第61話 【注目の的・1】
二日間の休日を終えた俺は学園がある為、朝食を食べた後は弁当を作り学園に登校した。
「……なんか、先週より注目されてるような?」
学園までは馬車で移動する為、人の視線は感じないのだが。
学園に着いて教室に向かっていると、周りからかなり視線を感じた。
「なんでこんなに注目されてるんだ?」
「先週、魔法訓練の時かなり凄い技連発してたでしょ? 多分、それでだよ」
教室に到着した俺は、情報を知る為に先に来ていたリサに尋ねるとそう言われた。
確かに先週、魔法訓練の際はアリスに魔法を見せるのも兼ねて、魔法は使っていた。
だけど俺からしたら、そこまで難しい魔法は使って無かったんだけど……。
「魔法科クラスの人よりも凄い魔法を使う生徒が居るって、学園でかなり噂になってるんだよ」
「マジか……」
周りのレベルをちゃんと把握出来てなかったせいだな、今後はより気を付けないと。
そう俺は反省しつつ、席に座り隣に座ってるアリスに「おはよう」と挨拶をした。
「アルフ君、おはよう。朝から注目の的だね。私だったら、もう逃げてるよ」
「なんか見られてるな~って程度でしか感じてなかったけど、俺の思っている以上に注目されてるみたいだよね。アリスには迷惑だよね……」
「そんな事は無いよ。確かにちょっと人の視線は感じるけど、アルフ君と一緒に学園で生活できるのは楽しいから」
アリスは俺に対して、そう言ってくれた。
そう言われた俺は、少しだけ気を取り戻して「ありがとう。アリス」と笑みを浮かべて言った。
それから廊下から視線をちょくちょく感じつつも、午前中の授業を終えて午後の魔法訓練の時間となった。
「う~ん。やっぱり、ここは更に視線を感じるな……アリス、大丈夫か?」
「う、うん。大丈夫だよ……」
訓練場では多くの生徒がいる為、より視線を感じる。
そんな場で俺の隣に立っていたアリスは、俺の後ろへと身を隠した。
「アルフ君、注目の的だね~。まあ、でもアルフ君の魔法を見たらそう思うのは仕方ないよね」
「あれでも抑えてるつもりなんだけどな……」
リサの言葉にそう返し、暫くすると先生が訓練場へとやって来た。
今日の授業内容は、現在の魔法のレベルを測る為に学園側が用意した的に魔法を当てる内容だった。
主に試験で行われるやり方で、こうして授業でやる事で本番での成功率や実戦で使う際により的確に使えるようにするためみたいだ。
「さてと、最初だけど……アルフレッド君、最初にやってくれるかな?」
「俺ですか?」
「うん。この中で一番、魔法のレベルが高いのは君みたいだからね」
先生からそう言われた俺は、周りからの視線を感じつつも呼ばれたからには、やらないといけないと思い前に出た。
「的は壊さない方が良いですよね?」
「そうだね。今回は、威力よりも精確性と魔法構築の早さを見ようと思ってるから、これは他の皆もだから的は壊さないようにね」
先生はそう言うと俺は、的から数m離れた位置に俺は立った。
「アルフレッド君、いつでも良いよ」
「はい。分かりました」
先生からの許可が下りた俺は、【水槍】を一本だけ構築して的に向かって放った。
俺の魔法は的の中央に直撃して、威力を抑えていた為、的はすこしだけ凹んだだけですんだ。
「流石、アルフレッド君だね。魔法構築も早くて、的の中央にしっかりと当ててるね」
先生は拍手をしながらそう言うと、それから生徒達は順番に同じように的当てを始めた。
「ねえ、アルフ君。どうやったらあんな綺麗に的に当てられるの?」
疑似的な試験を終えた俺は、アリスとリサの所に戻ってくるとリサからそんな事を聞かれた。
「う~ん。まあ、訓練の成果かな? 師匠からは魔法構築の速さとかは、結局基礎が大事だって言われて色んな訓練をしてるけど、訓練が始まる時はいつも基礎訓練から始めてるんだよ」
「そうなの? もっとこう凄い訓練をしてるのかと思ってた」
「凄い訓練がどんなものを想像してるか分からないけど、師匠から教えられてる訓練方法は基本的に基礎を伸ばしていく感じの訓練だね。師匠曰く、強くなるのに近道は無いから地道に努力する事が大事だって言ってた」
「地道に努力……」
リサは俺からそう聞くと、やる気に満ちた目をして「私も強くなる為に頑張ろう」と言った。
「あれでも、リサは薬師になるのか夢なんじゃないの?」
「うん。でも、やっぱり薬を作るには自分で取りに行かないといけない時もあるでしょ? そんな時の為に、今から強くなっておきたいんだ」
「そうなんだ。もし何か困ったら、相談には乗るよ」
「えっ、良いの!?」
リサは俺の言葉に驚きそう聞いて来たので、俺はリサに対して「友達だから、当然だろ?」と言った。
「アルフ君、ありがとう!」
そうお礼をリサは言うと、俺の後ろに隠れてたアリスが「が、頑張ってね。リサちゃん」とリサの事を応援する言葉を言った。
その言葉にリサは勿論、俺も驚いた。
魔法訓練はリサも含めて三人でずっと一緒に居たけど、アリスがリサに対してこんな風に応援するのは始めてだ。
言った本人であるアリスは、言葉を発した後に恥ずかしくなったのか俺の後ろに隠れ、言われたリサは完全に固まってしまった。
それからリサは硬直したまま順番になってしまい、俺が大声で呼びかけてようやく意識が戻って来た。
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