第53話 【アリスと魔法訓練・1】


 学園に入学した翌日、今日も俺は朝早くに起きて食堂のおばちゃん達と一緒に料理をしている。


「アルフ君、もう大分料理が上手くなったわね」


「本当にね。アレンさん達からアルフ君は物覚えが良いって聞いてたけど、こんなに早く上達するなん思わなかったわ」


 そう俺はおばちゃん達に褒められ、今日も自分の分の弁当を作り学園に向かった。


「……なんだか視線を感じるな」


 登校すると、教室に行くまでの間、かなりの視線を感じた。

 そして俺は教室に入ると、先に教室に入っていたリサが慌てた様子で俺の近くに寄ってくると、いきなり頭を下げた。


「昨日の授業中に私が考えなしにアルフ君の師匠の名前を叫んだせいで、こんな事になっちゃって本当にごめんなさい」


「あ~、やっぱり師匠の事で視線が集まってたのか。大丈夫だよ。リサも悪気かあってした事じゃないし、それにいつかはバレる事だったと思うからそれが早くなっただけと思えば平気だよ」


 申し訳なさそうに謝るリサに対し、俺はそう言って謝罪を受け入れ。

 自分の席に座ると、既に登校していたアリスに「おはよう。アリス」と挨拶をした。


「アルフ君、おはよう。なんだか大変な事になってるみたいだね……」


「うん。いつかはバレる事だったし、バレたからといって害がある訳じゃないからね。まあ、多少目立つ存在になったかも知れないけど」


 その後、暫くすると先生が教室にやって来て、朝の会が始まった。


「アルフレッド君、噂で聞いたんだけど。アルフ君の師匠ってアレンさんなの?」


 朝の会が終わると、俺の席にレインはやってくると、噂の真実を確認しに来た。


「うん。そうだよ」


「白金級冒険者が師匠ってだけでも凄いけど、アレンさんが師匠ってアルフレッド君凄いな」


「やっぱり、レインも師匠の事知ってる感じ?」


「知ってるも何もあの方を知らない人は、王都には居ないと思うよ。平民である僕達の憧れでもある人だからね」


 レインはそう言うと、師匠の事が本当に尊敬している様子だった。

 まあ、確かに師匠は出生が平民でありながらも、実力を証明して国からも誘われる程の魔法使いだ。

 そんな師匠は同じ平民からしたら、憧れであり尊敬する対象なのだろう。

 勿論、今の俺も師匠は憧れの存在だ。


「それで相談なんだけど……弟子であるアルフレッド君に頼めば、アレンさんに会えたり出来ないかな?」


「う~ん。今はちょっと難しいかな? 商会の仕事が忙しくて、最近は俺も師匠とは会えてないんだよね」


「あっ、そうなんだ」


「だから、落ち着いた時に師匠に聞いてみるよ」


 そう言うと、レインは嬉しそうな顔をして「ありがとう」とお礼を言って去って行った。


「そう言えば、アリス。昨日の〝実技訓練〟を見てて思ったんだけど、もしかして魔法ってそこまで得意じゃない感じ?」


「うん。少しは出来るけど、それでも魔法を構築するのに時間が掛っちゃって真面に戦闘で使えるような魔法は覚えてないんだ」


「そっか、なら魔法も俺が教えようか? 師匠から教えて貰った事以外にも、俺自身が訓練していて思ったこととか伝えられるよ」


「魔法も教えてくれるの? でもそれだと、アルフ君の訓練時間が無くなるよ?」


 アリスは俺が学園から帰った後、訓練をしている事をエルドさんから聞いたのか俺の言葉に対してそう言った。


「大丈夫だよ。寮の訓練場は広いし、アリスの成績を上げるのであれば、今後の実技試験でも点数を取れるようにしておかないといけないからね」


「それはそうだけど……本当に時間、大丈夫?」


 アリスは俺の時間が無くなってしまう不安があるようで、直ぐには頷くことはしなかった。


「それじゃ、取り合えず一週間だけ試そうよ。それで、俺もちゃんと訓練を出来ていればアリスも安心して訓練に集中出来るだろ?」


「それなら、うん。試してみて、アルフ君もちゃんと訓練の時間を確保できるなら、私も安心して訓練出来ると思う」


「よし、それなら早速今日から魔法の訓練をしようと思うけど、予定は大丈夫?」


「いつも家に帰って本を読むだけだから、予定は無いから大丈夫だよ」


 アリスはそう言ったので、今日は学園が終わったら一緒に商会に帰り、寮の訓練場で一緒に魔法の訓練をする事を約束した。

 そうして一日の授業を受けた俺とアリスは、周りの視線を感じつつ校門を出て。

 まずは、アリスがいつも乗ってる馬車の御者さんに今日は商会に行くと伝えた。


「分かりました。それでは、私は先に商会に戻っておりますね」


 そう御者さんが言って、俺とアリスは俺がいつも乗ってる馬車に乗って商会に帰宅した。

 帰宅後、先にエルドさんに話をしておこうと思った俺は、商会の受付でエルドさんと話す時間はあると尋ねた。


「アルフ君とアリスちゃんでしたら、いつでも大丈夫ですよ」


 そう受付の人から言われた俺達は、エルドさんの仕事部屋に向かった。

 そして部屋の前に到着した俺は、部屋をノックして中から「入って良いぞ」という声がしたので扉を開けて中に入った。


「アルフにアリス?」


 エルドさんは、俺達が来た事に少し驚いていた。

 俺はそんなエルドさんに対して、学園で話した事を伝えて、アリスに魔法を教える許可を貰えないか聞いた。


「儂としては有難いが……本当に時間は大丈夫なのか?」


「大丈夫ですよ。それに人に教えるのは自分の為にもなりますから」


「ふむ……分かった。儂としてもアリスに魔法を教えてくれる者が居た方がよいと思っていたから、アルフにアリスの事は任せる」


 エルドさんはそう言って、俺はアリスに魔法を教える許可を貰う事が出来た。

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