第33話 【悩みの解決に向けて・1】


 翌日、朝食を食べた俺は訓練場で訓練をする前の準備運動をしていていると。

 そこに普段であれば、昼食後に来る師匠が朝から訓練場にやって来た。


「あれ、師匠? 今日は朝から見てくれるんですか?」


「いや、今日もいつも通り午前中は【剣術】の稽古をさせておくつもりだったんだが、なんかエルドさんがアルフを連れてきてほしいと頼まれてな」


「エルドさんからですか?」


 師匠の言葉に俺はまだ訓練を始める前で汚れてない為、このままの格好で師匠と一緒にエルドさんの部屋に向かった。

 エルドさんの部屋に着くと、部屋の中にはエルドさんの他にアリスとエリックさん、シエナさん、そしてもう一人女性が居た。

 その女性はアリスと同じ青い髪色で、瞳の色もアリスとエリックさんと同じ青い瞳をしている。


「初めまして、貴方がアルフ君? 私はマリア・ルクリア。アリスの母親です」


「はじめまして、アルフレッドです。えっと、これはどういう集まりなんですか?」


 見知らぬ女性はアリスの母親だと知った俺は挨拶を交わし、これがどういう集まりなのかエルドさんに聞いた。

 見た感じ、ルクリア家が勢ぞろいって感じだけど。


「アルフに聞きたい事があるんだが、お主はアリスの友達とは本当なのか?」


「えっ? はい。友達ですよ。だよねアリス?」


「うん。アルフ君は私の友達だよ。お爺ちゃん」


 エルドさんの質問に対し、俺はアリスに確認をしながらそう言った。

 そしてアリスも俺と友達という事をエルドさんに言うと、エルドさんとシエナさん、そしてマリアさんは目に涙を浮かべた。


「ど、どうしたんですか?」


「いや、アリスに友達が出来たなんて聞ける日が来るなんて……」


「学園に行けば友達くらい出来るかもと思ってたけど、初等部には結局一人も友達が出来ず、高等部でも相変わらず一人で居るって聞いてたから嬉しくなっちゃって」


 そうシエナさんは言うと、エルドさん達が落ち着くまで数分かかった。


「師匠。家族がこんなに泣くって、俺が思ってた以上にアリスの人見知りってやばいんですか?」


「昨日も言ったけど、相当だぞ? 商会の人間で慣れた相手だとしても、少し喋れるだけだからな。アリスの友達と呼べる存在は、アルフが初だ」


 師匠から、改めてアリスの人見知りの酷さを聞き。

 本当に何で俺はアリスに気に入られたんだろうと、不思議に感じてそう思った。


「それで今日呼び出したのは、俺がアリスの友達か確認する為ですか?」


「それもあるが。もう一つ、本当に友達ならアルフに頼みたい事があるんだ」


「頼みですか? はい。何でも聞きますよ!」


 遂にエルドさんからのお仕事。

 俺はようやく仕事が貰えるという期待を抱き、エルドさんの言葉を待った。


「アルフには、アリスと共に学園に通って欲しいんだ」


「……学園に通う? 俺がですか?」


「えっ、お爺ちゃん何を言ってるの?」


 エルドさんの言葉に俺とアリスは、首を傾げて聞き返した。


「アルフは昨日、アリスから少し聞いたと思うが。アリスの成績は高等部に入ってから下がり続けておる。このままだと留年してしまうかもしれん。それを解決する為に、アルフにはアリスと一緒に学園に通ってアリスの勉強の手伝いをしてやってほしい」


「えっと、それって俺は学園に通わないといけないんですか? 寮でアリスに勉強を教えるって事も出来ますけど?」


「学園の成績は実習の成績も含まれていてな、アリスはこの性格で共同で行う実習を苦手としているんだ。そこの相手役兼普段の話し相手として、アルフにはアリスと共に学園に通って欲しい」


 そうエルドさんは言うと、シエナさんからも「アルフ君にしか出来ない事なの」と言われた。

 俺はルクリア家が俺の返事を待っていると感じ、隣に座ってる師匠の方へと視線を向けた。


「師匠。俺の訓練とかの時間って調整できますか?」


「大丈夫だぞ。それに学園に通うのはアルフにとっても良い事だと思うぞ」


「俺にですか?」


「アルフは今後もルクリア商会の人間として生きるなら、交友関係は広い方が良いからな。それを広げるなら、学園が最適だ」


 師匠の言葉を聞き、確かにルクリア商会の為と思うなら俺自身の交友関係も広げていた方が良いだろう。

 俺は師匠からの許可も下りたため、エルドさんからの頼みに「その任務。必ず達成してみせます」と頼みを受ける事にした。

 すると、エルドさんは大きく息を吐き安心していた。


「ふ~、良かった。アルフに断れていたら、これから本当にどうするか悩む所だった」


「そうですね。アルフ君が居てくれて、本当に良かった」


「父さんがアルフ君をルクリア商会に連れて来てくれたおかげだよ」


「良かったです。これでアリスが留年にならない可能性が少し出ましたね」


 エルドさん達はそう安心したように言い、当人であるアリスは「えっと、アルフ君と一緒に学園に行けるの楽しみ」と嬉しそうにしていた。


「えっと、もしかしてアリスの成績ってかなりヤバいんですか?」


「……留年の可能性の話を高等部に入学して、半年もしない内に通告される程には」


 確か学園の入学時期は4月で、今は8月だから半年も経たずして留年の可能性が出てる現状はかなりヤバいな。

 俺はアリスの成績向上の任務は、相当難しいかも知れないなと。

 その話を聞いて、今更ながら緊張してきた。

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