第69話 【動き出す者達・1】


 迷宮探索から二日が経ち、俺は病院へと来ている。


「リアナさん、ご出産おめでとうございます」


「態々、来てくれたのね。アルフ君、ありがとう」


 病院に来た理由、それは出産を終えたリアナさんへお祝いの言葉を言いに来た。

 師匠にはいつもお世話になっている。

 そんな師匠の子供が生まれたのに、お祝いの言葉も掛けないなんて弟子失格だと思い、アリスとの訓練はお休みにして師匠と一緒に病院に来た。


「男の子ですか?」


「ええ、可愛い顔してるけど男の子よ。名前はルディスよ」


「ルディス君ですか、良い名前ですね」


 そう俺は言いながら、赤ん坊の前で手を振り、手の動きを見たルディス君は笑ってくれた。


「ルディスはリアナに似てくれてよかったよ。俺見たいに目つきが鋭かったら、人生苦労するからな」


「確かに師匠は目つきが鋭いですが、カッコよさを感じますよ?」


「あら、アルフ君も分かっているわね。私もアレン君の目は私も好きなのよ」


 俺とリアナさんはそう言って師匠の目を褒めると、師匠は顔を赤くして照れた。


「師匠もそんな顔出来るんですね~」


「う、煩いな……弟子が師匠を揶揄うんじゃない」


「ごめんなさ~い」


 師匠から怒られた俺は笑いながら謝罪をして、リアナさんも楽しそうに笑った。

 それから俺と師匠は、病院を出て行き商会へと戻って来た。


「そうだ。アルフ、これからの事についてエルドさんと話していたんだが、もしかしたら一度アルフを王城に連れて行く事になるかもしれないみたいだ」


「えっ、王城にですか?」


「なんかエルドさんの所に王城の方から手紙が来たらしくてな、ずっと断っているみたいだけど、そろそろエルドさんが負けそうだ」


「そうなんですね。まあ、でも王族には知り合いもいますし、変な事はされないとは思いますけど……一応、警戒はしておいた方が良いって事ですかね?」


 そう聞くと、師匠は頷き俺も覚悟を決めておいた方が良いなと考えた。

 それから数日後、学園から帰宅後にエルドさんから「明日、王城に行く事になった」と伝えられた。


「断り切れなかったんですね」


「あまりにも煩いからな……一度会わせて、さっさと帰る予定だ」


「王族に対してその対応で大丈夫なんですか?」


「今の王とは王子の頃からの仲だからな、多少の不敬は許される。それにあやつも儂の性格を知っているからな」


 それからエルドさんから俺は、明日学園が休みだから午前中に王城に行くと伝えられた。


「あの、師匠。予定は大丈夫なんですか?」


「まあ、今週も迷宮に行こうと思っていたくらいだから別に大丈夫だ。それに王家との話し合いの方が大事だからな、多分色々と聞かれると思うから今のうちに覚悟しておいた方が良いぞ」


「えっ、色々ってどうしてですか?」


 師匠の言葉に首を傾げた俺に、師匠は外の情報を教えてくれた。


「前にアルフが狙われているって話はしただろ? それとは別で王族は、アルフの元家であるノルゼニア家を調べ始めたんだ。これまでもノルゼニア家には不信感を抱いていたらしく、アルフの謹慎生活や家からの追放を見て、重い腰を上げて探り始めたみたいだ」


「儂もノルゼニア家の事を調べるから協力をして欲しいと言われて、流石にそれを言われて断るのはアルフにとっても悪いと思ってな、話だけでもしに行こうと決めたんだ」


「……王族がノルゼニア家の事を調べ始めたって、俺の家って何か悪い事していたんですかね?」


 貴族の子が家から追い出されると言う話は、何も俺だけでは無い。

 確かに普通は追い出したりはしないが、不出来な子を捨てる貴族はこれまでも居た。


「アルフは知らないとは思うが、ノルゼニア家は色々とやらかしているんだ。詳しい話は明日、王族との話し合いの場でするつもりだから、今日は早めに休むんだぞ」


「分かりました」


 エルドさんからそう言われた俺は、今ここで詳しい話は聞けないと察してそう返事をした。

 それから俺は言われた通り、夕食と風呂を済ませて今日は早めに寝る事にした。

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