第68話 【迷宮探索・4】
入浴後、俺とウィルの後に師匠が入り、ダラムスさんも汗を流したいという事で結局全員風呂に入った。
「師匠。安全地帯って見張りとかはしなくても大丈夫なんですか?」
「同じ冒険者が襲ってくる可能性は無くは無いが、それ以外は基本的に安全な場所だ。今回の場合、この迷宮はほぼ人が来ないから危険察知の魔道具を置いて寝るつもりだ」
師匠はそう言いながら、魔道具を取り出しその魔道具に俺、ウィル、ダラムス、そして師匠の魔力を登録して設置した。
この魔道具は、登録してない魔力の持ち主が近くに来た際に作動する魔道具だと教えられた。
「まあ、ただの警報装置だが無いよりかマシだからな。それより、明日も早いんだからもうアルフは寝ていいぞ」
「はい。分かりました。ウィル、ダラムスさんおやすみ」
別のテントで寝るウィル達にそう言って、テントの中に入って眠りについた。
翌日、早めに起床した俺は朝食の準備をしていると、隣のテントからウィルが起きて来た。
「おはよう。ウィル」
「おはよう。今日もアルフがご飯作ってるの?」
「うん。俺の担当だからね」
俺がそう言うと、ウィルは俺が作ってる料理を見て「今日のも美味しそうだね」と言った。
「料理とかも商会で暮らし始めてからやり始めたって言ってたけど、その割には手際が良くない?」
「慣れだよ。これでも学園に通ってて、その時は弁当を作ってるからね」
「弁当も作ってるの? 昔から頑張り屋なのは知ってたけど、訓練もしながら毎日弁当作りって体壊さないの?」
「今の所、全く問題は無いかな? まあ、謹慎生活の時の方が色々と辛かったから、その時に耐性が出来たんだと思う」
ウィルの質問に対して、俺がそう答えるとウィルは「あっ、ごめん」と謝って来た。
「別に謝る事じゃないよ。謹慎生活は辛かったけど、今は別に気にしてないからね」
「いや、でも考えなしに口にしたから……」
「そんな事別に気にしてなく良いよ。俺自身が気にしてないんだから」
落ち込むウィルに俺はそう言って、話題を変える事にした。
「そう言えばさ、ウィルはクラリスと会ったんだよね? 元気にしてた?」
「体調的は元気そうだったけど、やっぱりアルフと離れ離れになって落ち込んでは居るね。だけど、クラリスも強い子だからいつかアルフと一緒に過ごす事を夢見て頑張ってたよ」
「そっか、やっぱりクラリスは強いな~、あの家に生まれて良かった事はクラリスが妹って事だけだよ」
「僕がこういうのもあれだけど、あんな家に生まれてアルフとクラリスみたいな子供が出来上がるなんて本当に奇跡だと思うよ」
ウィルの言った通り、あんな家に生まれて俺とクラリスという子供が出来上がったのは本当に奇跡だと俺自身そう思う。
その後、朝食が出来た頃、丁度師匠達も起きて来たので朝食を食べる事にした。
「ウィルとダラムスさんはこの後はどうするんですか? 俺と師匠は、夕方まで迷宮探索をするつもりですが」
「う~ん、同行したいけど昨日の話を聞いた感じ、レベル上げに専念するみたいだし、先に帰るよ。邪魔はしたくないからね」
「邪魔って、別にウィルを邪魔とは思わないよ?」
「いや、アルフの戦い方昨日見てたけど確実に邪魔になるだろうからね。取り合えず、今回は帰るよ。他にもやらないといけない事もあるからね」
ウィルはそう言うと、ダラムスさんと共に安全地帯から出て行った。
「本当に邪魔には思ってないのにな……」
「まあ、やる事があるって言ってたみたいだから、多分そっちが本命だろうな。昨日、ダラムスと少し話してみたけど、アルフの友人はアルフの家の事で色々と調べてるみたいだからな」
「えっ、そうなんですか?」
「みたいだぞ。まあ、取り合えず今日はレベル上げを頑張るんだ。時間はそんなに無いからな」
師匠からそう急かされた俺は「は、はい!」と返事をして、テント等を撤去して、今日の迷宮探索を始めた。
