶりですね」


「そうだな、本当だったらもっと来る予定だったんだけど、色々と起こって無理だったからな」


「はい。ちなみに今回の迷宮探索ですが、なにか目標とかあるんですか?」


 前回は、レベルを30に上げる目標で迷宮で狩りをしていた。

 たがら今回も何かしらの目標があると思い、そう師匠に尋ねた。


「前回、目標を達成出来たとはいえかなりギリギリだった。だから今回の目標は、レベル40を目指そうと思う」


 レベル40という事は、1000体魔物を倒せばいいので前回よりも格段に目標は低い。

 だけど、前回俺が無理をしたのは事実だし、師匠が心配しない為にもこの目標設定は妥当だ。


「後はこれは目標では無いが、スキルのレベルも上げられたらいいな」


「分かりました。でしたら、既にスキルレベルが上限レベルになってるのは使用はあまりせず、まだ成長途中のスキルで戦いますね」


「まあ、そこら辺はあまり気にしなくても良いぞ。戦っていて、上がったらいいな程度だからな、あくまでも今回の目標もレベル上げだからな。命大事にだぞ」


 師匠の言葉に俺は「はい!」と返事をして、それから少しして狩りを始めた。

 正直、迷宮に入るまでは迷宮に魔物がいるか心配だった。

 前回、あれだけ倒しまくってしまったからな……と、心配していた俺だったがその心配は杞憂だった。


「予想外に前回来た時から時間が経ったおかげで、魔物の数がそこまで少ないって感じませんね」


「そうだな、出て来る量的には減ってはいるがそこまで劇的に減った訳では無いな」


 少し減ってたな……と感じる程度で、俺としては経験値が少しでも多くもらえる為、嬉しく感じながら魔物を狩り続けた。

 それから数時間後、初日は3レベル上げて安全地帯で休む事にした。


「アルフ。もう少しペースを落としても大丈夫だぞ? 目標は10レベルだけど、アルフの体調を崩さないのが大事だからな?」


「大丈夫ですよ。前回は確かに少し無茶をしましたが、今日は師匠から事前に言われていたので無茶は全くしてません」


「初日で既に300体以上倒してたぞ? 前回よりもかなりハイペースだと思うが?」


「それはレベルが上がってるおかげですよ。前回も最後の方は、レベルのおかげで能力値が上がって魔法の威力が上がってたじゃないですか」


 前回の失敗がある為か、師匠は念入りに俺の体調確認を行った。

 その後、夕食を作る為に準備を始めた。


「そう言えば、リアナさんがもう直ぐ職場に復帰するみたいな噂を商会で聞きましたけど、あれって本当ですか?」


「ああ、本当だ。もう暫く、ゆっくり休んでろって言ったんだが、ずっと動けてないから早く働きたいらしいんだよ。子供は商会に預り所があるから、その人達に見てもらえるから良いが……」


「師匠は、まだ休んでいて欲しいんですね」


「まあな~、リアナの働きたいって気持ちも分かるから強く言えなくてな……」


 師匠は溜息交じりにそう言うと、ぼ~と空間を見つめながら「どうしたらいいもんか……」と呟いた。

 聞いた話でしかないが、師匠のお嫁さんであるリアナさんは元々働く事が好きな人で妊娠期間、働けない事に若干不満を感じていたみたいだ。

 だから出産を終え、体調も戻って来たこのタイミングで働くと言い出したのだろう。


「そう言えば、リアナさんって料理人という事は聞いてましたけど、どこで働いてるんですか?」


「あれ、言って無かったか? リアナはウィストの街にあるルクリア商会の食堂で料理長を務めてるんだよ」


「料理長ですか? 凄いですね……」


 思っていた以上に凄い肩書の人だなと思い、俺はそう口にした。

 その後、特に俺は良い案も浮かばず、悩んでる師匠に励ましの言葉を掛ける事しか俺は出来なかった。

 その翌日、特に急いでは無かったが狩りに集中していた俺は、いつの間にか1000体の魔物を倒して目標を達成していた。


「もうそんなに倒したのか、見ていた感じ確かに無茶はしてないみたいだったがアルフはどう感じてる?」


「全く無茶はしてませんね。というか、まだまだ全然戦えるって感じがします」


「見てたから分かるが、その言葉は嘘じゃないみたいだな……まあ、だが今回はここらで終わろうか。少し早いが、迷宮を出て王都に帰るか」


「はい。分かりました」


 師匠の言葉に俺はそう返事をして、俺達は迷宮の入口に向かって移動を始めた。

 そして迷宮の外に出るとまだ外は明るく、今から馬車で王都に向かえば丁度陽が落ち始め頃に帰れそうな雰囲気だ。


「こんな時間に帰れるって、前回とは大違いですね」


「前回は本当にギリギリだったからな、今日は逆に余裕がありすぎるから逆にエルドさんから何か言われそうではあるな」


 師匠は笑いながらそう言うと、俺に「着くまでは休んでいていいぞ」と言ってくれたが、正直そこまで疲れては無い。

 なので、俺は師匠に許可を取り荷台で魔法の訓練をする事にした。

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