第62話 【注目の的・2】


「ふむ、既に学園では注目されているのか……」


 魔法訓練を終え、商会へと帰宅した俺はアリスとの訓練の前に、エルドさんの所に行き学園での事を報告した。


「注意する前の出来事だとは言え、既にそこまで学園に広まっておるなら、早急に動いた方が良いだろうな……」


「師匠が落ち着くまでは、迷宮でのレベル上げもできませんから」


「そうだな……うむ、暫くはこのまま様子見になるだろう。アルフは普段、外に出掛けないが学園から帰ってくる際も気を付ける様に、これはアリスもだぞ?」


「「はい!」」


 エルドさんから忠告をされた俺とアリスは、そう返事をしてから部屋を出た。

 その後、アリスの魔法訓練を終えて夕食を食べ、風呂に入って部屋に戻ってきた俺はベッドに横にならず、椅子に座った。


「師匠やエルドさん達は、俺の事を心配してくれてるのは俺がまだ弱いからだ……今より、もっと強くなるにはどうしたらいい?」


 自分で言うのもあれだが、常人よりもスキルを覚えるのは早い。

 ましてやスキルレベルを上げるのだって、一番効率的なやり方で上げる事が可能だ。

 だけど、スキルが有ったからと言って素の能力が低ければ、どんなにスキルがあっても強敵には敵わない。


「どうしたらいいんだろう……」


 俺は悩むが、特に良い案は思い浮かばずそれから数日間、エルドさんから言われた通り、学園でも極力大人しく過ごす事にした。

 だけど既に有名になってしまった俺は、どんなに大人しく過ごしていたとしても人の視線を感じ、中々に居心地の悪い生活を送った。

 そんな生活を送りつつ、俺は自分の出来る事を精一杯頑張る事にした。


「アルフ。待たせて悪かったな、無事に出産を終えたから迷宮にレベル上げに行けるぞ」


 そう言われたのは、エルドさんから注意をされて約二週間が経った頃だ。

 無事にリアナさんの出産を終え、母子共に健康な事を確認出来た師匠は、数日間家族と過ごして俺の所に来てそう言った。


「明日明後日、丁度学園も休みだろ? その二日間で近場にある迷宮に行こうと思う」


「その、凄く楽しみにしていましたけど……家族と一緒に居なくて大丈夫なんですか?」


「大丈夫だ。もうリアナも子供も安定しているし、万が一の事を考えて護衛も居るからな」


 そう師匠は言うと、この期間で俺がどう成長したのか確認する為にステータスを見せて欲しいと言ってきた。

 俺は特に拒否する理由も無い為、師匠と一緒に自分のステータスを確認する事にした。


名 前:アルフレッド

年 齢:16

種 族:ヒューマン

身 分:平民

性 別:男


レベル:15

筋 力:294

魔 力:435

敏 捷:103

 運 :91


スキル:【経験値固定:—】【剣術:6】  【属性魔法(4):—】

    【魔力制御:10】【従魔:10】 【調理:7】

    【指導:3】   【並列思考:3】【身体強化:3】

加 護:Error


水属性魔法:10

土属性魔法:8

火属性魔法:4

風属性魔法:6


「……理解していたけど、レベルが上がってないのにかなり能力値も上がってるし、何よりスキルレベルがかなり上がってるな」


「自分に出来る事は何かと考えたんですけど、やっぱり今の自分をより強くする事が大事だと思いまして、アリスの訓練を見つつ自分を鍛える事に専念してきました。それで色んな訓練を同時にしていたら、何故か【並列思考】ってスキルも獲得したんですよね」


「そのスキルも魔法使いなら使えるスキルの一つだな、同時に複数の事を考える事が出来るから戦況の把握だったり、複数の魔法をより多く出したりと色んな使い道が出来るんだが……」


 師匠は【並列思考】について教えてくれると、その次に獲得した【身体強化】へと視線がいっていた。


「【身体強化】はどうしたんだ?」


「それはエリスさんに教わったんです。剣も使えるなら、このスキルも持っていた方が良いと言われて、やり方を教わってこの期間に習得しておきました」


「益々、アルフは魔法と剣士の両方を極めようとしているな……」


「両方出来ていた方が、戦いの場では有利だと師匠も言っていたので師匠が居ない間、その理想に少しでも近づけようと頑張ってみました」


 師匠の言葉に俺がそう言うと、師匠は「それが出来るから、アルフは本当に凄いよ」と感心した様子でそう言った。

 その後、俺と師匠の会話が終わるのを待っていたアリスの訓練を再開し、その間に師匠はエルドさんの所に迷宮についての話をしに行った。


「アルフ君、迷宮に行くの?」


「うん。前から約束していたからね。アリスには話したと思うけど、俺はレベルを上げるには低いレベルな今でもかなり数を倒さないといけない。その為に迷宮に行くんだ」


「アルフ君は、迷宮は怖くないの?」


「怖くはないかな? どちらかというと、楽しみのが上だね。今まで訓練していた事を実際に試したいからね」


 心配気に話すアリスにそう言うと、アリスは「怪我はしないようにね。頑張ってね」と応援してくれた。


 


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る