その後、半日掛けて〝初心の迷宮〟を隅々まで探索して、魔物を見つけては倒し続け、目標である30レベルに到達する事が出来た。
ただ途中から時間がギリギリだろうと気づいた俺は、ずっと走っていて30レベルに到達したと分かった瞬間、完全に体力が切れてしまった。
「……な、何とかギリギリ達成出来ました」
「固定で上がるとはいえ、1500匹を二日で狩り終えるとはな……正直、20後半行けたらいい方だと思ってたけど、アルフのやる気は俺の想像以上だったよ」
「迷宮に来れる日はあまりないですからね……途中から魔物が減って、少し焦りましたけど」
「人が居ないとはいえ、アルフが狩りまくったから居なくなったんだろう」
それから俺と師匠は、迷宮から出て来て馬車に乗り、王都に向かって移動を始めた。
既に陽は落ちかけていて、王都に着くのは陽が完全に落ちた頃になりそうだ。
「アルフ。王都に着いたら起こしてやるから、魔法の訓練はせずに休んでいて良いぞ。明日は学園があるんだから、休めるうちに休んだ方が良いぞ」
「は、はい。分かりました」
師匠の言葉に俺はフラフラと頭を動かしながら返事をして、荷台で横になり、王都に着くまで休む事にした。
そうして数時間後、師匠から起こしてもらって外を見ると陽は完全に落ちて既に商会の敷地内に居た。
「師匠が馬を動かしてるのに、荷台で寝させていただきありがとうございます」
「気にするな。それより、体調に問題が無いならこのままエルドさんの所に報告に行こうと思うが大丈夫か?」
「はい。寝たおかげで体力も戻ったので大丈夫です」
約五時間睡眠が出来た俺は、迷宮での疲れも大分とれていた。
そして師匠の言葉にそう返事をした後、俺と師匠は商会の建物に入りエルドさんの仕事部屋に向かった。
「おかえり、アレン、アルフ」
エルドさんの仕事部屋に入ると、エルドさんはそう優しい声音でそう出迎えてくれた。
それから俺と師匠は、エルドさんに報告を始めた。
「二日、それも移動時間が十時間失ってるのに1500匹も魔物を倒したのか!? 流石に無茶をさせたんじゃないか?」
「俺も口では30を超えようとは言ってましたけど、予想では20後半だと思ってたんですよ。ですけど、アルフの頑張りは俺の予想を超えていまして、時間ギリギリで30になったんですよね……今回ばかりは、無茶をさせたと俺も思ってます」
「強くなるのに越した事は無いが、アルフが壊れたら元も子もないぞ……無事に達成できたから良かったが、次からはアルフの頑張りも考慮して目標を定めるんだぞ」
師匠はエルドさんからそう忠告をされ、気落ちした様子で「はい。すみませんでした」と謝罪を口にした。
「あの、無茶は少しはしまたけど、無事に強くなったので師匠をあまり責めないであげてください……」
「アルフ。お主がアレンの事を師匠として大事に想ってるのは、儂も理解している。だがな今回の忠告は大事な事だ。それはアレンも理解している筈だ」
師匠を庇った俺の言葉にエルドさんはそう言うと、師匠は「今回は無茶話させた原因は俺だ」と口にした。
「アルフが強くなりたいと言う気持ち、その大きさを俺が把握出来てなかった。そこは師匠として駄目な所だった」
「まあ、目標についてもう少し話しておくべきだったと儂も反省だな、次に迷宮探索に行く際はちゃんとそこについて話し合って決めるべきだなアレン」
「そうですね。俺一人だと、無茶をさせてしまうかも知れません。その時は、よろしくお願いします」
そう師匠とエルドさんは言い、報告会兼反省会は終わった。
その後、食堂で食事をして風呂に入った俺は、部屋に戻って来てベッドに横になると五時間寝ていたのにも関わらず、直ぐに眠りについた。
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