第32話 【ルクリア商会の動き・4】


「それじゃ、アルフ君。またね」


 あの後、仲直りしたエリックさんとアリスは家に帰る為、商会の入口まで見送りに来て、二人が去っていくのを見守った。


「アルフ。凄いな、アリスとあんな短時間であそこまで仲良くなるなんて」


「そうですか?」


「アリスの人見知りは、かなり酷いからな。商会の人間はある程度慣れてるから、そこまで人見知りを発揮しないけど知らない人相手だとアリスは喋れなくなるんだ」


 師匠からそう言われた俺は、そこまで酷い人見知りとは知らず、じゃあ何で俺とは直ぐに打ち解けられたのか分からない。


「う~ん……まあ、アルフが喋りやすかったのか、もしくは自宅でアルフの話をよく聞いていたから話せたのかも知れないな」


「えっ、エルドさん達家で俺の話してるんですか?」


「みたいだぞ。この間、エルドさんが言ってたからな。最近の家の話題は、アルフの成長速度が速くてどんな人物になるかで議論してるらしいぞ」


 そんな議論しないでくれ! と俺は心の中で叫んだ。

 その後、商会の建物に戻ると丁度、ラルフさんが二階から降りて来た。

 会議後、ラルフさんは急用が入ってしまい、スキルについて聞けなかったがラルフさんは俺を発見すると。


「明日には仕事に戻らないといけなかったから、ここで会えてよかった」


 と言って、それからここじゃ人も多いからと言って、訓練場の方へと移動して来た。


「アルフ君のスキルなんだけど。これは間違いなく、【固有能力】の一つだと僕は思う」


 【固有能力】とは、スキルの中でも特殊なスキル。

 15歳の神からスキルを授かる時にしか現れないと言われている。

 ただし見分け方は難しく、レベル表記が無いものが全て【固有能力】という訳でもない。


「やっぱり、アルフのスキルは【固有能力】だったか。そんなスキル見た事も聞いた事も無かったから、もしかしてとは思ってたが」


「聞いた感じ、能力が強すぎるしね。経験値を固定化なんて、聞いた事も無いからね」


 師匠の言葉にラルフさんはそう言うと、【経験値固定】のスキルの使い方についてもっといい方法があると言った。


「今、アルフ君の【経験値固定】はスキル習得に主に使ってるんだよね?」


「はい。集中できる訓練だったら、一日で習得が出来るのでスキル習得をメインに今は訓練をしています」


「多分だけど、アルフ君の【経験値固定】は魔物との戦闘でも効果が発揮されると思うから、魔物狩りを早めにはじめた方がいいと僕は思うよ」


 経験値が固定化されてる俺は、低レベル帯だとしてもレベルは上がりにくく、レベルを上げるのに時間が掛る。

 その為、スキルを強化して魔物狩りをしようとしていた俺と師匠の考えていた。


「確かに今考えたら、アルフのスキルがレベル上げにも影響してしまうかな……」


「俺も自分のレベルは低いから、レベル上げは後でやっても直ぐに上がるだろうと思ってました。よく考えたら、レベルにも影響しますよね」


 ラルフさんの話を聞いた俺と師匠は、考えを改めて近い内に魔物狩りをしようと予定を変更する事にした。


「ラルフさん、貴重な助言ありがとうございます」


「ううん。僕も新しいスキルを知れて楽しかったよ。そうだ! アルフ君、もしスキルで困ったら僕の所に来なよ。色んなスキルの訓練方法も知ってるからね」


「えっ、いいんですか!?」


「うん。その代わり、アルフ君がスキルの訓練をする時は見学させてね。どれだけ早い時間でスキルを習得するのか、ちゃんと見てみたいから」


 ラルフさんにそう言われた俺は「いつでも見に来てください!」と言って、今後何か力で困ったらラルフさんに相談に行こうと決めた。

 それからラルフさんは、仕事に戻るからと言って去っていった。


「アルフ、良かったな。ラルフさんって、面白いこと以外はとことん興味が無くて。あんな事を言われたのは、アルフがはじめてだと思うぞ」


「えっ、そうなんですか?」


「ラルフさんは研究者気質で研究と仕事以外は興味が無くてな、唯一エルドさんの指示は聞くらしいが。エルドさんもラルフさんの性格を知っているから、あまりラルフさんに指示を出さないんだ」


 それでもラルフさんの能力は高く、ルクリア商会としては失ってはいけない人物らしいので好きにさせていると師匠は教えてくれた。

 俺はそんな凄い人に気に入られて、スキルを教えてくれるなんて言われた事に対し、今更ながら驚いた。


「アルフって本当に不思議だな。俺もそうだけど、人に気に入られる体質なのか?」


「でも親には捨てられてる身なので、誰でも気に入られるわけでは無いと思いますよ?」


「そういや、そうだったな。だとしたら、あれだな自分で言うのもあれだが変わった人間から好かれる体質なのかもな」


 そう師匠は笑いながら言うと、明日も訓練があるから早めに寝るんだぞと言って、この日は師匠と別れた。

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