第49話 【学園生活の始まり・1】


 数日後、俺は制服に着替えて学園指定のバッグの中に勉強道具に入れ、朝早くから商会の馬車で学園に向かった。

 昨日、学園から道具一式が届き、今日は俺の初の登校日だ。


「なんだか緊張するな……初等部に通ってないのにいきなり高等部から学園に行くって、こんな事になるとは思わなかった」


 自分が学園に行く事が未だ実感が湧かない俺は、商会が用意してくれた馬車に乗り学園に向かった。

 俺が今日から通う学園は、貴族・平民関係なく通う事の出来る学園。

 学びは大事という理念から、多くの者を受け入れて現在各地で活躍している人達の半分以上はこの学園の卒業生と本で見た事がある。

 戦士・商人・魔法の3つの科に別れていて、それぞれの科目別で勉強する内容が違う。

 そして俺が通う事になっているのは、アリスが現在通っている商人科と聞かされた。


「はじめまして、君がアルフレッド君かな?」


 学園に到着すると、門の所に一人の男性が立っていた。

 その方はピシッとしたスーツを着用していて、師匠とは別のカッコよさを感じた。


「はい。アルフレッドです」


「そうか、間違えて無く良かったよ。私の名前は、リアン。君が今後通うクラスの担任だ」


 担任だと紹介された俺は「これから、よろしくお願いします」と頭を下げ、そうリアン先生に言った。

 その後、リアン先生は俺が今後通う教室まで案内してくれた。


「中から呼ぶから、待っていてくれるかい?」


「分かりました」


 教室の外に到着すると、リアン先生からそう言われたので俺はそのまま少し教室の外で待機した。

 そして少しして、中から俺を呼ぶリアン先生の声がしたので、俺は若干緊張しつつ教室の扉を開けて中に入った。

 教師の中には数十名の同年代の男女が席に座っていて、入口から入って来た俺に視線を向けていた。


「初めまして、アルフレッドと言います。ルクリア商会所属の冒険者をしていて、今日から同じクラスに通う事になりました。これから、よろしくお願いします」


 考えていた挨拶を皆の前で言うと、クラスメートの人達は拍手をして出迎えてくれた。

 その後、リアン先生から空いてる席に座ってと言われた俺は、奥の方に空いてる席に座った。


「よろしくね。アリス」


 俺の席は窓際の一番後ろ、その隣にはアリスが座っていた。

 数日振りに会うアリスにそう挨拶をすると、周りが何故か少しだけザワついた。


「うん。これからよろしくね。アルフ君」


 そんな周りを気にしてないのか、アリスは嬉しそうな顔をしてそう挨拶を返してくれた。

 そんな俺とアリスとのやり取りを見ていたクラスメートとリアン先生は、何故か俺達の方を信じられないものを見たような視線を向けていた。


「えっと、もしかして今喋っちゃ駄目だったのかな?」


「う~ん、そんな事は無いと思うけど?」


 そう俺とアリスが言うと、周りはバッと視線を前に戻し。

 リアン先生も咳払いをして、今日の日程について話し始めた。

 その後、リアン先生の話が終わると一旦休憩時間になるらしく、生徒達はこの間に授業の準備をするみたいだ。


「アルフ君、教科書とかってもう持ってきてるの?」


「うん。エルドさんから、一通り買ってもらったから全部あるよ。本当は俺のお金で買うつもりだったんだけど、エルドさんから〝学園に通う事になったのは儂の頼みだから〟とか言って買わせてくれなかったんだよね……」


「お爺ちゃん、そういう所は頑固だからね」


 アリスはエルドさんから言われた事を教えると、笑いながらそう言った。

 そんな俺とアリスのやり取りをクラスメート達は、チラチラと見ていて俺はそれが少しだけ気になった。

 だけど、今はアリスが楽しそうにしているから、その事は後で確認する事にした。


「一限目の授業は確か、算術の授業らしいけどアリスが苦手な教科って何か聞いても良いかな?」


「うっ……」


 それまで楽し気に話していたアリスは、授業の事を聞くと言葉が詰まり俯いた。

 そして、小声で苦手な事を一つずつ言って行ったのだが……。


「高等部に入ってからの勉強全部って事だね……」


「うう、だってわかんないんだもん……先生に聞こうにも緊張して……」


「うん。聞いてるから、無理に話さなくても大丈夫だよ」


 アリスは自分の苦手な事が多い事に対し、自分自身で悔しいのか少し涙目になり始めたので俺はそう言って落ち着かせた。


「取り合えず、エルドさん達からは先に算術を入念に教えてやって欲しいと言われてるから、授業中に分からない事があれば何でもいいから俺に聞いてね。学園側にも話は通してるから、無駄話じゃない限りは怒られたりしないから」


 そう俺が言うと、アリスは涙を拭き頷いた。

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