第37話 【レベル上げ・1】


 師匠の家に案内され、リアナさんを紹介されてから少しして。

 俺は師匠に連れられて、街の外に出掛けた。


「今回、狩る相手だが。魔物の中でも比較的戦いやすいゴブリンと戦おうと思う」


「ゴブリンですか……確か数体までなら低級の冒険者でも相手に出来るけど、多くなれば上級の冒険者でも倒せなくなる危険性を持つ魔物ですよね」


「魔物についてもよく勉強しているみたいだな」


「はい。魔法使いの家だったので、どんな魔物が危険なのかは普通の勉強よりも徹底して頭に叩き込まれてます」


 魔法使いは接近を許すと危険。

 だから家に居た頃は、魔物がどんな動きをするのか教え込まれている。

 そして今回の目的のゴブリンは、基本的に数体で暮らしてる魔物。

 二足歩行型の魔物で武器を使って戦う個体が多く、中には魔法を扱うゴブリンも居る。

 そして厄介なのが集団で暮らしていた場合で、その場合は等級不明となりより多くの戦力を持って殲滅するとされている。


「ここ最近のゴブリンの話だと、3年前に王都近くの山岳部に500体のゴブリン系魔物とゴブリンキングが現れ、師匠が活躍したのは聞いた事があります」


「あ~、あの時か。丁度、商会の行商してる奴と一緒に行動してて、偶々その場に居合わせたから良かったけど、あの時から既に王都の冒険者ギルドは腐ってたから真面な戦力を用意できてなくて、俺が行く前にほぼ壊滅状態だったんだよな」


「そうなんですか? その話では、王都の冒険者ギルドが師匠を呼びだして解決させたみたいな事になってましたけど」


「それもあの馬鹿共が勝手にした事だ」


 師匠はそう言った後、俺にゴブリンとの戦い方を教えてくれた。

 その戦い方は家で教えられていたものよりも、より実践的なやり方で流石は白金級冒険者の考えだなと。

 一言一句聞き逃さず覚えた俺に、師匠は近くで見ているからゴブリンと戦ってくるんだと指示を出した。

 それから俺は歩いてゴブリンを探していると、前方にゴブリンらしき魔物を発見した。


「まずは相手の数の把握」


 師匠から最初に教えられたのは、どんな魔物であれ数を把握する事が大事だと教えられた。

 それがスライムだろうがゴブリンだろうが、低級上級関係なく数の把握は必ずするようにと言われた。

 冒険者の死亡理由で一番多いのは、慢心による事故死。

 どんな時であれ、最善を尽くすのが上級冒険者の心得だと教えられた。


「……3体だな、よし戦おう」


 離れた所から観察をして、ゴブリンが全部で3体だと把握した俺は戦いを始める事にした。


「ゴブリン相手に対し、俺の【剣術】が通用するか分からない。ここは、やはり一番得意としている【水属性魔法】の魔法がいいか……」


 俺はそう考えて魔法の構築を始めた。

 普段、桶の中に水を突っ込んで訓練をしている俺は、その訓練のおかげかすんなりの攻撃魔法の構築を終えて。

 呑気に歩いているゴブリン目掛け、槍の形状をした水魔法【水槍】を三本同時に放った。


「ゴバッ」


「ゴビッ」


「ゴブッ」


 ゴブリン三体の頭部を狙って放った魔法は、ズレる事無くゴブリンの頭を貫き。

 三体のゴブリンは、一瞬にして絶命した。


「アルフ。攻撃魔法は、そこまで訓練してなかったが。俺が居ない時に練習していたのか?」


「いえ、殆どしてません。なので、自分でも驚いてます……」


「そうか。まあ、魔法の訓練を毎日してるからだろうな。初戦にしては、凄く良かったと思うぞ」


「ありがとうございます!」


 師匠に褒められた後、陽が沈むまで同じように狩りを続けた。

 狩りを終えた俺と師匠は、ゴブリンの討伐証明部位を集めていたのでそれをギルドに持って行く事した。

 ゴブリンやスライムといった低級の魔物は、弱いがその分繫殖力が高く。

 討伐した際に証明部位をギルドに持って行くと、お金を貰える事になっている。


「レベルアップはまだみたいだな」


 街に戻る道中、師匠と一緒にステータスを確認するとレベルは変わってなかった。


「そうですね。ラルフさんも最初の内は、苦労すると言ってましたもんね。でも、こんな風になるならスキルが現れる前にレベルをもう少し上げておけば良かったと後悔しますね」


「という事は15歳の時に授かる前は、普通にレベルが上がってたのか?」


「はい。訓練として、何度か魔物を倒した事はあります。ただ自分の技というよりも、冒険者を雇って最後の一撃を与えるという作業でしたけど」


 貴族の中には子供のレベルを上げる為、態々冒険者を雇い最後の一撃を与えるという依頼を出す人が居る。

 その中には俺の父も居て、俺はそれでレベル10まで上げさせてもらった。

 正直、自分で戦って魔物に勝ってレベルを上げたかった俺は、その事がどうしても嫌だった。

 レベルを上げておけばという後悔はあるが、あんな事をしてレベルを上げたいとは今でも思ってない。


「成程、それでアルフはレベルが10あるのか」


「はい。恥ずかしい話なので、エルドさん達にも言えなかったです……」


 そう俺は俯きながら言うと、師匠は俺の頭に手を置きポンポンと叩いた。


「アルフが自分からしたいって言った訳じゃないんだろ?」


「はい……」


「なら俺もエルドさん達も咎めたり、アルフの事を失望なんてしない。アルフと過ごしたのはまだ短い期間だが、アルフが良い奴なのは俺達は知っているからな」


 師匠は俺にそう言うと、「今日は真面な戦闘を記念して酒を飲むぞ!」と突然言い出し。

 ギルドで換金した後、俺は師匠に酒場へと連れてかれた。

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