第67話 【迷宮探索・3】


「成程な、他国の友人の為にかなり時間を掛けたんだな」


「はい。アルフは僕にとってかけがえのない友人です」


 ウィルは真顔で師匠にそう言って、俺はウィルがそこまで俺の事を想ってくれてるなんて知らなかった。


「それで、まあ事情は分かったが。こいつが居る理由は?」


 師匠はウィルがここに来た理由は納得したが、一緒に来たダラムスさんに対して何故居るんだ? という目でそう言った。


「ダラムスさんは昔から、ルザーナ家と親交のある冒険者でして父に話した所、ダラムスさんに連れて行ってもらえと言われて一緒に来たんです」


「俺はアレンとは違って、貴族と一括りで嫌ったりしてないからな」


 ニカッと笑いながら、ダラムスさんがそう言った。

 そうして諸々の事情を知った師匠は、ポツリと帰ったらエルドさんに報告しないとな言った。


「それにしても、まさかウィルとこうして迷宮で飯を食べる事になるなんて昔なら絶対にあり得なかったね」


 あの後、食事を作り終えた俺はウィル達と一緒に食事を共にする事にした。


「そうだね。僕としては、アルフの変わりようにかなり驚いてるよ。アルフにこんな料理の才能があったなんて」


「商会に拾われてから勉強したんだよ。どう美味しい?」


「うん。美味しいよ」


 ウィルは本当に美味しそうに食べながらそう言い、俺はウィルから美味しいと言われて嬉しく感じた。


「そういや、そこに剣があるって事はアレンの弟子は剣も使ってるの?」


 ウィルと話しながら食べていると、ダラムスさんからそんな事を聞かれた。


「はい。【剣術】のスキルも持ってるので剣を使いながら戦ってます」


「ほ~、魔法も使えて剣も使えるなんて中々いいスキル構成だな。アレンが教え込んだのか?」


「一部は俺だが、【剣術】は俺じゃなくてエリスさんだ」


「お前の言うエリスって、ルクリア商会の副会長〝疾風の剣士〟か?」


 ダラムスさんはエリスさんの事を〝疾風の剣士〟と言うと、師匠は頷いた。


「えっ、エリスさんって二つ名持ちの冒険者だったんですか?」


「まあな……だが、アルフ。この事は言わない方が良いぞ、エリスさんは俺以上に二つ名を嫌っていて、その名を口にした瞬間命が無いと思えよ?」


「はっ、はい!」


 師匠の本気の忠告に対し、俺は少しだけ怯えて返事をした。


「ああ、それとダラムス。お前が二つ名を口にした事はエリスさんに伝えとくから、商会には近づかない方が身のためだぞ」


「おい、何でそんな友達を危険な目に合わせようとするんだよ!」


「事実を伝えるだけだ。友達とか親しい関係じゃないだろ」


 師匠はそう言うと、ダラムスさんは師匠に「それは無いだろ~」と縋りついた。

 その後、夕食を食べ終えた俺は安全地帯の中に【土属性魔法】で個室の様な所を作り、その中に風呂桶を設置してお湯を入れた。


「師匠。どうしますか、先に入りますか?」


「いや、俺はダラムスとちょっと話す事があるから、アルフは先に入っていて良いぞ」


「分かりました。ウィルはどうする? 風呂入る?」


「迷宮の中でも風呂に入るって、アルフはおかしいね……まあ、でも汗とか気になるし入っても良いなら入るよ」


 ウィルはそう言うと、一緒に土の箱の中に入り魔法でお湯を作りシャワーを浴びて汗と汚れを落とし、湯舟に浸かった。


「まさか、迷宮の中でも風呂に入れるなんて思いもしなかったよ……アルフってこんなに風呂が好きだったの?」


 ウィルは湯舟に浸かり、気持ちよそうな顔をしながらそう言った。


「商会で暮らす様になってから好きになったね。その前までは、特に好きとか嫌いとかは無かったよ」


「そうなんだ。ってか、アルフ。身体鍛え過ぎじゃない? そんな筋肉質だったっけ?」


 ウィルは俺の身体が目に入り、そんな事を聞いて来た。


「努力の賜物だよ。こうみえて、時間があれば訓練をしてるからね」


「だとしても、商会で暮らし始めて半年とか経ったわけじゃないのにその身体ってかなり無茶してるんじゃないか?」


「無茶はしてないよ。体調管理をしっかりとしながら、訓練をしていたからね」


 心配してくれたウィルにそう言った俺は、それからウィルと他愛もない会話をしながら風呂にゆっくりと入った。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る