第50話 【学園生活の始まり・2】


 その後、一限目の授業では事前に許可を貰っていたので、アリスと机をくっつけて教えながら授業を受けた。

 エルドさん達から言われていた通り、高等部の算術のレベルは今の俺には簡単でアリスを教える方に集中しても問題は無さそうだ。


「アルフ君、私ばっかり教えてても大丈夫?」


 俺は自分の心配はしなくても良いと判断して、アリスに付きっきりで教えていると。

 心配した様子で、アリスは俺に聞いて来た。


「心配ないよ。これくらいだったら、もう覚えてるからアリスは気にしなくて大丈夫だよ」


「本当に?」


「心配なら家に帰って、今日授業に出た所をエルドさんに聞いてみたらいいよ。エルドさんなら、俺がどこまで覚えてるのか知っているからね」


 そう言うと、アリスは少しだけ安心したようで集中して授業を受け始めた。

 それから、算術の授業を一通り受け終わった。

 正直、受けるまでは心配していたが、このレベルなら全く心配はなさそうだ。


「ねぇ、アルフレッド君、で良いかな?」


「んっ、どうしたの?」


 算術の授業が終わり、先生が次の授業の為に教室を出て行くと、授業中もチラチラと見ていた人達の一人がそう言って俺に話しかけて来た。

 彼はまず最初に自己紹介をした。

 彼の名前はレインで、今の俺と同じ平民だ。


「その、さっきから凄く皆が気になってて教えて欲しいんだけど……アルフレッド君とアリスさんって、どういう関係なんですか?」


 レイン君はドキドキと、緊張した様子でそう言った。

 まあ、確かに自分達のクラスに入って来た奴がいきなり、そのクラスの無口なアリスと接していたらそう思うのも仕方ないよな。


「友達だよ。ほらっ、挨拶の時に言ったように俺はルクリア商会に所属している冒険者なんだ。それで商会長から、同年代でアリスの友達なら学園生活の手助けをしてやって欲しいって頼まれたんだ」


「そう言えば、挨拶の時にルクリア商会所属って言ってたね……」

 

 レインは改めて、俺が〝ルクリア商会の所属冒険者〟という事を認識すると、少し驚いてる様子で呟いた。


「……えっ、ちょっと待ってアルフレッド君。今、アリスさんの何って言った?」


「友達だよ」


 レインがそう聞き返してきたのでもう一度言うと、今度は盛大に驚き周りのクラスメート達も騒がしくなった。

 こんな反応をされるという事は、アリスの人見知りは相当な物なんだろうなと、少しだけそう感じた。


「あ、アルフレッド君って凄いんだね……」


「別に凄くは無いと思うよ。アリスの中で、俺は直ぐに慣れる相手だったみたいだからね。それでエルドさんから、折角なら今の関係をうまく使って欲しいから学園でアリスのサポートをする為、学園に通う事になったんだよ」


「そうなんだ。アルフレッド君って、ルクリア商会の商会長とも面識があるんだね」


 そうレインは言うと、丁度先生が戻って来たので席に座りに行った。


「……アリス。商会では気づけなかったけど、相当な人見知りみたいだね」


 レインとの会話中、アリスは一切喋らずに若干視線を下に向けて固まっていた。

 俺はそんなアリスを見て、エルドさん達が言っていた事がようやく理解できた。


「アリス。大丈夫か?」


「う、うん。もう大丈夫……アルフ君は直ぐにお話出来るようになったんだけど、他の人はどうしてね緊張しちゃうの……」


「そっか……まあ、俺とも仲良くなれたって事は人が嫌いって訳じゃないんだから、これから少しずつ頑張っていこう」


 俯くアリスに俺はそう元気づけると、アリスは頷いて。


「私、頑張る」


 と、気合が入った声音でそう言った。

 その後、今日の二限目は歴史の授業みたいで、アリスは得意なのか不得意なのか聞いた。


「算術よりかはマシかな? ほらっ、難しい事ってあまり考えずに暗記する内容ばっかりだから」


「確かに算術とかに比べたら、歴史は覚える事が大事だから、そこまでは難しくないね。それじゃ、取り合えず歴史は一人で受けてみるか? 俺も学園の歴史の授業がどんな風に行われるか、少し気になってるから」


 そう俺は言って、二限目の歴史の授業は一限目の算術の様に机はくっつけずに一人で受ける事にした。

 その後、二限目の歴史は問題なく俺とアリスは授業を受ける事が出来た。

 学園の歴史の授業はどの程度だろうと、少し楽しみに思いながら聞いてみたが、やはり俺は既にその内容を知っていた。

 一限目、二限目と受け、今の時点で学園の授業は俺には難しくないと決定づけた。

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