第85話 【規格外の兄妹・1】
クラリスが商会で暮らす様になった翌日、俺は学園へと行き一日学生生活を送って、アリスと共に商会へと戻って来た。
「そう言えば、アリスは妹ともう会ったっけ?」
「アルフ君の妹さんって確か、お爺ちゃんが商会に誘ったんだよね? まだ私は会った事が無いけど、会うの少しだけ楽しみにしてたんだ」
ワクワクと楽しそうな表情をしてるアリスに、俺は珍しいという風な感情でアリスを見た。
「あれ、アリスの人見知りはもう治ったの?」
「ううん。まだ治ってないけど、ほら前からアルフ君やお爺ちゃん達から偶に妹さんの話を聞いてて、どんな人なんだろうってずっと気になってたんだ。聞いた感じだと、大人しい子みたいだし、それにアルフ君の妹ならアルフ君みたいになんか仲良くなれそうな気もするんだ」
「クラリスもどちらかと言うと、友達は多い方じゃないし、アリスと友達になってれくたら俺としても嬉しいかな。まあ、もし無理そうでもゆっくりと仲良くなればいいと思うから、無理はしないで大丈夫だよ」
それから商会へと帰宅した俺は、クラリスの部屋に呼びに行った。
「初めまして、兄さんの妹のクラリスです」
「は、はじめましてアリスです……その、よろしくね」
初めて会ったクラリスに対し、アリスは不安そうな顔はしているがちゃんと挨拶を交わす事が出来た。
「アリスさん、あまり無理しなくても大丈夫ですよ? エルドさんから、アリスさんの人見知りについては聞いているので」
「いや、クラリス。今のアリスはそこまで無理はしてないと思うぞ、普通であれば挨拶を交わす事も出来ないからな。だからほら、アリスもさっきまでは不安そうだったけど、今は少し笑顔になってるだろ?」
「あ、アルフ君。私の表情の解説はしないで……」
アリスは自分の気持ちを解説されて恥ずかしかったのか、顔を隠しながらそう言った。
しかし、俺に続いてクラリスもアリスとは初対面から話せる関係とは、本当に凄い偶然だな。
「……もしかしてだけどさ、俺もクラリスも元々友達が少なくてアリスにとって同類だからこう話せるのかな?」
俺はある仮説を思いつきそう言うと、クラリスは「確かに、私達って友達というより知り合いも少ないですからね……」と悲し気に言った。
俺もクラリスも家の教育上、人と関わる機会が本当に少なかった。
「でも、アルフ君は凄く友達を作るのが早いよ?」
「俺の場合、家の事情で今までは友達とか作る機会が少なかったからね。それが無い学園は、特に障害は無いからな……」
アリスの言葉にそう返した後、時間もそこまで無いので訓練を始める事にした。
「兄さんって、こんなに人に教えるのが上手かったんだね。家で雇われていた教師よりも断然、兄さんの教え方のが上手だよ」
「俺の場合、師匠から教わったやり方とか簡易的にした方法とか、そもそも師匠から教わった内容をそのまま伝えたりしてるから、俺が凄いんじゃなくて師匠が凄いんだよ」
教え方を褒められた俺は、参考にしている相手が師匠だから上手く見えるとそう二人に伝えた。
「そうだとしても、兄さんの教え方が上手なのには変わりないと思うけど……まあ、兄さんって自分が納得してない事はとことん否定するタイプだから、言っても意味が無いと思うけど」
「流石、クラリスちゃんだね。長年一緒に暮らしてるから、アルフ君の癖とか性格も完璧に把握してるんだね」
「ここ一年強は兄さんと離れ離れでしたけど、それまでは基本一緒に居たから大体の事は分かりますよ。今も自分を見透かされて、ちょっと困惑してるのを分かります」
いや、それは仕方ないだろ……まさか、クラリスにそこまで見破られてるとは思ってもいなかった。
という事は、今までもクラリスは俺の考えを読んでいた事もあるのか?
「心配してると思うけど、私のは単に予測なだけで見通すわけではないよ? 兄さんが今、どんな事を考えているのかな~って考えは出来るけど、その考えを完璧に言い当てるってのは流石の私でも無理だよ」
「まあ、そこまで凄い力だったらスキルにそれ系統の力を持ってる筈だけど、そういうのは持ってないからな」
その後、話は終わりにして訓練に集中するように二人に言って、夕食までの時間たっぷりといつも通りの訓練を行った。
そうして夕食の時間となり、俺達は一緒に食堂で夕食を食べる事にした。
「それじゃ、アルフ君達また明日! おやすみ~」
夕食後、アリスはそう言ってエリックさんと馬車に乗って、商会から去って行った。
その光景を見ていたのか、アリスが帰って直ぐにエルドさんから部屋に来るようにと指示が届いた。
「アルフ。単刀直入に聞くが、アリスとクラリスの関係はどうだ?」
「凄く良いと思いますよ。俺の時と同じで、クラリスには直ぐに心を開いた感じがします」
「そうか、ここからアリスが帰っていくのを見ていたが、親し気にクラリスと話していたからもしやと思って確認をしたが……どうしてそうなったのか、アルフは何か心当たりはあるか?」
「そうですね。俺の仮説ですけど、もしかしたらアリスは自分に似た人に対しては人見知りのレベルが下がるのではないでしょうか」
俺は今日のクラリスとアリスが直ぐに仲良くなったのを見て、もしやと思っていた仮説をエルドさんに伝えた。
「自分と似た人とは? アルフとアリスはどこかにているか?」
「その、俺もクラリスも家の事情とはいえ友人が少ないです。それで人との関わりが少ない俺達と、人見知りで他人と会話を真面に出来ないアリスは似た所があって、それで人見知りのレベルが下がり会話が出来るようになったのではないかと、今日のクラリスとアリスの会話を見ていてそう感じました」
「ふ~む、しかしアリスはどうやってそういうのを見分けているのだ? アルフとアリスは、初対面の状態から直ぐに仲良くなれと聞くが、アリスに自分は友達が少ないとその時に話したわけでは無いだろう?」
「それは俺も分かりませんね。匂いなのか、その人から漂うオーラで判別してるのか、アリス自身にしか分からない事だと思います」
疑問に考えいたエルドさん俺はそう言うと、エルドさんは今日は遅いから話はこの辺で終わろうと言って俺は風呂に入れに向かった。
入浴後、部屋に戻ってきて少しすると、部屋の扉をノックする事が聞こえて出ると、外にはクラリスが居た。
「クラリス。どうしたんだ?」
「兄さんが良ければで良いんだけど、ちょっと受付の練習に付き合って欲しいの……」
「こんな時間まで勉強してたのか? あまり無理はしちゃ駄目だぞ? エルドさんも、無理はしなくていいって言ってたんだからな」
「少しでも早く役に立ちたいって気持ちが強くて、兄さんも私と同じ立場なら早く役に立てるように頑張るでしょ?」
クラリスの言葉に「確かに、俺だったらそうするな」と言って納得した俺は、クラリスの勉強に少しだけ付き合う事にした。
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