第52話 【学園生活の始まり・4】


 それから少しして、魔法担当の先生が訓練場へとやって来た。

 そして授業が始まって直ぐに、三人一組のグループを作ってほしいと言われた。


「アリス。後一人どうしよっか」


「ど、どうしよう……」


 グループ決めに難航しそうだなと思っていると、俺達の所に一人の女子生徒が近づいて来た。

 あれ、この人は確か同じクラスの人だったような?


「はじめまして、アルフレッド君。最後の人枠余ってるなら、私が入っても良いかな?」


「俺は良いですよ。アリスはどう?」


 女子生徒の言葉に俺はそう返し、既に俺の後ろに隠れているアリスに聞いた。

 すると、アリスはちょこっとだけ顔を出すと小さく頷いた。


「良いみたいですね。えっと……」


「あっ、まだ自己紹介がまだだったね。私は、リサ・フィネット。よろしくね!」


「アルフレッドです。よろしくお願いします」


 リサと名乗った女子生徒と俺は握手を交わし、無事にグループが決まった。


「へ~、リサは薬師が夢なんだ」


 あの後、互いに早く打ち解ける為にとリサは俺の事を〝アルフ君〟と呼び、俺は〝リサ〟と呼ぶ事にした。


「うん。お父さんとお母さんが薬師で、いつか私もお父さん達と同じ薬師になりたいと思ってるんだ。その為、学園の特別授業で薬に関して色々と教わってるんだ」


 学園の一日の日程は、午前中は基礎的な授業で午後が科目に合った授業が行われる。

 更にその先に、生徒が学びたい分野を教わる時間があり、それに関しては受ける人受けない人が居るみたいだ。

 勿論、アリスは勉強が苦手な上に人とのコミュニケーション能力が低い為、受けない側の人間だ。


「薬の調合って考えただけで難しそうだけど、リサはもう何か作れたりするの?」


「簡単な痛み止めとか、治癒効果のある薬は作れるよ。これでも小さい頃から、お父さん達に調合について習ってたからね」


「へ~、それは凄いね」


「うん。凄い……」


 リサの話を聞いていた俺は、素直にそう褒めると一緒に聞いていたアリスも頷きながらそう言った。

 そしてそんなアリスの反応に対し、リサは「アリスちゃんがはじめて、反応してくれた……」と何故か感動していた。


「そんなに感動する事?」


「感動するよ! 私これでも初等部でも三年間、アリスちゃんとクラスが一緒だったけど、一度も会話した事が無かったんだよ。それが、今日やっと会話が出来たんだから嬉しいに決まってるよ!」


 リサは少し興奮気味にそう言うと、アリスは再び俺の後ろへと隠れてしまった。


「三年間一緒って、それって珍しい方なの?」


「ん~どうだろ? 商人科クラスは、初等部だけでも10クラスとかあったから、かなり低確率だとは思うよ」


「10クラスも? 初等部の商人科だけでそれって、他の科も合わせたらもっと行きそうだね」


「商人科は少ない方だよ。だって、貴族の人は殆ど商人科には来ないからね」


 リサの話を聞いて、確かに貴族で商人になろうと思うのはあまりいないだろう。

 その後、暫く話しているとグループ分けが終わり、授業の内容を説明された。

 今日の授業は、簡単に言えば的当てのようなもので挑戦者は一人で、残り二人が的を出す役割をするみたいだ。


「最初は誰がやる? リサは魔法得意?」


「う~ん、微妙かな? そこまで得意って言えるほどでもないから、最初は嫌かも……」


「アリスは……うん。無理なんだね」


 アリスに聞こうとすると、アリスはブンブンと首を振って無理とアピールしていた。

 俺は二人が無理ならと、最初に挑戦する事にした。

 的は的出しの人が魔法を撃つなり、用意されてる的を使っても良いらしく、二人は用意された的を投げるみたいだ。


「さてと、ここか真面目に受けておいた方が良いな」


 そう思った俺は先生の開始の合図と共に、アリス達が出す的に精確に魔法を当て続けた。

 的は全部で30個用意されていて、俺は全ての的に魔法を当てる事が出来た。

 その光景を見ていた先生は、俺の近くに来て「流石はアレンさんのお弟子さんだね」と納得した様子でそう言った。


「先生は師匠を知っているんですか?」


「知っているよ。元々、先生になる前は冒険者をしていてね。アレンさんとは何度か会った事があるんだよ。まあ、私が一方的に知ってるだけだけどね」


 先生は笑いながらそう言うと、俺から去っていき先生と変わるようにしてアリス達が俺の元に寄って来た。


「アルフ君、魔法も得意なの?」


「まあ、今の訓練のメインは魔法だからね。俺の師匠は〝黒衣の魔導士アレン〟さんだよ」


「えぇ、アレンさんのお弟子さんなの!?」


 リサのその驚く声に対し、周りで授業を受けていた生徒達はピタッと時間が止まったかのように静止した。

 そして生徒達は俺の方をジッと見ていて、これは騒ぎになるかも知れないと俺は察した。


「手が止まってるよ。授業に集中しないと、成績に響くかもだよ」


 しかし、騒ぎが起こる前に先生がそう言ってくれた。

 その後、授業は順調に進み〝実技訓練〟の授業時間が終わって直ぐに、騒ぎになる前に俺はアリスとリサを連れてさっさと教室に戻った。

 そして帰りの会を教室で行った後、俺はアリスと一緒に商会の馬車が迎えに来ていたのでその馬車にサッと乗り込んだ。

 学園の初日は、自分のせいで騒ぎになるかもと思い、さっさと帰宅した俺だった。

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