第48話 【おかしな弟子・4(side:アレン)】


 そうして街で冒険者登録をして、後輩の冒険者と食事をした俺はアルフを連れて王都に戻って来た。


「無事にアルフの冒険者登録は済んだようだな」


「はい。ライザットさんもアルフの能力を見て驚いてましたよ」


 王都に戻ってきた後、俺はアルフと別れエルドさんに無事に登録を済んだ事を報告をした。


「さて、取り合えず冒険者登録は済んだようだし、次は王都の冒険者ギルドとの事を進めるか……アレン。暫く、アルフの修行は中断してこちらに専念してもらえるか?」


「いいですよ。今後の事を考えると、その方が良いですからね」


 エルドさんにそう言われた俺は、アルフに後で暫くは一人で修行をする様に言わないといけないなと考えた。

 その日はエルドさんから、昨日今日と疲れが溜まっているだろうからと明日一日休むように言われた。


「昨日も街に来てたみたいだけど、何で家に寄らなかったの?」


「弟子の冒険者登録をしに来ただけだからな、登録して直ぐに帰る予定だったから家に寄れなかったんだよ」


 翌日、休みになった俺は朝早くにウィストの街の家に帰宅すると。

 昨日、街に来ていたのに家に夜中った事を嫁に詰められ、俺はそう答えた。


「弟子って、確かアルフレッドっていう子だったかしら? アレン君から見てどうなのその彼は?」


「まあ、一言で言うと〝おかしな奴〟だな。才能に関しては俺が見てきた中で一番凄く、計り知れない。あんな才能の持ち主は、俺はアルフしか見た事が無いな」


「アレン君がそこまで言うって、相当凄いのね。いつか会いたいわね」


「その内、こっちの街に連れてくる予定だからその時に会わせるよ。多分、リアナもアルフの事は気に入ると思うぞ。もの凄い努力家で、リアナと似ているからな」


 嫁であるリアナは、筋金入りの負けず嫌いで努力家だ。

 アルフは負けず嫌いかどうかは知らないが、かなりの努力家だからリアナもそんなアルフを気に入ると俺は思っている。


「へ~、それなら早く会ってみたいわね。アレン君の初めての弟子ってだけで、ずっと気になってるし、もしその彼が料理に興味があるなら私が少し教えてあげようかしら?」


「それはいいと思うが……アルフは既に【調理】スキルを持ってる。抜かれるかも知れないからって焦って、無茶はしないと約束を出来るなら教えても良いよ」


「……今はスキルレベルいくつなの?」


「最後に見た時は、2だった気がする」


 俺がそう言うと、リアナは暫く考え込み「無事に出産が終わった後で考える」と考えを改めてそう言った。

 それから俺はリアナから買い出しを頼まれ、メモに書かれている食材を買いに外に出掛けた。


「あっ、アレンさん! 昨日ぶりですね。今日はお弟子さんとは一緒にじゃないんですか?」


 買い物をしていると、目の前からクリスがそう話しかけて来た。


「今日は急遽休みになったから、リアナの様子を見に戻って来たんだよ。弟子なら、今頃商会で一人で訓練をしているよ」


「そうなんですね。あっ、そうだ。アレンさんが昨日帰ってから、王都で暮らしていた真面な冒険者数名こっちに移住してきたんですけど、何か理由知ってますか?」


 もう動き始めたか、行動が早い奴等だな……。


「王都の冒険者ギルドを見限ったんだろうよ。こっちのギルドとは違って、向こうのギルドは腐りきってるからな」


「それは知ってます。何度か仕方なく使った事がありますけど、相当酷かったですからね……という事は、冒険者達が移住を始めたって事は少なからずルクリア商会も関わってるんじゃないんですか?」


「ここから先は有料だな」


 俺の言葉にクリスはガクッと首を落として、泣きそうな目をして「アレンさん、酷いですよ~」と訴えて来た。

 しかし、俺はクリスが嘘泣きをしていると察して「さてと、帰るか」と言って帰宅しようとした。


「ちょっ、ちょっと待ってくださいよ! 後輩が泣きそうになってるのに無視ですか?」


「後輩って別に面倒を見てたわけではないしな、弟子なら話を聞くと思うけど」


「う~……分かりました。ご飯を奢らせていただくので、情報を頂けますか?」


 クリスからそう提案された俺は、「それで良いぞ」と言ってクリスと近くの食堂に入り。

 飯を食べながら、王都で起こってる出来事について教えた。


「成程、という事はこちらに冒険者が流れてきてるのは、冒険者ギルドがアレンさんの弟子さんを蔑ろにしたからって事ですね。だから、アレンさんは昨日その弟子さんを連れてこっちで冒険者登録をしたんですね」


「そういう事だ。どうだ聞きたい事はそれだけか?」


「はい。今はこれくらいで十分です。ライザットさんから詳しい情報を調べてこいといわれていて、丁度こっちにアレンさんが戻って来てるという情報を信じてよかったです。これで早めに依頼を終えて、酒が飲めます」


 クリスはそう嬉しそうに言い、店先でクリスと忘れて家に帰宅した。

 その後、一日休暇を満喫した俺は翌日から再びエルドさんの指示に従い、数日間忙しい日々を送る事になった。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る