第60話 【スキルについて・4】


 訓練二日目というだけあり、フェルガと師匠の動き一日目よりもかなり良い。

 昨日の時点では、そこまでだったフェルガも上手くなっていて、どうして上手くなってるのと聞くと。


「我もよく分からん」


 と、フェルガ自身も分かっていない様子だった。

 そうして、二日目も訓練も師匠達に【剣術】を教えると、昼過ぎ頃に師匠がスキルを獲得して、それから少ししてフェルガも獲得した。


「……これはやはり、アルフのスキルが何か関係していると見ていいな。俺はこれまで剣を握った事は何度かある程度だったが、そんなガッツリと訓練した事は無い」


「我なんて、昨日初めてまともに剣を持ったからな」


「という事は【経験値固定】は他者にも影響を与えるスキルという事になるな……馬鹿げたスキルだな」


 師匠は【経験値固定】の新たな力を発見すると、呆れた様子でそう言った。

 それから検証である【剣術】の訓練を終えた俺と師匠は、その報告の為に再びエルドさんの所へとやって来た。


「一日に二度も来てしまってすみません」


「いや、良い。それで、その様子だとアルフのスキルの検証が終わったのか?」


「はい。アルフの持つ【経験値固定】は、他者にも影響を与えるスキルとなります。【指導】のスキルがあるとはいえ、あまりにも早すぎますから【経験値固定】の力だと俺は思います」


 師匠の報告を聞いたエルドさんは、手を顎に置き考え始めた。


「これは益々、アルフには早急に強くなってもらわないといけなくなって来たな……」


「そうですね。ただこのスキルの効果ですが、多分アルフ本人の気持ち次第だと俺は思いますよ。現にこれまで、俺がアルフに教えていた際は【指導】のスキルは獲得出来てません。それは多分、アルフが意識してなかったからだと思います」


「確かにこれまで一緒に訓練してましたけど、師匠がスキルを獲得したとは聞いてませんね」


 俺の【経験値固定】が他者にも影響を与える事は今回の事で分かったが、そのスキルがむやみやたらに他者に影響は与えてないと。

 俺と師匠は、これまで訓練してきてなにもスキルが現れてない事から、そう断定した。


「そうだとしても、意識する事で他者にもその能力を使用させられるアルフの力は凄まじいと儂は思う。この事実は出来る限り隠すつもりだが、世の中にはステータスを見破る者は居る。そういう奴等が現れた際、抵抗できる力は今の内から育てておいた方が良いだろうな」


 そうしてエルドさんへの報告を終え、師匠と一緒に部屋を出ようすると。

 エルドさんから「そうだ。アルフに渡す物があったんだ」と言われ、呼び止められた。


「渡す物ですか?」


「ああ、これを暫くつけておくんだ」


 エルドさんはそう言いながら、机の中から小さな木箱を取り出し、中からネックレスを取り出した。


「これは【鑑定】系のスキルを弾く魔道具で、【指導】を手に入れたと聞いてから用意した」


「えっ、魔道具ってかなり高価ですよね?」


 俺は既に師匠から異空間に物を入れるバッグを貰っている。

 それなのに、借りるとは言え魔道具を渡された俺は少し困惑しながらそう聞き返した。


「他人から狙われないようにする為の、応急措置と思って着けておくんだ。凄腕の者のは弾く事は出来んが、それ以外の者からは見られなくなるからな、持っていた方が儂等としても心配が減るんだ」


「アルフ。貰っておいた方が良いぞ、今のアルフは狙われたら抵抗する術は殆どないだろ? 強くなるまでは、自分の力は隠しておいた方が良い」


「……分かりました。エルドさん、色々とご心配して頂きありがとうございます」


 そう俺は言ってネックレスを受け取り、早速身につけた。

 普通のシルバー系のアクセサリーとほぽ変わらない為、付けていても違和感はそこまで無い。

 その後、エルドさんの部屋を出た俺と師匠は訓練場へと戻って来た。


「それにしても【経験値固定】に【指導】があるアルフが教える立場になれば、凄い事にはなりそうだな……」


「そうですね。明日から、またアリスの訓練に戻りますけど。もしかしたら、アリスも凄く沢山のスキルを覚える事になりそうですね……良いんですかね?」


「アリスが強くなる事は、エルドさん達も喜ぶだろうけどやり過ぎたら心配に変わるだろうから、当分は魔法だけに絞っていた方が俺は良いとは思う。アリスの場合、ルクリア商会をいずれは継ぐ者になるからな」


「分かりました」


 そう師匠から言われた後、この二日間は師匠達に【剣術】を教えていて自分の訓練をしていなかった俺は自分の訓練をする事した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る